初投稿:2023.8.4
こんにちは!
この記事は、LIXIL【5938】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
・『決戦!株主総会』
・バーチャルオンリー株主総会
【目次】
【京都のLIXIL展示場】
1 LIXILについて
⑴ 会社概要
売上高1.4兆円、総資産1.8兆円、時価総額4934億円の事業規模。
PBRは0.76倍と苦戦中。
ただし、配当利回りは5%を超えています。
企業理念
ハーパスと行動指針は下記の通りです。
これを読んだ社員がそれぞれの思い思いのアイデアを出せそうという点で良いと考えます。
・Purpose(存在意義)
世の中の誰もが願う豊で快適な住まいの実現
・Behavior(3つの行動)
正しいことをする
敬意を持って働く
実験し、学ぶ
セグメント
下記の2つの事業で構成されています。
・ハウジングテクノロジー事業(金属製建材、木質内装建材類、その他建材類、住宅・サービス関連、その他)
⑵ 株主になったきっかけ
高配当で巨大企業であることから株主となりました。
『決戦!株主総会』のその後についても興味があって会社の今後の展開に注目しています。
⑶ 経営分析
収益性
・売上高総利益率:31%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):2%
収益性は低いです。
原価が7割を占め、最終的な利益率も1%。
会社は7.5%を目標にしていますが、現状の売上高営業利益率は2%。
低収益性については様々な要因があると思いますが、原価や販管費等についてしっかりと対応することが重要と考えます。
安全性
・流動比率(100%以上が望ましい):114%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):34%
短期的にも中・長期的にも何とか安全性を確保しているというレベルです。
ただし、減益でも配当をしている状況を踏まえると、経営陣は財務的にはそれ程大きな問題を抱えているとは認識していないように推測します。
効率性
・有形固定資産回転率:3.97
おそらく、平均レベルだと考えます。
本社移転等で有形固定資産についても効率性を追求しているところとだと思いますが、著しい改善は容易ではなさそうです。
【旧本社】
2 株主総会等
⑴ 株主総会
第81回定時株主総会 2023年6月21日
バーチャルオンリー総会を視聴しました。
当初、社長のテンションが高く声が弾んでいました。
議長一任の採決方法についての説明、事業報告のビデオ、対処すべき課題等が続きました。
主な質疑応答
下記の他、当社のHPでも株主総会のアーカイブ配信、議事録が公開されています。
【事前】
Q.株価について
A.円安は上昇要因、サプライチェーンの再編やウクライナ問題ではコスト高となって下落要因と考える。
リフォーム需要を取り込み今年後半にかけての業績回復に努める。
Q.減益なのに配当金額が多いのでは?
A.基本は配当性向30%。
ご指摘のとおり利益は不甲斐ないが、EBITDAで考えると配当の原資であるキャッシュは稼げている。
EBITDEA比で考えると過去は19%であり、今回も21%であり妥当と判断した。
Q.PBRとROEの改善策について
A.従来からPBRが低い会社であったが、事業ポートフォリオの見直しで1倍を超えることができた。
けれども、ここ2年間は1倍割れが続いている。
原因はサプライチェーンの冗長化や在庫の増加等であり、今後は資産の再編等でPBR向上を目指す。
ROEについては、利益の向上(分子の増加)と固定費の削減(分母の減少)に努める。
Q.コンプライアンスについて
A.役員には自覚を持ってもらいコンプライアンスの重要性について働きかけを強化してもらっている。
従業員に対しては、気になることについて声を上げやすい環境づくりを恒常的に進めていく。
Q.ウクライナ問題について
A.難しい問題。
ロシア侵攻の2週間前から予測して準備していたがサポートをするだけの状態。
商売にはならない。
従業員の健康と安全を最優先としていく。
なお、視察したポーランドのLIXILにおいては、避難者の受け入れ活動が献身的に実施されていた。
Q.低迷する株価について
A.収益が芳しくなかったことが原因。
ただし、業界全体として同様の傾向である。
今年の後半から景気が回復していくので、固定費を削減しつつ業績向上に尽力する。
Q.利益率が1%と低いことについて
A.米欧中の住宅状況を踏まえ、住宅産業は成長の余地があると認識している。
Q.取締役にTOSTEM等の生え抜き社員がいないことについて
A.(指名委員長から)生え抜きか否かは考えていない。
スキルマトリックスに基づき指名している。
Q.自社株買いについて
A.余剰のキャッシュが生じた段階で実施する。
Q.LIXILの安売りで困っている
A.価格は取引先の小売業が決定している。
当社はメーカーとして魅力ある商品を提供することを今後も続けていく。
Q.業績低迷の責任について
A.申し訳ありません。
重く受け止めています。
差別化のできる商品づくり、利益率の高い分野に経営リソースを振り向ける、固定費を削減するなどにと注力していく。
(社外取締役より)ごもっともなご意見。
社外取締役としてふりかえると、計画からズレた際の監督に改善余地があったと思う。
社外取締役の報酬については株価に連動する部分が22%あり、株主と利害を共有している。
Q.業績の見通しについて
新築事業とリフォーム事業の比率については、日本の場合1:2程度だが、欧米では逆になっている。
よって、今後は日本でもリフォーム事業に追い風が吹くと予想している。
これには、政府の補助金の影響もありビジネスチャンスと捉えている。
キヌアミという新しいシャワーなどイノベーティブな商品も提供している。
引き続き、持続的な成長と中・長期的な企業価値向上に向けて頑張る。
Q.企業価値が半分になったので社長は辞任を
A.株価については、社長就任当時1751円、復活時1471円、現在は1911円でであり企業価値は半分にはなっていない。
ただし、最高値の3200円からは大きく下落しているのも事実。
業績改善に向けて尽力する。
また、個人的には辞任する意向はない。
また、社長に関しては、指名委員会の決定によるものである。
Q.支店長のパワハラについての再調査について
A.議案と無関係な個別な問題であり、回答は差し控える。
今後も社員が能力を発揮できる環境を作ることに注力していく。
Q.内装半磁器タイル事業からの撤退について
A.需要の減少を踏まえたものである。
【当日】
Q.人材確保について
A.当社はダーバーシティ&インクルージョンを掲げ、女性、外国人、障害者を含めて働きやすい環境に配慮してきた。
また、若い人でも実力を発揮しやすい職場づくりに努めている。
Q.累進配当の妥当性について
A.当社は累進配当制を採用していない。
配当性向30%以上を目標としている。
Q.今野取締役と西浦取締役の違いについて
今野氏:弁護士として業務を見極める仕事に強く監査等委員会で活躍
西浦氏:判事として人を見極める業務に力量があり報酬&指名委員会で活躍
Q.住宅産業の将来性について
A.対局的には成長産業と認識。
衣類、食事が満たされた人が次に望むものは住まいであり、世界になそのような人々が数多く存在する。
新築についてはそのような需要があると考える。
また、1990年代のドイツで生じた新築からリフォーム(断熱材の拡充など)へのトレンドを見ても日本でも成長する余地は小さくないと思料。
よって、売上高営業利益率7.5%は十分に達成可能と考える。
Q.為替の影響について
A.135円の想定為替レートとしているが現状は141円程度。
ただし今後は日本円が強くなることも十分に予想している。
Q.LBT事業について
A.ビル事業については過去大きな損失を出したこともあったが、契約形態の改善等により利益率の改善に努めていく。
Q.社外取締役の”制限”について
A.社外取締役はそれまでに培った経験が重要なのでベテランになる傾向がある。
ただし、就任時に75歳以下、10年10期まで、6年が基準などの”制限”もある。
また、海外でも社外取締役は高齢である場合が少なくない。
Q.自社株買について
A.基本的には余剰資金で実施する。
時価総額を高めるためることを重視してやっているわけではない。
Q.女性管理職の活躍について
A.現状の女性管理職の比率は16〜17%程度。
2030年は30%を目標としている。
Q.株主優待の復活について
A.以前はリフォームについての株主優待を発行していた時もあった。
けれども、多くの株主が十分享受できていなかった状況を踏まえ、株主還元は配当が最適と考えている。
Q.今年後半の景気回復について
A.プロジェクトの見積もり、顧客からの生産計画の依頼、同業他社の動向等を総合的に判断して景気回復を予想している。
Q.社外取締役から当社の現状について聞きたい
A.(社外取締役より)24年3月期の事業利益400億円は厳しい環境を踏まえると妥当と考える。
現状打開のための打ち手を確認するとともに、必要に応じた打ち手を申し上げていきたいと考える。
Q.インフレの影響について
A.顧客からの注文や同業他社の動向を総合的に考えて、今年後半の回復を見込んでいます。
決議事項
・取締役11名選任の件
集計により承認・可決されました。
株主総会雑感
バーチャルオンリー総会はやはり慣れません。
新興企業では仕方ないにしても、多くの株主を抱えるLIXILほどの巨大企業には馴染まないと感じました。
イマイチ。
理由は下記の通り。
・ネット環境に不慣れな株主を排除するバーチャルオンリー株主総会はインクルージョン&ダイバシティという組織文化に矛盾
・どんな人が質問しているのか不明
・質問が株価と業績に集中しておりネットに慣れた人の関心事項?に偏重
・株主総会の会場に足を運んでいただき「来て良かった」と思ってもらうことを通じて当社のファンを増やすことの機会損失
・同じく、会場にてキヌアミ等のリクシルの新製品をアピールする機会損失(株主限定イベントでのアピールだけでは迫力不足)
・社員の株主(潜在的な顧客)と交流する機会の喪失
・経営陣からの素晴らしい発言に対して会場から拍手が湧き上がる時のような株主間の共感を感じる場の喪失
・社長も最初は元気でしたが、最後はお疲れ気味
・単調な議事運営(類似した質問の連続)
次回からはハイブリッド方式を希望します。
⑵ 株主還元
配当
1株配当の推移は下記の通り。
増配基調は嬉しいです。
2023年3月期:90円
2022年3月期:85円
2021年3月期:75円
2020年3月期:70円
2019年3月期:70円
株主優待
なし
【お台場のイベント会場】
3 株主としてのコメント
⑴ 気に入っていること
日本では上場企業が多すぎると感じています。
その意味で、5社が統合した当社が大きく飛躍することは日本企業の活性化という意味で期待が持てます。
『決戦!株主総会』でも色々なことを学ぶことができました。
今後の展開に期待します。
⑵ 気になったこと
当社の社長が下記の点で日本M&Aセンターの社長と似ていると感じました。
・強いリーダーシップで会社を率いていること
・長時間エネルギッシュに話すこと
・声質や喋り方が似ていること
・どちらも将来、業績回復を強くアピールしていること
なお、日本M&Aセンターの場合、不祥事で株価は低迷しいるが一段落したので今後は業績が回復すると熱く語っていましたが、先日の四半期決算で前年同期比で減収減益で株価が暴落しています。
業績回復をアピールするのはいいですが、聞き手の期待値が話しての予想以上に膨らみすぎる場合があります。
そうなると、
実際の業績に接した際に失望する人が出てくるのではないか?
と気になりました。
【旧書店】
4 まとめ
LIXILについて述べてきました。
『決戦!株主総会』のイメージがあって期待したのですが、バーチャルオンリー株主総会では物足りなく感じました。
「今年後半は良くなる」と社長は断言していましたが、1年後、日本M&Aセンターのようなことにならないことを切に願っています。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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