こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

ユーザーローカル【3984】~株主総会雑感(急騰した株価の急落について)

初投稿:2021.10.4、更新日:2022.9.  、2023.9.22

こんにちは!

この記事は、ユーザーローカル【3984】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2023年9月期の株主総会についてのコメントを追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

・テンバーガーとして死角は無いか?

・何故、IT企業の株価がさえないのか?

【目次】 

株主総会の会場 メルパルク東京

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1 ユーザーローカルについて

⑴ 会社概要

ビックデータ・AI関連の会社です。

業種はSI・ソフトウエア開発。

売上高32億円、総資産72億円、時価総額299億円の事業規模

会社の付加価値(のれん、ブランド力)を示すPBRは4.68倍と投資家の評価も高めです。

企業理念等 

⚫️ビジョン

ビックデータ・人工知能で世界を深化させる

⚫️5つのバリュー

1 ユーザーは常に正しい

2 長期的発展

3 規律と遊び

4 One for All

5 ポジティブドリブン

妥当な経営理念だと思います。

ただし、気になるのは社長の中で経営理念とビジョンの区別ができていないこと。

例えば、上記の”ビジョン”が株主総会召集通知の事業報告では”経営理念”に置き換わっています。

ビジョンと経営理念は同じものなのでしょうか?

一般に、

理念→ビジョン→計画

の順に抽象的なものから具体的なものになると言われています。

よって、ビジョンとは理念ほど抽象的でもなく、計画ほど具体的でないものとなります。

そして、その”管理された曖昧さ”であるビジョンがが社員に共有(腹落ち)されることで、様々なアイデアが湧き上がってくるという原動力となると言われます。

当社の場合、中期経営計画もありません。

これでは、社内の知的生産の仕組みがうまくいっているのかどうか分かりません。

もし、優秀な社員がその能力を発揮できずに勤務しているとすれば悲劇です。

セグメント

・データクラウド事業単一セグメント

 ビックデータ・AIを活用したマーケティング分析及び業務支援サービスを開発・提供

・コアプロダクト

User Insight:Webマーケティング支援ツール

 Webサイト訪問者の属性分析を更に迅速化・高度化することで、訪問者ごとにサイト内容が変化するリアルタイムパーソナライゼーションをじつげんし、CVRの向上を図る。

Social Insight:ソーシャルメディア解析ツール

 SNS上でのやり取りを自動化し、マーケティングオートメーションを図る。

サポートチャットボット:人工知能を活用した顧客サポート業務の自動化サービス

 カスタマーサポート等企業受付の自動化

⑵ 株主になったきっかけ

会社を知るきっかけはネットでのテンバーガー候補銘柄としての紹介です。

その後、株価や業績をモニターし続けて2021年に購入。

株価は冴えませんが、長期保有を予定しています。

⑶ 2023年6月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:93%

売上高営業利益率:42%

高収益なビジネスモデルです。

しかも、前期に比べて粗利率が1%、営業利益率が4%改善しています。

安全性

流動比率:781%

自己資本比比率:88%

短期的にも中・長期的にも問題ありません。

資本効率の点からはちょっと勿体無いようにも感じます。

ただし、会社の規模からするとこのくらい自己資本を厚くしておかないといけないのかもしれません。

社長の慎重な経営手腕が反映されていると考えます。

効率性

・有形固定資産回転率:65.36

IT企業らしく有形固定資産回転率は高めです。

この点では効率的な経営がなされていると考えます。

前期と比べても数値は向上しています。

これは、売上高が増加した一方で、有形固定資産が減少しているからです。

⑷ 2022年6月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:92%

売上高営業利益率:38%

高収益なビジネスモデルです。

しかも、昨年と同様の収益性を維持しています。

安全性

流動比率:817%

自己資本比比率:89%

安全性についても問題ありません。

むしろ、キャッシュリッチ企業として、この豊富なキャッシュをいかに有効活用するかが問われているように思います。

効率性

・有形固定資産回転率:52.54

IT企業らしく有形固定資産回転率は高めです。

昨年の数値との比較から、ほとんど不動産には投資していないと考えられます。

経営分析雑感

経営分析から明らかなように収益性、安全性、効率性共に申し分ありません。

業績も絶好調です。

そして、ユーチューバーの中にはテンバーガー候補と見なす人もいます。

けれども株価は冴えません。

株主として考えた理由は次の通り。

・(2年前の買った時の株価が)割高だった。

・社長が地味で成長に欠かせないビジョンが共有されていない

・そもそも売上高26億円レベルの小さな会社機関投資家の資金が入りにくい。

逆に考えると、株価が上昇するためには多くの方に保有してもらう必要がありますが、社長が地味で、かつIRも積極的ではありません。

これでは投資家は当社に対して関心を持ち得ません。

このことは、貸株していて議決権行使書を得るために貸株を外すことを忘れてしまった自分の失敗談とも一致します。

さらに、スタートアップ企業が大企業に成長するためにはビジョンを多くのステークホルダーと共有することが大切であると、ベストセラー本『ビジョナリー・カンパニー』でも述べられています。

バーチャルオンリー総会をするということは、短期的には経費削減につながるかもしれませんが、中・長期的に会社を応援するコアな株主を育成するにはマイナスなのではないでしょうか?

そのようなことから、

「長期では報われるかもしれないが、短期では冴えない株価が当面続く」

というのが経営分析で得られた雑感です。

 

⑸ 2021年6月期の経営分析

株主総会招集通知記載の計算書類から分析を試みました。

増収増益で素晴らしい経営です。

ROE:14.2%、ROA:11.7%(総資産52憶)

株主資本や総資産を活かし高い利益を上げています。

収益性

・売上高総利益率(40%以上が際立つ競争力):91%(売上高:20億円)

売上高営業利益率(10%以上が優良株):41%

高収益のビジネスモデルです。

安全性

流動比率(200%以上が目安):865%

・負債比率(100%以下が目安):12%

自己資本比率(30%以上が目安):89%

財務基盤も盤石です。

効率性

・有形固定資産回転率:34.56

IT系企業ということで、土地・建物への投資は少なめです。

2 株主総会

⑴ 2023年9月の株主総会

第18回定時株主総会 2023年9月23日(金) バーチャルオンリー総会

社長のアップ画面と役員の画面の2つが配信されていました。

報告のポイントは下記の通り。

・16期連続の増収増益

・前期は過去最高益

・今後もChat GPTを活かした商品に注力する

・新商品の紹介

主な質疑応答

【事前】

Q.当社によるChat GPTの活用について

オープンAI社のChat GPTは汎用であるのに対し、当社の製品は企業独自のニーズに応えるものであり付加価値の高いものである。

Q.株主還元に無関心では?

A.4円配当するとともに、自社株がも検討する。

Q.株価は下落するばり。

A.申し訳ありません。

厳粛に受け止めています。

Q.当社の特許について

A.非公開であるがポイントは3つ。

・自社開発のツールなので継続的な改善が可能(受託生産では困難)

・テクノロジー人材が豊富

・低コスト

Q.個人投資家に不人気なバーチャルオンリー株主総会を来期も続けるのか?

A.来年度以降は未定

Q.無料サービスの趣旨は?

A.理由は3つ。

・新人エンジニアの教育

・大企業だけでなく、中小企業や個人にもAI技術のメリットを提供

・広告効果

【当日】

Q.公募増資について

A.プライム市場残存のため。

需給については一応ロックアップをかけている。

Q.中期経営計画について

A.業界の変化が激しいので計画の開示は考えていない。

Q.Vチューバーランキングの運営について

A.可能性はあるが、今後の具体的な展開については発表できるものはない。

Q.代理店の活用について

A.これまで、顧客の反応を直接確認したいために、直販を実施してきた。

今後は代理店販売も検討する。

Q.人材確保について

A.当社の勤務環境は働き方改革に乗っ取っている。

採用面接を増やしたり、大学の研修室への声かけをしたりして対応している。

福利厚生の充実も図っている。

Q.採用人数について

A.十分獲得できている。

Q.渡辺監査役の兼業の有無について。

A.兼業は実施していない。

米国公認会計士としての知見を活かして職務に精励している。

Q.海外展開について

A.技術に国境は無いが、販売や業務には各国独自の文化がある。

具体的な計画はないが、将来の海外展開の可能性はある。

Q.X(旧ツイッター)での発信の少なさについて

A.顧客企業のこともあり多く発信することはなかったが、今後は拡大に努める。

Q.上場して良かったことは?

A.採用面、営業面でメリットがあったとともに、取引先企業からの高評価を頂けた。

Q.当社の強みは?

A.ツール、データ、改善、売上の好循環である。

Q.来期の業績について

A.これまでと同様の手法で尽力するが、細部はIRや決算発表を参照されたい。

決議事項

・剰余金処分の件

賛成多数で承認・可決されました。

株主総会雑感(何故、急騰した株価が急落したのか?)

急落した株価について、「公募増資の影響」とか、「材料で尽くし(四季報)」などが報じられています。

自分の考えは、急騰した株価に対して多くの株主は

「この高値は長く続かない」

と考えたから売却したのだと思います。

自分もその一人です。

では何故、すぐに株価が急落すると株主は考えたのか?

理由は二つ。

・将来の成長ストーリーがよく見えないから。

これは自分の中では、株主総会における社長の説明に説得力や熱意が感じられなかったことと一致しています。

・売上高40億円規模の会社であり、株価の乱高下は当たり前だから。

16期連続の増収増益と胸を張っても、事業規模は100億円未満の会社。

バリュエーションも高く、何かあれば、何かなくても株価が乱高下するのは”ふつう”のことです。

一方、ちょっと可哀想に感じたのは既存の株主のこと。

会社の企業価値向上を願うような真摯な質問が多かっただけに、株主の純粋な期待を裏切るような株価はちょっと気の毒に感じました。

3年以上株主をしていましたが、買値を株価が上回ったのはわずかに2回ほど。

次の急騰場面が来るまでに年単位の時間を要すると予想します。

資金効率を考えて再び株主になるとしても少し先になりそうです。

⑵ 2021年9月の株主総会

第16期定時株主総会 2021年9月22日(水) ホテルメルパルク東京

参加しました。

社長のあいさつに続いて、プライム市場への移行の報告がありました。

続いて、サポートチャットボットゆうこさんからの事業紹介。

コアプロダクト3製品に加え、カンニング抑止AI」「集中力の可視化」「個人情報保護のためのマスキング処理」「人物分析AI」など時代のニーズに応える画期的な商品が紹介されました。

■質疑応答

Q.事業領域について:会社四季報ではソフトウエア開発企業、招集通知書ではデータクラウド事業、総会の事業紹介ではサポートチャットボット等のAI企業としているが、社長が認識している事業領域(ビジネスドメイン)を教えて欲しい。

A. オンライン上でパッケージソフトを販売して収益を得ているが、パッケージソフトクラウド上のデータに紐づいているのが他社にない強み。

今後は、チャットボット領域でのシェア拡大を目指す。

Q.資本業務提携について:認知度向上について広報という手段をとるとのことだが、資本業務提携というアプローチによる認知度向上、信頼性向上、人材確保の考えはあるのか?

A. 提携という手段は有益と考える。

けれども会社のリソースの関係で、実施するとなると今ではなく将来になる。

■決議事項

・剰余金処分の件

・定款一部変更の件

・取締役等に対する譲渡制限付き株式の付与のための報酬決定の件

について滞りなく承認されました。

⑶ 株主還元    

配当

1株配当の推移は下記の通りです。

・2023年6月期:4円

・2022年6月期:3円

・2021年6月期:5円 

1円の増配です。

業績は右肩上がりなのに配当が増減する理由がよく分かりません

また、対処すべき課題の中に、

「認知度及びブランド力の向上」を掲げていますが、株主すら大切にしない会社が認知度やブランド力を高めることは難しいのでは?

掲げていることとやっていることがチグハグです。

ひょっとしたら、社長は良いサービスさえ提供すれば業績が伸び会社が成長すると勘違いしているのでは?

もう少し、さまざまなことを考えないと投資家の期待には応えられないと思います。

株主優待

なし

 

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3 株主としてのコメント

⑴ テンバーガー候補として死角は無いか?

2021年の株主総会に出席して感じたテンバーガー候補としての死角について社長と社員の要因別に分析してみました。

・社長

まじめで地味な印象を持ちました。

リスクを抑え上手にここまで経営してきたことが伺えます。

長期的発展というバリューに基づいた結果だと考えます。

けれども、成長には連続的な成長飛躍的(非連続的)成長の2種類がり、この飛躍的成長についての機会損失が生じているのではないかと懸念しています。

既存事業を核としながらも、やり慣れないことへのチャレンジすることも必要です。

同業者のアルベルトの社長は、自動車、保険、携帯とうの大手企業との資本業務提携を通じて過去においてテンバーガーを達成しています。

同じくテンバーガー候補と見なされているビザスクの社長は大規模なM&Aに打って出て株価が大きく上昇中です。

その意味で、社長の”攻め”の姿勢がまだ見えていません。

社長が今後、コンフォートゾーンを抜け出して、チャレンジゾーンにて勝負することが会社のさらなる成長には欠かせないと考えます。

・従業員

従業員数は76名しかいません。

東証1部上場企業でプライム市場への移行が予定されていますが、社員数が少ないと思います。

サービス業の中小企業の定義は

・資本金5000万円以下

・従業員100人以下

のいずれかを満たすことと定義づけられています。

従って、ユーザーローカルは大企業ではなく、中小企業です。

よって、85名の社員(1年で9名の増加)という会社のリソース不足により成長機会の損失が生じる懸念があります。

実際、認知度向上という「対処すべき課題」に対して、「業務提携」の効果を認識しつつも、人数の制限により「広報」という手段しかとり得ないと社長も総会で発言しています。

今はDXに追い風が吹いていますが、いつまでもチャンスは続くとは限りません。

世の中の流れに上手に乗るためにも、社内態勢の拡充を図ることが望ましいと考えます。

⑵ 何故、IT企業の株価がさえないのか?

ユーザーローカル、ブレインパッド、PRKSA等のIT企業の株価がさえません。

どちらかと言えば、乱高下しているような株価推移です。

何故、さえないのか?

IT関連銘柄は旬であり人気がありますが、本当に理解している人が少ないため、握力が弱く、機関投資家の売等の影響をもろに受けているというのが私の見立てです。

9月にユーザーローカルとブレインパッドの株主総会に出席しましたが、出席する株主数は極めて少なかったです。

コロナ禍やブレインパッドの場合はライブ中継という要因があるにしても、二けたに届かない出席者数は残念です。

日本航空JAL)は昨年11月に公募増資したにもかかわらず株価がV字回復しています。

そして、日本航空JAL)の株主総会の出席者数が抽選だったにも関わらず、約500名という大人数であったことを考え併せると、

「株主の会社への強い関心が株価にも良い影響を及ぼす。」

と考えます。

あるいは、将来のIT企業間の過当競争を織り込み始めたのかもしれません。

いずれにしても、株価が同様な動きをすることは要注目です。

4 まとめ

テンバーガー候補としてユーザーローカルを分析しました。

長期的発展を意識した良い経営をしていると考えます。

ただし、懸念点として社長の飛躍的発展(攻め)に対する意識が見えないことや従業員数85名という経営リソースの少なさによる機会損失、そしてIT企業に共通する株主の会社に対する関心の希薄さが気になっています。

そして、社長のビジョンという概念に対する認識、成長ストーリーについての説明などには改善の余地が少なくないと感じました。

そして、今回のChatGPTブームで株価が急騰を利用して利益を確定しています。

3年間長かったです。

しばらくは株主になることはないと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。

投資は自己責任でお願いします。 

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