投稿日:2022.2.16、更新日:2022.5.20
こんにちは!
この記事は、イオンディライト【9787】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年5月の株主総会の内容等を追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青地です)。
・株主、関連会社、従業員、銀行等のステークホルダーに優しい会社
・株価の下落トレンドと経営戦略について
【目次】
【新オフィスが表紙を飾った中間報告書】
1 イオンディライトについて
⑴ 会社概要
ファシリティーマネジメントを事業領域とする商業・オフィスビル等の施設管理で売上首位の会社です。
企業理念
●「イオンディライト ビジョン2025」
アジアにおける「安心・安全」、「人手不足」、「環境」の3つを成長戦略の柱に社会課題を解決する環境価値創造企業を目指す。
●「中期3ヵ年経営計画」
「お客様起点の経営」、「DXの推進」、「グループ経営」を重視して事業活動を展開。
セグメント
7つの事業から構成されています。
( )の数字は2021年と2022年のセグメント別売上高構成比です。
全ての事業において前年同期比で売上高が向上しているのは評価できます。
設備管理事業(18.9→19.4%)
警備事業(14.4→14.9%)
清掃事業(20.8→21.1%)
建設施工事業(15.1→13.5%)
資材関連事業(17.6→17.8%)
自動販売機事業(8.0→8.3%)
サポート事業(4.9→5.0%)
⑵ 株主になったきっかけ
2月決算銘柄であり高配当だったため数ヶ月前に購入しました。
株価はほぼ横ばいですが、荒れる相場では意外と安心して持っていられます。
⑶ 2022年2月期の経営分析
収益性
●売上高総利益率:12%
●売上高営業利益率:5%
数値は前期と変わっていません。
収益性の低さは、外注費や労務費としてほぼ確立されたビジネスが継続さレていることを物語っています(細部は2021年2月期の経営分析をご覧下さい)。
見方によっては収益性を多少犠牲にしてでも、外注先と社員に対しては”精いっぱい報いている”とも考えられるかもしれません。
安全性
●流動比率(200%以上が望ましい):276%
●自己資本比率(30%以上が望ましい):65%
短期的にも中・長期的にも問題は見当たりません。
前期と比べても流動比率の数値がわずかに上昇した程度の差異がある程度です。
コロナ禍の中において安定していることは悪くはありません。
ただし、経営資源の活用という点ではビジネス環境の変化に柔軟に対応する姿勢が必要になってくるように思います。
効率性
●有形固定資産回転率:44.67
前期と比べて数値が高まっています。
ファシリティマネジメントの会社としては、有形固定資産について比較的、効率性が高いという見方ができます。
その一方で、土地や建物に投資がされていないとも考えられます。
その辺りの評価はビジョンや中期経営計画などの経営戦略を踏まえることが大切だと思います。
⑷ 2021年2月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:12%
・売上高営業利益率:5%
一般に、売上高営業利益率が10%以上の株は優良株と言われます。
その点を踏まえても、収益性は高くはありません。
特に、売上高総利益率が12%というのは自分の持ち株会社の中でも最も低い数値となります。
低いことの理由は売上原価が高いこと。
このことについてIRに聞いてみました。
すると売上原価の内訳として
・外注費:業務委託や商品原価
・労務費:会社直営でサービスを提供する人件費
の2つがあるとの回答でした。
このことから、取引先や社員に対してしっかりと報いている会社だと考えます。
一方、収益性の低さについての会社の認識を尋ねてみたところ
原価低減を図るためにDXによる事業構造改革を通じてサービスの省人化に取り組んでいるとのことでした。
今後はステークホルダーの満足度と収益性の両立が大切になってくると考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):249%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):65%
短期的にも、中・長期的にも安全性に問題はありません。
株主のみならず、債権者にとっても安心ですね。
そういった点では、ステークホルダーの中で銀行にも優しい会社とみなせるかもしれません。
効率性
・有形固定資産回転率:31.65
大部分の業種の数値が一桁であることを考えると、高いと数値と考えます。
施設管理の会社だけあって、不動産の有効利用が上手ということでしょうか。
他に、売上債権や棚卸資産の点でも比較的効率的な経営がなされていると考えます。
【株主優待】
2 株主総会等
⑴ 2022年2月期の株主総会
第49期定時株主総会 2022年5月18日(水) ホテル日航大阪
ライブ配信を視聴しました。
本社は東京に移転となりましがが株主総会の会場は大阪のままでした。
社長が議長を務めるとの宣言に対して拍手が沸きました。
会社(社長)に忖度する人が複数いたと推察します。
主な質疑応答
【事前の質問5つ】
Q.ベンチャー企業への出資について
A.イオンディライトビジョンの中で新たな事業の創出を謳っており、ベンチャー企業への出資へも選択肢の一つと考える。対象としては脱炭素や高度な画像解析に基づく構造物のモニタリング等が挙げられる。
Q.KPIとして掲げるグループ内外比率(イオン60%、イオン以外40%)の達成状況について
A.まずは、イオングループの案件は100%取りに行く。その上でグループ外の顧客の獲得に努める。2022年度においては複数の新規顧客獲得が見込まれている。
Q.中期経営計画の修正の必要性について
A.現状では変更は考えていない。ただし、環境の変化に対しては柔軟に対処していく。
Q.株主優待の改善(長期優待制度)について
A.株主優待は重要な施策と認識している。貴重な提言として検討させていただく。引き続き、より一層の株主優待の魅力化に努める。
Q.自己株式の扱いについて
A.株式の希薄化を防止するために償却を実施した。なお、資金需要については外部調達が可能であることを含め、成長投資に問題ないと考える。
【会場から】
Q.(千葉からやってきた株主から)清掃に不備があるので何とかしてほしい。
A.社長が責任を持って調査・対応を実施する。
決議事項
●定款一部変更の件
●取締役8名選任の件
●監査役2名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
終わりに
退任への御礼のお言葉が印象的でした。
ステークホルダーを大切にする社風が現れているように感じました。
約50分で終了し増した。
⑵ 株主還元
配当
配当性向は35%基準で、16期連続増配中。
さらに2024年2月期までに連結配当性向40%を目指すとのこと。
配当の推移は下記の通りです。
2019年2月期:63円
2020年2月期:65円
2021年2月期:82円
2022年2月期:84円
2023年2月期:85円(予想)
株主優待
2月末日の100株以上の株主は株数に応じて、イオンギフトカードが貰えます。
【中間報告書の裏面は株主優待について】
3 株主としてのコメント
⑴ ステークホルダー思いの会社
外注費が高い→取引先:○
労務費が高い→社員:○
安全性が高い→銀行:○
黒字で納税→国:○
配当が高い→株主:○
ということでバランスの取れたステークホルダーに優しい会社だと思います。
ただし、DXなどで構造改革を進め収益性を高めていく方向性とのこと。
併せてステークホルダーの満足度が維持されるのことを期待します。
⑵ 業界ナンバーワンで連続増配の株主思いの会社
ファシリティマネジメント業界でナンバーワンの会社だそうです。
そしてファシリティマネジメントにはあの三菱商事も参加の意向を示しており、フィールドの良さを感じます。
そして、会社はさらに、アジアナンバーワン、グローバルトップ10を目指すとのこと。
しかも、連続増配で株主にも優しい会社ということで、良いこと尽くめのように思えます。
⑶ 何故、株価が低迷しているのか?
一方、株価を見てみると2021年12月の一株3800円をピークに下落トレンドが続いています。
株価はEPS(一株あたりの純利益:稼ぎ)×PER(株価収益率:市場の評価)
過去のEPSは下記の通りです。
2019年2月期:122.92
2020年2月期:187.21
2021年2月期:233.69
2022年2月期:213.26
右肩上がりでしたが今期は低下しています。
ただし、株価は高値3800円から直近2800円と1000円以上下落していることを考えるとEPSだけでなく、PREに問題があるように考えれます。
では、市場や投資家はイオンディライトの何を嫌気したのでしょうか?
⑷ 仮説:経営戦略の物足りなさ
株主総会を拝聴し、経営戦略の物足りなさがイオンディライトの市場評価の低さの原因ではないかと感じました。
ステークホルダーに優しく安定していることはこの会社の特徴と考えますが、それだけでは満足しない投資家が多いのではないでしょうか。
逆に成長するためのリスクをとる一方で地政学等のリスク管理を徹底し、それを経営戦略に反映することを投資家は求めているのではないかと推測します。
以下、そのように考えた論拠です。
自己株式の償却
株式の希薄化を防止するために、自己株式を償却したとの発表がありました。
その際、成長投資に必要な資金需要を考慮しているとの説明もありました。
自己株式というのは合併や会社分割といった企業再編の有力な手法です。
イオンディライトビジョン2025においてM&Aが掲げられていますが、その際に自己株式が活用されなかったのは残念です。
また、会社は資金需要は確保できると言っていますが、かえって、”その程度のしょぼいM&Aしか考えていないのか?”と受け止めた株主も少なくないのではないでしょうか。
連続配当の逆説
社長から来期についても数値を掲げて増配することが明言されました。
連続増配は株主にとっても嬉しくかつありがたいことです。
でも、自信を持って増配できるということはビジネス上のリスクが”それほど”ないことの裏返しでもあります。
ちょっと腰が退けている状態で、”新たな事業の創出”を言われても説得力に欠けます。
中国進出のリスク
中国進出を成果として強調していました。
ここは問題と考えます。
ウクライナに侵攻したロシアがG7から制裁を受け、多くの企業が損失を伴いながら撤退しているのが現状です。
二次制裁もしくは新たな中国に対する制裁が、共産党の一党独裁が続く中国で起きない保証はありません。
それは、米中対立、不動産バブルの崩壊、コロナ禍に伴うロックダウンなど様々ケースが考えられます。
・撤退する基準はあるのか?
・ビジネス全体に与える影響は致命的にならないか?
・撤退に伴う損失額はどのくらいか?
・そもそも、中国から撤退できるのか?
親会社であるイオンの意向という縛りは理解できますが、チャイナリスクに対して真剣にシミュレーションする必要があると考えます。
⑸ その他、気になったこと
DXの推進
DXの推進は賛成ですが、ITに詳しい取締役やIT関連の子会社ないことに懸念を感じています。
理由は、
・ベンダー任せで実用的なシステムを構築できるのか?
・ビックデータの時代に、施設やエリアで得られる空調、照明、電力等の様々な”一次データ”を活かせないのは機会損失ではないか?
という2点です。
持続的成長を続けるためにも、ITに強い社員の育成、IT企業のM&Aなどの”内製化”も必要と考えます。
「環境」
中間報告書の中で、サステナビリティ基本方針を制定したとの記事が載っていました。
その次のページで
・プラスチックから紙への変更
・バイオマス原料を使用した素材への変更
が紹介されていました。
ちょっと、”しょぼい”と感じました。
ファシリティマネジメントの会社なので、ビルや施設に関連した環境に優しいトピックスの掲載を期待します。
株主総会実施場所
今までは大阪で株主総会が実施されていました。
今回、東京に本社が移転したにもかかわらず総会会場は大阪のままでした。
”関西人”の鋭いツッコミの質問に期待しましたが、期待はずれでした。
来期こそは東京開催を熱望します!
株主優待
株主優待はプラスティックのカードでいただきました。
「環境」を重視し、長期株主に対する魅力化を検討するなら、コロワイドと同じように株主への固有カードを付与して、そこにポイントを定期的に充当するような仕組みにすると良いと思います。
今後の魅了化に期待します。
4 まとめ
イオンディライトについて述べてきました。
取引先、従業員、銀行、国、株主など多くのステークホルダーに優しい会社だと考えます。
特に株主としては、これからも連続増配企業であり続けることに期待しています。
その一方で、経営戦略については成長戦略やチャイナリスクに対する対応が良くわからない不透明さがあり、そのことが株価の下落トレンドを招いていると推測しました。
ポテンシャルの高い会社だと思いますので、その潜在力が十分に発揮されて飛躍的な成長を遂げることを期待しつつ注視していきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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