こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

三菱重工業【7011】〜株主総会雑感(成長ストーリーの大切さ)

初投稿:2022.7.26、更新日:2023.9.2、2024.7.19

こんにちは!

この記事は、三菱重工業【7011】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2024年6月の株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

・脱炭素や防衛関連としての期待

・防衛費2倍で株価は上昇トレンド

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【目次】 

三菱重工業の本社が入居する丸の内二重橋ビル】

                      

1 三菱重工業について

⑴ 会社概要

日本の製造業のリーディングカンパニー。

売上高4.6兆円、総資産6.2兆円、時価総額6.4兆円の事業規模。

無形資産(ブランド力、のれん)を示すPBRは2.85倍で比較的高い評価です。

社是

一、顧客第一の信念に徹し、社業を通じて社会の進歩に貢献する

一、誠実を旨とし、和を重んじて公私の別を明らかにする

一、世界的視野に立ち、経営の革新と技術の開発に努める

伝統が感じられつつ今の時代にも沿った社是と考えます。

セグメント

下記の4つのセグメントから構成されています。

( )の数値は売上収益構成比です。

エナジー41%

●プラント・インフラ(16%)

●物流・冷熱・ドライブシステム28%)

●航空・防衛・宇宙(14%)

⑵ 株主になったきっかけ

ロシアのウクライナ侵攻や防衛予算増額等の報道に接し、応援する意味で2022年の春に株主となりました。

嬉しいことに、2024年7月時点で株価は年初来高値を更新中です。

⑶ 2024年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:20%

・売上高事業利益率:6%

前期に比べて向上しています。

着実に「収益力回復・強化」が図られていると考えます。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):116%

自己資本比率(30%以上が望ましい):38%

前期に比べて安全性は若干向上しています。

累進配当制を導入して配当額が増加しているにも関わらず自己資本比率が向上しているのは財務基盤が強化されたことを物語っていると思います。

効率性 

・有形固定資産回転率:5.13

前期より僅かに向上しています。

有形固定資産額(約9000億円)も増加していますが、それ以上に収益が伸びたためです。

効率性は安定していると考えます。

⑷ 2023年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:18%

・売上高事業利益率:5%

高収益とは言えませんが、前期に比べてそれぞれ1%ずつ向上しています。

現在「収益力回復・強化」に取組んでいる成果が着実に現れていると考えます。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):116%

自己資本比率(30%以上が望ましい):33%

前期に比べて多少数値は改善しています。

安全性について懸念はないと考えます。

なお、株主総会招集通知の中で政策保有株式を

・2025年度末までに15%未満

・2030年度末までに10%未満

にするとの説明がありました。

自己資本等にどのような影響があるか見極めていきたいと思います。

効率性 

・有形固定資産回転率:5.00

前期よりもわずかですが向上しています。

比較的、有形固定資産については効率的な投資がなされていると考えます。

⑸ 2022年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:17%

売上高営業利益率:4%

あまり高い収益性とはいえなさそうです。

それでも株価は右肩上がり。

現在「収益力回復・強化」に取組んでいるとのことなので、収益性向上による株価への効果が期待されます。

安全性

流動比率(200%以上が望ましい):113%

自己資本比率(30%以上が望ましい):32%

数値としては盤石な財務基盤とは言えなさそうです。

ただし、巨大企業であり、同業のIHI自己資本比率が22%であること、増配もできていることなどを考え合わせると安全性に直ちに問題が生じることはないと考えます。

効率性 

・有形固定資産回転率:4.89

製造業の平均が3.22であることを考えると高い数値となっています。

比較的、有形固定資産については効率的な投資がなされていると考えます。

なお、単体での有形固定資産の内訳としては金額順で「建物」、「土地」、「機械及び装置」となっています。

2 株主総会

⑴ 2024年6月の株主総会

第99回定時株主総会 2024年6月27日(木) 東京會舘

ライブ配信を視聴しました。

画面に表示される生字幕が印象的でした。

主なポイント

・過去最高益

・収益力の回復・強化

ガスタービンは世界トップシェア

・物流、冷熱、発電用エンジン、次期戦闘機、原子力発電の事業の進捗について

・成長領域の開拓に注力する

・配当性向は30%、年間配当は200円

主な質疑応答

【事前】

Q.女性役員について

A.現在、選任基準にもとづき12名中2名。

鋭意取り組んでいる。

Q.業績・株主還元

A.強固な事業基盤と財務基盤を構築した。

来期は一株22円配当(1割アップ)。

累進配当とする。

DOE4%を目安としている。

Q.電動化・デジタル化について

A.急務と認識。

各種ロボットとの連携を強化している。

生成AIについては効率の良い冷却システムの提供に努める。

なお、デジタル人材2万人を目標とする。

【会場】

Q.ガスタービンのラインアップについて

A.数百メガワットから数メガワットまで規模に応じて提供できる。

ギガワット九も対応。

なおkグリーンなものと組み合わせるガスタービンも有している。

また、ガスタービンは予想を超えて伸びている。

Q.太陽光パネルについて

A.当社は製造していないし、ビジネスもしていない。

Q.カーボンキャプチャーへの取組について

A.海外では1tで85ドルの補助金がもらえるところもある。

長年取り組んできた分野であり、欧米からの検討依頼も多く、3年のうちに数件の実現を目指して積極的に取り組んでいる。

Q.株価について(株価が上昇して嬉しい!見守ってきた甲斐があった(笑))

A.前提為替レートは145円で、1円につき30億円の増益。

昨年600円だった株価は1年間で千円上昇して現在1600円。

取締役会でも株価については話題になるが、気を引き締めて期待に応えるよう頑張る。

これから先のことは申し上げられないが、中計を達成することで企業価値を上げることで期待に応えたい。

Q.海外事業について

A.中東・アフリカは魅力的な市場であり、グローバルサウス戦略に則って対応中。

多様(地域の)な価値観を重視する。

モノを売るだけでなく、サポートが大切。

ハードルは高いがしっかりやり抜く。

Q.航空機事業について

A.MRJについては残念であり、申し訳ない。

経験者は新規事業にてその知見を活かして活躍中。

現在は基盤を作る時期であり、具体的な事業計画はない。

Q.他の三菱グループ企業とのつ気合について

A.金曜会という社長・会長の懇親会があるが戦略等を決める場ではない。

日頃から付き合いながら、忌憚のない意見交換をしている。

Q.徴用工事案について

A.解決済みであり、当社は原告に対してコメントする立場にない(拍手)。

Q.セキュリティクリアランスについて

A.法律に基づいて対応している。

Q.水素ガスタービンについて

A.当社は1970年台から水素燃焼技術に全力で取り組んできた。

現在、製品を市場に投入しその地位を確保している。

高砂水素パーク内の最新の大型ガスタービン(燃焼温度1650℃)は30%の水素含有率。

50%までは既存製品で対応可能なので、他社と十分戦っていけると認識。

Q.JAXAへのハッカー攻撃の影響について

A.JAXAから連絡は受けているが、事業への影響はない。

Q.数百kgを持ち上げられるドローンについて

A.ジャパンドローン展に出品したもの。

民間と防衛のデユアルユースであり事業性について検討中。

無人化技術は有望と考える。

決議事項

・剰余金処分の件

・監査等委員でない取締役7名選任の件

・監査等委員である取締役1名選任の件

・監査等委員でない取締役(社外取締役を除く)に対する株式報酬制度に係る 額及び内容改定の件

拍手を持って承認・可決されました。

なお、新任者の紹介がありました。

株主としてのコメント

株主からのコメントにあったように、600円で買った株が1600円に上昇した喜びは同じ株主として良くわかります。

しかも、自分の場合は300円で買っているからなおさらです。

銘柄選びで大切なことは何か?

下記の本によると

”成長ストーリーを自分なりに描けているかどうか?”

ということだそうです。

自分もこの本に賛成です。

では、三菱重工業の成長ストーリーは何か?

防衛費が2倍になる恩恵を三菱重工業は享受できるというのが自分が考えた成長ストーリーです。

実際には成長に加速がついて株価が2倍以上になっても上昇トレンドが続いています。

今後の銘柄選びに際しても、成長ストーリーを自分なりに描けるかどうかを見極めた上で投資をしていきたいと思います。

⑵ 2023年6月の株主総会

第98回 定時株主総会 東京會舘「ローズ」 2023年6月29日(木)

アーカイブ配信を視聴しました。

残念ながら会場での質疑応答についてはカットされていました。

ポイントは下記の通り。

・業績は増収増益。

・「収益」、「成長」、「財務健全性」、「株主還元」に注力。

・「2021事業計画」はほぼ予定通り進捗。

・CO2については「減らす」、「回収する」、「出さない」をに着目。

・新たな事業機会として原子力(革新軽水炉)と防衛を重視。

主な質疑応答

【事前】

Q.スペースジェットの開発中止について

A.開発完了までに5年かかり毎年1000億円の経費が見積もられた。

(それまでに投じた1兆円を含め、)事業性が見込めなくなったため開発中止に至った。

原因として

・認証プロセスについての経験・知見の不足

開発プロセスについての経験・知見の不足

・サプライや対応への経験不足

が挙げられる。

今後は、得られた経験・知見をボーイング社との協業次世代戦闘機の開発に活かしたい。

Q.役員の資質について

A.多様性を重んじ、スキルマトリックスを通して役員選任に活かしている。

【会場】

視聴できず。

決議事項

・剰余金処分の件

・監査等委員でない取締役7名選任の件

・監査等委員である取締役4名選任の件

・補欠の監査等委員である取締役1名選任の件

拍手を持って承認・可決されました。

なお、新役員の紹介がなされていました。

株主総会雑感

スペースジェット開発中止の説明は分かりやすく株主向けだと思いました。

本当はもっと奥深いところに原因があるのでしょうがそこは抽象的な表現に留めていたと思います。

例えば、

・「型式証明取得に対する知経験不足」と説明していましたが、もっと経験不足なホンダがホンダジェットで型式照明取得に成功できたのは何故か?

・「MU-300以降、30年ぶりの米国でのビジネス」と言及していましたが、次期支援戦闘機F-2の開発で官民を通じた米国との交渉をしてきたのではなかったのか?

・F-2の開発メンバーをスペースジェットに投入して開発に失敗しているのに、スペースジェットの開発経験を次世代戦闘機(日・英・伊の共同開発)に本当に活かせるのか?

など色々な疑問が浮かび上がってきます。

もちろん、当社もそのようなことについては深掘りしてちゃんと総括していると思いますが、総会での説明はちょっと淡白だったように感じました。

ただし、そのような開発中止を、成長分野へのリソースの集中投資と市場は好意的に受け止めており、そのことが株価の上昇トレンドに現れていると思います。

防衛費は2倍になります。

我が国の安全保障におけるリーディングカンパニーとしての役割も含め、今後の事業展開に期待します。

⑶ 2022年6月の株主総会

第97回定時株主総会 2022年6月29日(水) 東京會舘

ライブ配信を視聴しました。

社長が議長を務め、事業報告から対処すべき課題までビデオで紹介されていました。

カーボンニュートラルを実現するための

・供給側からの脱炭素のアプローチ

・需要側からの省エネのアプローチ

という説明が印象に残っています。

主な質疑応答

【事前】

Q.三菱スペースジェットの現状について

A.2020年10月から飛行試験を中断しているが、リージョナルジェット市場の回復、サプライヤーの状況を勘案して再会のチャンスを狙っている。

それまでの間、ボンバルディア社から買収したリージョナルジェット事業を通じて実績を積み重ねていく。

Q.取締役の構成について

A.女性もデジタルも強い人材が揃っている。

個々の役員ではなく全体を通じて多様性を発揮していく。

【会場】

Q.定款変更について

A.株主総会資料については電子データが基本となっても、手続きをすれば紙で入手することは可能。

Q.ウクライナ情勢の影響について

A.従業員とその家族の安全を第一として対応する。

Q.1000億円の研究開発について

A.H3等研究開発は競争力強化のために積極的に実施する。

担当部門のみならず、横断的な取り組みをしておりリソースは十分にある。

Q.徴用工訴訟問題について

A.日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決済み(会場から拍手)

Q.定款変更についての修正動議

A.承知した。

Q.三菱重工業に対する激励

A.頑張る(会場から拍手)

Q.半導体を何とかしてほしい。

A.産業基盤を作るということを通じて貢献したい。

Q.品質について

A.トップメッセージを通じて重要性を再周知している。

定期的な監査・モニタリング体制を構築するとともにネットワークを密にすることによる品質の維持に努める。

Q.H3の開発について

A.現状はポンプで見つかった課題に取り組んでいる。

その上で、計画的な試験機の打ち上げを目指す。

Q.無人機について

A.防衛と民間の2つの需要に対応している。

航空機のみならず、省人化のニーズに応えるさまざまな製品づくりに取り組んでいる。

Q.風力発電について

A.陸上風力発電からは2015年までに撤退した。

洋上風力発電デンマーク企業との合弁会社と協力しながら各種事業を継続している。

Q.波動を用いた再生可能エネルギー発電について

A.再生可能エネルギーについては基礎的技術の開発に取組んでいる。

その一環として、小さな発電装置というものに対してあらゆる可能性を念頭に対応している。

Q.みなとみらい技術館の人数制限について

A.コロナ禍の収束を踏まえて対応する。

なお、Webの活用も実施している。

Q.三菱重工業ゆりかもめのような遅い交通システムしか作れないのか!?

A.制約条件のもとで安全性を第一と考えた結果の交通システムである。

Q.ミッション・ネット・ゼロの達成の見込みは

A.2040年を目途に固い決意で臨んでいる。

水素還元製鉄の研究開発もそれに貢献できる可能性があると考える。

決議事項

・剰余金処分の件

・定款一部変更の件

・監査等委員でない取締役7名選任の件

・監査等委員である取締役1名選任の件

拍手を持って原案通り賛成・可決されました(修正動議は否決)。

⑷ 株主還元    

配当

1株配当実績は下記の通りです。

・2024年3月期:200円

・2023年3月期:130円

・2022年3月期:100円

・2021年3月期:75円

・2020年3月期:150円

・2019年3月期:130円

・2018年3月期:66円

・2017年3月期:12円

2018年から増配基調となり、一旦はコロナ禍で減配しますが再び増配。

連結配当性向は30%としているので今後も期待されます。

株主優待  

なし 

自社株買い

実施せず

【丸の内二重橋ビル】

                

3 株主としてのコメント

⑴ 自社株買い無しについて

株価が上昇トレンドを継続しています。

しかも、自社株買い無しでここまで株価を上げるというのは投資家の期待の大きさを物語っています。

反対に考えると自社株買いに積極的なのに株価が冴えない会社というのは、もう少し根本的に経営を見直したほうがいいいと思います。

会計マジックを駆使しなくても株価を上げ得ることをMHIの株価が教えてくれました。

⑵ サイレントマジョリティ

株主総会で、徴用工問題に対する株主の質問に対して、会社が「解決済み」と言明したことに対して、会場からの拍手がライブ中継でも伝わってきました。

サイレントマジョリティというか、心ある多くの株主が会場に集っている様子が目に浮かびました。

また、修正動議についても同じようなことがたの総会で実施されていましたが、会場の多くの株主によって否決されています。

三菱重工業はこのような多くの株主の愛に支持されていることに矜持を持って頑張ってほしいと思います。

ちなみに株主構成では、外国人と個人投資家がそれぞれ3割という割合になっているようです。

ゆりかもめ台場駅

4 まとめ

三菱重工業について述べてきました。

脱炭素日本の安全保障に極めて重要な役割を果たしている会社です。

自社株買い無しにも関わらず株価が上昇基調なのは、心ある多くの株主サイレントマジョリティ)と市場の期待の高さを物語っていると考えます。

広い視野と長期的な展望を持ちつつ株主として応援していきたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

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