投稿日:2022.5.11、更新日:2023.4.28、2024.5.13
こんにちは!
この記事は、エニグモ【3665】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2024年4月の株主総会の内容を追記して記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・減収で株価も低迷
・スペシャルな市場を通じて豊かな人生を応援するビジョン
【目次】
1 エニグモについて
⑴ 会社概要
服飾に特化したネット通販「バイマ」を運営している会社です。
売上高62億円、総資産132億円、時価総額141億円の事業規模。
会社の付加価値(のれん、ブランド力)を示すPBRは1.25と低い評価。
円安の影響で、業績と株価は低迷中です。
ビジョン
"Speciality" Marketplace
バリュー
●セルフスターター
他人や環境に左右されず、自ら目標を見つけ引き金を引き、突き進める人
●アウトパフォーマー
自分の強みを鍛え、常識、限界、期待値を超えていく人
●チームビルダー
”日頃”のチームづくりと”実践時”のチームパフォーマンスに貢献できる人
読んだだけですが、分かりやすく良い方針と思います。
⑵ 株主になったきっかけ
1月決算銘柄で、業績の良いネット通販企業に関心があり購入。
NISA口座を利用しましたが、たちまち含み損。
グロース企業にとっては金利が上昇する今は厳しい時代かもしれません。
⑶ 2024年1月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:78%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):16%
高収益性を保っていますが、利益率はそれぞれ前期よりも1%ずつ低下しています。
減収・増益という結果ですが、円安などの厳しい経営環境の中にあって成長性の鈍化が気になります。
安全性
・流動比率(100%以上が望ましい):419%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):80%
短期的にも中・長期的にも安全性については問題は見当たりません。
前期同様に、財務面はしっかりとしていると考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:89.80
売上高減少もあり、回転率は高水準であるものの前期からは低下しています。
⑷ 2023年1月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:79%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):17%
高収益性を保っていますが、営業利益率は昨年よりも大幅に低下しています。
これは、戦略的投資としてTVCM・採用活動の強化により販管費が前期比136%となったためだ説明されています。
成長企業としてのあり方として積極的に評価して良いと考えます。
安全性
・流動比率(100%以上が望ましい):461%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):80%
短期的にも中・長期的にも安全性については問題は見当たりません。
円高の影響という厳しい環境において地に足をつけた経営がなされていると考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:110.66
昨年同様、オフィス等への投資はミニマムでありIT企業らしい効率的な経営がなされていると考えます。
⑸ 2022年1月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:81%
・売上高営業利益率:40%
高収益なビジネスモデルです。
世界166カ国のパーソナルショッパー約19万人の嗜好性が上手く反映されていると考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):474%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):79%
短期的にも中・長期的にも安全性に問題は見当たりません。
財務レバレッジに依存しない、手堅い経営だと考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:163.77
有形固定資産への投資についても効率的になされていると考えます。
なお、勘定科目としては「建物」と「工具器具備品」のみの約4600万円となっておりIT企業らしい効率的な経営だと思います。
【東京ミッドタウンの1階の様子】
2 株主総会等
⑴ 2023年4月の株主総会
第20回定時株主総会 2024年4月27日(木)東京ミッドタウンカンファレンス
昨年同様に受付にて水を頂きました。
以前の株主総会に比べると参加社は少なめ。
厳しい経営環境の中、守りを固め、将来の攻めも準備している現状について社長から説明がありました。
主な質疑応答
Q.役員報酬が高すぎる(平均の3倍)件について
A.売上、利益に応じた報酬制度になっている。
役員報酬については他社との比較も考慮している。
業績低迷について役員報酬は減額となっているが、その下げ幅の水準が足りないというご指摘については真摯に受け止め検討したい。
ただし、高慢経営をしているわけではないことはご理解いただきたい。
Q.サイキンソーへの出資はヘルスケア分野への展開と考えて良いのか
A.まだ、検討の段階で具体的な回答は差し控えるが、TV CMを予定している。
Q.ハワイのツアーの差別化について
A.ハワイのみならずグアムも現地のオリジナル商品と組み合わせたツアーを企画している。
Q.プライム市場への移行と自社株買いについて
A.現在条件を満たしていないのは、流通時価総額を250億円以上にすること。
これについては売上を上げることで達成したいと考える。
自社株買いについては中長期の戦略の中での利用を考えており、その場合でも償却せず保有することを考えている。
決議事項
⚫️剰余金処分の件
⚫️取締役4名選任の件
⚫️監査等委員である取締役2名選任の件
⚫️補欠の監査等委員である取締役1名選任の件
拍手を持って承認・可決されました。
株主総会雑感
3年連続で参加しましたが、やはり株主から質問も少なく、少し寂しい株主総会だったように感じます。
経営については、いろいろ頑張っているようですが、やはり以前の成長性の高さを知る株主からは物足りなさを感じてしまうのは仕方のないことかもしれません。
また、経営者というのは環境が変化しても生き残れるような仕組みを作るのがその役割だと思いますが、当社の場合、円高になって海外のブランド品が国内で売れることへのこだわりが強すぎるのではないかと懸念しています。
円高になっても円安になってもどちらでも収益が向上するような仕組みが出来ているのか否なは良く分かりませんでした。
INPEXのような石油・天然ガスの会社であっても、脱炭素ビジネスを大きく成長させています。
もし、当社の円高依存のビジネスモデルが、財務基盤の高さゆえに見直されないのであれば、長期的に見ると残念な結果になるのではないかと感じました。
⑵ 2023年4月の株主総会
第19回定時株主総会 2023年4月27日(木)東京ミッドタウンカンファレンス
入り口で昨年同様にペットボトルのお茶を頂きました。
社長による事業報告と今後の展望についての丁寧な説明がありました。
主な質疑応答
Q.PS Eliteによる取扱高について
A.数値については非公開である。
Q.効果的な広告について
A.TVCMやSNSを通じて実施しており、さまざまな角度から費用対効果を検証し続けている。
合わせて、専門家による細部に至るデータ解析も実施している。
Q.株価について
A.割安と認識している。
Q.自社株買いについて。
A.これまでは実施してきたが、プライム市場の上場基準における流通株式数に影響が及ぶため、株主還元については配当を中心に実施している。
Q.会社のガバナンスについて
A.(社外取締役より)透明性の高い取締役会が実施されるとともに、高いモチベーションを持って業務に当たっている。
また、社内の雰囲気も風通しが良いと感じている。
Q.月次の業績について
A.月次は非開示であるが四半期毎の発表を実施しているので、そちらを参考にしていただきたい.
Q.(3回目の株主総会出席者より)年々ムードが弱気になっているが、今後の展開について
A.ご指摘の通り当社の強みである非日常領域を中心としたスペシャリティなマーケットの領域を拡充することを目指していく。
Q.M&Aについて
A.ご指摘の通りM&Aは簡単ではない。
まずは、役員レベルでカルチャーフィットするかどうかを見極める事が重要である。
そして、現場感覚も大切にするよう、専門の執行役員を2名を配置することとした。
高値掴みとならぬよう、ファイナンシャル部門にも知見を有する人員を配置し、慎重にM&Aを進めていきたい。
Q.今後の展望について
A.スペシャルな領域を広げることで人生の豊かさを応援する会社として国内、ひいては世界に向けて事業展開をしていく所存である。
Q.戦略の実現性について
A.外部コンサルタントの活用、アイデア出しなどを踏まえて解像度を高めており、100%は勿論難しいが、十分に実現可能と考える。
Q.バイマトラベルについて
A.旅行というのは極めて単価の高い商品と認識している。
当社が重視するプライベートバリューとも親和性がある。
現在は、当社の強みである100億円の手元資金を活かす上で、勝負しやすい環境になってきたと考える。
Q.(パーソナルショッパーの株主より)法人と個人の比率について
A.比率については非開示である。
ただし、特定商品に対する法人の強みや幅広い分野における個人の強みの双方をバランスをとっていきたい。
パーソナルショッパー離れ防止に留意しつつ共存できる環境に努める。
決議事項
・剰余金処分の件
・取締役4名選任の件
・監査等委員である取締役1名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
なお、新役員の紹介がなされ際は、拍手が送られていました。
株主総会雑感
活気という点では昨年には及びませんでしたが、11時半近くまでの間、中身の濃い議論がなされたと思います。
特に、事業を通じて豊かな人生を応援するというビジョンを社長から聞けたのは良かったです。
事業環境は厳しいものの、経営については奮闘していると感じました。
しばらくは塩漬け状態を覚悟の上、来年以降の株主総会も楽しみにしています。
⑶ 2022年4月の株主総会
第18回定時株主総会 2022年4月28日(木)東京ミッドタウンカンファレンス
会場でお茶をいただきました。
30人ぐらいの方が会場にいたように思います。
社長の挨拶で始まりました。
事業報告については”物足りない”とおっしゃっていたのが印象的。
原因としては認知率の低さゆえの新規会員の獲得に苦戦したとのこと。
一通りの説明を終えたのちに質疑応答の時間となりますが、こんなにたくさんの質問が出た総会は久しぶりのことでした。
主な質疑応答
Q.障害者雇用について
A.まだ実績はないが、積極的な採用に取り組んでいく。
Q.市場の評価が低いこととTV広告について
A.TV広告の効果はある。IRの積極的な実施とメリハリ投資を心がける。
Q.人材採用&個人投資家説明会の積極的実施について
A.積極的に実施する。
Q.トップライン拡大に伴う営業利益率について
A.規律を持った投資を続けるためこれまでと構造は変わらない。
Q.円安の影響について
A.出品価格の上昇に伴う割高感が予想される。
Q.業績低迷の内部、外部要因と対策について
内部要因:新規顧客の獲得に苦戦
外部要因:消費マインドの低迷、気温上昇の影響、配送費の高騰、(ユーザーのプライバシー保護のための)広告のトラッキング規制
対策:データサイエンスを駆使してLTV(ライフタイムバリュー:顧客生産価値)を上げる。
Q.リベンジ消費について
A.ビビットなリベンジ商品は期待できないが、長期的にみるとバイオリズムに従って消費が向上することが期待される。
Q.株価低迷とIR体制(63頁のスキルマトリックスを踏まえ)について(拍手あり)
A.積極的なIR活動に期するよう役員の人選を見直す。
Q.データサイエンティストの採用によるデータドリブンのマーケティングとは?
A.離脱する人の兆候が分かるので、その人に対処することでリピート率向上につなげたりしている。
Q.グローバルバイマの現状と見通しについて
A.日本の商品の魅力を十分に伝いきれていないので引き続きチューニングに努める。
Q.自社株買いについて
A.開示ルールに従い、月次報告を月初に示している。
Q.取締役と会場に女性がいないことについて
A.現在、取締役の女性はいないが管理職の30%は女性である。
Q.業績予想について?
A.現在は、総合的に考えて出していない。
Q.株主優待について
A.今は業績を優先させたい。
Q.M&Aの要件について
A.20%の複利成長に貢献できる企業をグローバルに選んでいきたい。
Q.世界が注目するウクライナにちなんだ広告について
A.まだ、広告でやるべきことが山積しているのでそちらを優先させる。
Q.自社株買いで3月に買わなかった理由について
A.証券会社に任せているのでコメントは差し控える。
Q.デジタルファッションとは?
A.NFTを用いたものであり、まだ未知の部分が大きいが大きな可能性を感じている。
Q.最後にいい話は?
A.アフリカへの投資において、e-コマースの可能性や可能性やアントレプレナーの活躍など期待できる!
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役4名選任の件
・監査等委員である取締役3名選任の件
・補欠の監査等委員である取締役1名選任の件
・取締役の報酬額設定の件
・監査等委員である取締役の報酬額設定の件
・取締役に対するストックオプションとしての新株予約権に関する・・・
拍手を持って賛成・可決されました。
⑷ 株主還元
配当
1株配当実績は下記のとおりです。
⚫️2024年1月期:10円
⚫️2023年1月期:10円
⚫️2022年1月期:10円
⚫️2021年1月期:10円
業績が厳しい中、株主還元にもしっかりと対応されている姿勢は評価できます。
株主優待
なし
自社株買い
発行済み株式の6%である250万株について自己株式の取得を実施中。
【東京ミッドタウンカンファレンス】
3 株主としてのコメント
⑴ 好感が得られたこと
会場入り口で女性からお茶をいただきました。
心遣いが嬉しいです。
また、株主総会で多くの質問に対し長時間真摯に回答されていた社長の株主に対する姿勢に好感が持てました。
ちなみに、東京ミッドタウンでの株主総会は持株の中ではMSOL以来ですが、
”類は友を呼ぶ”
という言葉通り好業績を継続を継続してほしいと感じています。
⑵ さえない株価について
株価が下落する理由は、業績の低迷、不祥事、将来への期待が持てないことの3つが挙げられます。
業績も良く不祥事もないことからさえない株価の原因は、成長鈍化などの将来への期待の剥落が考えられます。
具体的には新規顧客の獲得に苦戦していることや円安に伴い日本国内の消費マインドが低迷することなどが投資家から懸念されていると思います。
会社ののれん(無形の価値、ブランド力)を示すPBRも約1倍という低さであることも、投資家や市場からの評価が低いことの証左です。
問題点は把握しているのでそれらを克服し、会社の将来への成長ストーリーをしっかりと語ることが株価のトレンド転換には必要と考えます。
⑶ 気になったこと
女性株主の不在
普通の会社の株主総会でも女性株主は数名程度参加します。
まして高級ブランドのショッピング関連の会社なら女性の関心も高はず。
さまざまなブログにおいて、
「元○○でも年商1000万円!バイマを使った物販ビジネス・・・」
のような女性ブロガーを沢山知っています。
よって会場には多くの女性のステークホルダーが訪れると予想していました。
ところが、役員に女性はいませんでした。
さらに、参加した株主にも女性が皆無!
こんなことは、珍しいことです。
全くの謎です。
来年も総会に参加するつもりですが、女性が参加するかどうかについても着目したいと思います。
社長が演題のモニターを見過ぎ
社長がモニターを見る回数がちょっと多いかなと気になりました。
株主と真剣に対話する中で、モニターを見ることに注意を奪われることは決して好ましいことではありません。
そもそも、自信がないような印象を与えてしまいます。
基本は株主との質疑応答に集中しつつ、必要に応じてモニター情報を活用するなど見直してみてはどうでしょうか?
ビジョンレベルの話が少ない
ショッピングでどんな世界を実現したいか?
顧客に提供できる価値は何か?
など、ビジョンレベルの話が少なかったように思います。
成長企業が大企業になるためには、会社のビジョンの内外への周知徹底が極めて大切だとのこと。
そう考えると、社長が質疑応答に答えているだけでなく、ビジョンレベルの話を株主に語りかける時間を作った方が良いように感じました。
質問好き株主が沢山いることは良くわかりました。
ここは、総会終了後に事業説明会を開き、そこでまず社長が描く壮大な夢・ビジョンについて大いに語って貰った後に、株主と大いに語り合うスタイルも良いのではないでしょうか?
【株主総会の案内板】
4 まとめ
エニグモについて述べてきました。
株主総会に3回連続で参加し続けて、業績、株価、株主の関心の3つが深く関わっていることを実感しました。
ユニークなビジネスモデルで、財務基盤も安定していますが、為替がどのように変化しても収益を生む仕組み作りについては不満を感じました。
グロース市場の株価指数は3年前に比べて半分以下に低迷しています。
大規模なM&Aや海外への積極的な進出などによる現状打破を期待します。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
#投資 #株式 #株主総会 #資産形成 #資産運用 #エニグモ #バイマ