初投稿:2022.2.19、更新日:2022.7.
こんにちは!
この記事は、三菱商事【8058】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
・時代とともに変化する総合商社のビジネスモデル
・上方修正&増配、EX・DXの一体推進
【目次】
【三菱商事の本社ビル】
1 三菱商事について
⑴ 会社概要
総合商社の大手で三菱グループの中核企業です。
総資産22兆円、売上高17兆円、時価総額5.6兆円の事業規模です。
バフェットが大量購入したとが話題となりましたが、なおPBRが0.82と割安です。
また、株主構成は
・金融機関・証券会社:47.51%
・外国法人等:28.03%
・個人・その他:18.03%
となっています。
企業理念
「三綱領」
●所期奉公:事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。
●所持公明:公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。
●立業貿易:全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。
歴史のある会社であることを思い出させてくれるような企業理念だと思います。
「中期経営戦略2021」
●事業ポートフォーリオ
●成長メカニズム
●人事制度改革
●定量目標・資本政策
セグメント
・天然ガス
・総合素材
・石油・化学
・金属資源
・産業インフラ
・自動車・モビリティ
・食品産業
・コンシューマー産業
・電力ソリューション
・複合都市開発
・その他、調整・消去
⑵ 株主になったきっかけ
高配当、資源高、日本を代表する商社ということで数ヶ月前に株主となりました。
バフェットも保有しているということで以前から気にはなっていました。
保有してからも基本的に株価は右肩上がり。
高配当株でもあり株主としては満足してます。
⑶ 2022年3月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:12%
・売上高税引前利益率:7%
前期よりも売上高税引利益率が向上しています。
ちなみにROEは15%と高い値を示しています。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):130%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):36%
前期とほぼ同じ水準です。
効率性
・有形固定資産回転率:6.20
前期よりも良くなっています。
おそらく、売上高の上昇の影響だと考えます。
⑷ 2021年3月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:12%
・売上高税引前利益率:2%
売上原価及び販管費が大きく、収益性は意外と高くありませんでした。
それでも売上高が巨額なので利益は大きな金額となります。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):132%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):35%
財務的に盤石とは言い難いですが、問題となる数値ではないと考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:5.13
卸業としては平均よりも少し下回る数値です。
⑸ 総合商社とは?
総合商社は
が大手7社と呼ばれています。
総合商社は
基本機能:商取引機能、在庫機能、金融・ファイナンス機能、情報・渉外機能
付帯機能:資源開発機能、オーガナイズ機能、事業経営・管理機能
の機能を有すると言われています。
資源株と見做されることが多い総合商社。
でも、それは付帯機能である資源開発機能に注目されてのことと考えます。
そもそも、総合商社は時代の変化に合わせて柔軟にビジネスモデルを変化させており、非資源分野の育成にも力を注いでいるようです。
脱炭素の流れで、太陽光や風力、水素など新エネルギーへの転換が図られています。
【株主通信の表紙】
2 株主総会等
⑴ 2022年6月の株主総会
2021年度定時株主総会2022年6月24日(金)ザ・プリンスパークタワー東京
資源高と経済回復を背景に過去最高益となったと報告がありました。
また、EXとして2050年のカーボンニュートラルの達成のため、洋上風力発電、水素、アンモニアに注力するとのこと。
さらに、DXとしてデジタルとリアルの融合を推進し自動運転などの実用化を目指すとのことでした。
対処すべき課題として、中期経営計画2024(MCSVの創出)について説明がなされていました。
主な質疑応答
【事前の質問】
Q.業績、配当について
A.純利益については、2022年の8500億円に対して2024年は8000億円を見込んでいる。
配当については150円、自社株買いは700億円を予定している。
Q.成長戦略について
A.EX・DXをすすめ再生エネルギーを拡充し、現状12%のエネルギー自給率の向上に努める。
Q.サステナビリティについて
A.カーボンニュートラルのロードマップに基づき、成熟した社会的課題(マテリアリティ)の解決に努める。
【会場からの質問】
Q.新社長としての心構えについて
A.”つながり”を大切にしており、コミュニケーションよくやっていきたい。
Q.電力ソリューションとしての潮力発電について
A.まだまだ技術開発段階である。
Q.未来創造、地域のブランド化の具体化について
A.脱炭素実現のためには地域の理解が必要であり、そのためには地域の活性化が不可欠である。
ともに発展させていくことが重要。
Q.総合商社の中での首位奪還後の展開について
A.スリム化も含め一つ一つの事業を丁寧に見直していく。
Q.社外取締役から退任の総括
A.三菱商事は多様性のある会社。
その気があれば各種会議に社外取締役として100回程度参加も可能。
強みとしては多様なビジネスを実施していることから適時入れ替えが可能なことと、全世界に展開していることによりリスク対応が可能なこと。
社内に優秀な人材が豊富である。
新社長は体格が大きくて緩やかに見えるが、行動力がありスピード感のある経営をされる人物。
(会場から拍手)
Q.チャイナリスクについて
A.重要な国だが、リスク・エクスポージャー(最悪の場合投資した資産を失う変動リスク?)は実施済み。
基本的には自由・資本主義以外への投資はしない。
Q.原油価格の前提がきこ変動リスクに一致しているか?
A.デロイトトーマツとの対話や幅広い調査により、1.5°Cシナリオと原油価格の一致に務めている。
Q.ESG(環境)と資源価格上昇(利益)について
2原論では語れない。
エネルギーの安定供給、環境配慮、競争力という3つのテーマを考慮して経営に当たる。
特にE(環境)のためにはS(地方)に力を入れることが大切と認識している。
Q.何故、新社長に選ばれたと思うか?
A.6年前だったら選ばれなかった。
エネルギー・電力分野での実績が評価されたと思う。
37年間の会社人生を歩んできた。
さらに43年間会社のために全力を尽くす。
Q.定款一部変更に対する修正動議
A.承知した。
Q.総合商社とは?
A.多様性を持っていることが強み。
Q.設備投資の表記と株主還元について
自社株買いよりも成長投資を重視する。
株主還元は配当を中心に考える。
Q.再生エネルギーの展望と製品の国産と外国産について
A.現在12%のエネルギー自給率をエネルギー安全保障の観点から風力、太陽光、水力などにより高めるよう努めている。
性能の良さも大切だが、競争力も考えなければならない。
国産と外国産の製品が切磋琢磨することが大切。
Q.株価の急落について
A.直近では豪州の石炭のロイヤリティの引き上げなどの影響が考えられるが、当社は強靭性を持っているので限定的と考える。
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役11名選任の件
・監査役2名選任の件
(株主提案)
・定款一部変更の件
・定款一部変更の件
会社提案の4件が拍手を持って賛成・可決され、株主提案と株主からの修正動議は否決されました。
終了後に新役員の紹介がありました。
最後は、
「みんなで力を合わせて当社の企業価値向上に邁進する所存ですので・・・」
との社長の言葉に対する株主からの拍手で締めくくられました。
株主総会雑感
週刊ダイヤモンドという雑誌によると三菱商事は今回の社長の交代に際して、王者の余裕を示したとのこと。
それは、総合商社の首位奪還ということで前社長に花を持たせつつ、かなりの損失を計上することで新社長の円滑なるスタートにも配慮したというものです。
記事の内容については検証できませんが、退任する社外取締役の話などから優秀な人材が互いに協力して経営に当たっている様子を垣間見ることができました。
全般として気持ちの良い株主総会でした。
視聴して良かったです!
⑵ 2021年6月の株主総会
2021年6月25日(金) ザ・プリンス パークタワー東京
アーカイブ配信を利用して視聴しました。
事前アンケートに基づく、業績と配当についての説明とともに9つの質問に対する回答もしっかりと編集されていました。
説明責任を積極的に果たそうとする姿勢に好感を持ちました。
⑶ 株主還元
配当
一株あたりの配当の推移
2018年度:125円
2019年度:132円
2020年度:134円
2021年度:134円→142円(見通し)
高配当で増配基調であり、株主としては満足です。
また、累進配当性を採用しており、業績の影響を局限して長期に株主に報いる方針もありがたいと考えます。
株主優待
なし
その他
株主優待ではないので、外国人も不満はないかも?
2022年9月まで有効なのでそれまでにミュージアムへ足を運んでみます。
3 株主としてのコメント
⑴ 株主通信を読んで
他の会社と同様にカーボンニュートラル社会へのロードマップが紹介されていました。
けれども中身はEX(2兆円投資)と(NTTと組んだ)DXの相乗効果を狙う内容となっており、他社よりも良く練られているように考えます。
そして、ウエストホールディングスから調達した太陽光発電の再エネをAmazonに長期供給する取り組みが紹介されていました。
未来創造に挑戦する事業展開に注目していきます。
⑵ 気になっていること
株主総会で◯期、○回の表記がない
1870年(明治3年)に土佐・高知藩の岩崎弥太郎が設立した海運業の九十九商会が会社の源流である歴史の長い会社のためかもしれません。
ただし、年度表記なので総会実施日と一致しないのがややこしく感じます。
ファシリティ・マネジメントの分野でイオンディライトと競合?
産業インフラ事業におけるトピックスとして、ファシリティ・マネジメントへの進出が記載されていました。
読んでみると、人材不足を解消するためDXに力を注ぐとのこと。
イオンディライトと同じことが書かれており、どちらかが真似したのかもしれないと、少し気になりました。
EPSの予想
2021年3月期:116.9円
2022年3月期:635.1円
2023年3月期:484.8円
2024年3月期:550.4円
と予想されています。
今期はV字回復し過去最高益を更新していますが、23年3月期は減益予想となっています。
少し先のことですが、右肩上がりの成長を期待しています。
【三菱商事の重要な子会社のひとつであるローソン】
4 まとめ
三菱商事について述べてきました。
「株価ではなくビジネスモデルを買う」というバフェットが保有するだけあって時代に柔軟に対応できるさまざまな事業を経営していることがわかりました。
株主としては配当をいただけたり、含み益を狙えることも大きな魅了です。
ただし、本当に三菱商事から学ぶべきは、生き残るために個人も企業と同様に時代に応じて変化することかもしれないと感じました。
お読みいただき、ありがとうございました。
【子会社の三菱HCキャピタル】
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。