こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

三菱HCキャピタル【8593】〜株主総会雑感(株式数が多い会社の株主還元について)

初投稿:2021.3.22、更新日:2022.1.31、2023.8.12

こんにちは!

この記事は、三菱HCキャピタル【8593】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2023年6月の株主総会の内容を追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

【目次】

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1 三菱HCキャピタルについて

⑴  会社概要

オリックスと双璧をなすリース会社です。

2021年4月にに三菱UFJリース日立キャピタルが統合して誕生しました。

24期連続増配中で第3位と位置付けられています。

売上高1.8兆円、総資産10.7兆円、時価総額1.3兆円の事業規模。

付加価値(のれん、ブランド力)を示すPBRは0.87倍と厳しい評価です。

PBR1倍割れについては会社も問題意識を持って取り組んでおり今後の展開に期待しています。

四季報では業種はリース・消費者金融に位置付けられていて、時価総額順位は1/18位に位置付けられています。

経営理念

『私たちは、アセットの潜在力を最大限に引き出し

社会価値を創造することで、

持続可能で豊かな未来に貢献します』

ちょっと抽象的な経営理念ですが、アセットがキーワードと考えます。

経営ビジョン

●地球環境に配慮し、独自性と進取性のある事業を展開することで、社会的課題を解決します。

●世界各地の多様なステークホルダーとの価値競争を通じて、持続可能な成長を目指します。

●デジタル技術とデータの活用によりビジネスモデルを進化させ、企業価値の向上を測ります。

●社員一人ひとりが働きがいと誇りを持ち、自由闊達で魅力ある企業文化を醸成します。

●法令等を遵守し、健全な企業経営を実勢んすることで、社会で信頼される企業を目指します。

・・・欠落のない網羅的なビジョンだと考えます。

特に、社会的課題の解決持続可能な成長企業価値の向上の3点が柱と思います。

⑵  株主となったきっかけ

NISA枠に収まる株価で、配当の高さに魅力を感じたのが株式を購入した理由です。

そして、いきなりの臨時株主総会でしたが、総会を通じていい会社とつながりが出来て良かったと感じています。

株価上下しながらも長期では右肩上がり。

業務内容が複雑多岐にわたるので、いろいろ調べながらその良さを追求してみたいと考えています。

⑶  2023年3月期の経営分析

基本的には過去最高益を更新し、一株あたり2円の増配を実施しており業績は好調と考えます。

ただし、額は向上しているものの、率は下記の通り、ほとんど変化していないこについて興味深く感じています。

収益性

・売上高総利益率:19%

売上高営業利益率:7%

例年と同様の収益性です。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):178%

自己資本比率(30%以上が望ましい):14%

前期までと比較しても大きな変化は無いと思います。

効率性

・有形固定資産回転率:0.52

有形固定資産回転率も恒常的に低いです。

これは、3.6兆円の有形固定資産の中で「賃貸資産」3.4兆円と大半を占めており、大屋さんとしての事業が回転率に関わっていると推察します。

⑷  2021年3月期の経営分析

2021年3月期のデータをもとに分析しています。

収益性

・売上高総利益率:17%

売上高営業利益率:7%

意外と低数値でした。

原価や販管費が多く収益性は高いとは言い難いです。

参考までにオリックスの場合は

・売上高総利益率:41%

売上高営業利益率:28%

です。

安全性

流動比率(200%以上が望ましい):200%

自己資本比率(30%以上が望ましい):14%

安全性については金融機関ということもあり資金効率の面から自己資本比率は低めになると考えます。

ただし、同じくオリックスの比較で考えるとオリックスの安全性のレベルには至ってはいないとは言えそうです。

流動比率(200%以上が望ましい):334%

自己資本比率(30%以上が望ましい):26%

効率性

・有形固定資産回転率:0.39

特筆すべきは、有形固定資産回転率の低さです。

大手不動産会社やJ-REIT並みに有形固定資産に多額の投資をしていることが明らかです。

内訳は分かりませんが、航空機やエンジン関連のリース業をしていることが関係しているのかもしれません。

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 2 株主総会

⑴ 2023年3月期の株主総会

第52期定時株主総会2023年6月27日(火)ホテルニューオータニ ザ・メイン

ライブ配信を視聴しました。

主なポイントは下記の通りです。

・業績:好調で増配

・トピックス:ロジスティックに注力、水素燃料航空機の初飛行

・10年後のありたい姿に向けてホップ、ステップ、ジャンプ

・2025中計(統合後初の中計):成長性、資本収益性、財務健全性→企業価値最大化

・2026年3月期:純利益1600億円、ROA1.5%、ROE10%

・配当性向40%以上

主な質疑応答

事前の質問は最初ではなく、途中に紹介されるという順番でした。

おそらく、会場からの質問を多くしたかったのだと推察します。

ただし、今回は2時間ぐらいの間に建設的な多種多様な意見や質問が多かったようです。

心ある株主により、非常に有意義な審議がなされていたと思います。

【会場】

Q.燃料電池航空機(改修機)のメーカーについて

A.ボンバルディア社である。

なお、プロペラエンジンを燃料電池に変換する米国のベンチャーキャピタルに当社は出資をしている。

Q.金利や為替が中計に与える影響について

A.金利についてはドルとポンドが重要であり現在は高止まりしているが来年が金利は下がると予想。

金利の上昇ペースも緩やかになってきているので、当社の業績に与える影響はニュートラになると考える。

為替については円安は収益増の効果を生む。

想定為替レートは1ドル130円、1ユーロ150円としている。

為替感応度は1ドルの円安で6.6億円の増益、1ポンドの円安で1.4億円の増益である。

なお、地政学リスクにつても注視しており、ロシアのウクライナ侵攻の影響は当社にはほとんどない。

Q.中計における30%の利益増について

A.短期的な成長ドラーバーは「海外」、「航空機」、「ロジスティック」、「カスタマーソリューション」の4つ。

中・長期的には、「環境・エネルギー」、「不動産」、「モビリティ」の3つ。

Q.同業他社との差別化について

A.3点あると認識

・国内外のバックグランドが多彩なプロ人材

日立グループMUFG三菱商事とのネットワーク(顧客基盤)

・資産が分散していること(高収益ビジネスと安定収益ビジネス)

分散の例として、コロナ禍で航空機ビジネスが振るわなかった時に、海上コンテナビジネスがそれを補ったことが挙げられる。

Q.金利5%のドル建て社債を発行するメリットについて

A.金融会社にとって資金調達は生命線であり当社は国内のみならず海外でもビジネスを展開している。

ドルのビジネスにはドルが最適であり、同業他社も含めて高い金利のドルでも十分にビジネスは成立している。

また、当社はALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント:資産と負債を一元的に総合管理する手法)を適正に実施しており、経済合理性とビジネスリスクの回避からドル社債を発行している。

Q.海外事業における金利上昇と不動産ビジネスについて

A.ALMを通じて適正に対応しており問題はない。

特に、不要なリスクを取らないことと、リスクのモニタリングをしっかりとしている。

リスクシナリオアプローチにイオてはリーマンショック級の状況になっても、コミットメントラインによる資金調達等で半年は耐えられるよう準備している。

不動産については、欧州ではビジネスはない。

米国においてはオフィス需要の減少は日本以上であり影響はあるが、反対に賃貸住宅事業等は好調である。

ちなみに、米国不動産の収益に占める割合は1%程度であるので当社にとって重大な事態にはならないと考える。

【事前】

Q.PBR1%未満対応について

A.これまで資本収益性や資本コストを意識した経営をしてきたが、これに財務健全性と成長性を考慮したバランスシートの最適化を目指して対応していく。

このため

ROEは10%以上

・非財務目標重視

・成長性を加速

・「適切なエンゲージメント」を通じた株主資本コストの低減

を目指して努力していく。

なお、株主に対する「適切なエンゲージメント」とは、例えば国内のリース事業は縮小しているが、当社は海外の成長が著しいことを株主に説明して、理解を深めていただくことを意味する。

Q.自社株買いについて

A.ROEの「短期的な分母対策」としての自社株買いは考えていない(やろうと思えばできる)

DX、SX等の推進による高収益ビジネスによる持続的な成長を目指し、特にROAを重視してやっていく。

これはノンバンクという性格上、格付けや自己資本が大切であることに起因するもので、時間はかかっても財務目標、非財務目標、配当中心の株主還元で対応していきたい。

Q.リース会計基準の変更の見通しについて

A.影響は限定的なものに留まると考える。

理由は、オペレーティングリースのオフバランス効果がなくなるデメリットの反面、メリットもあること、そして、すでに海外においてはオンバランス化を経験済みであるからである。

リース事業が今後も続くよう努める。

Q.社外取締役の人数と役割について

A.様々なバックボーンを持つ人材が揃っており、15名中6名と規模も適切。

多面的な角度から建設的な意見をいただいている。

なお、当社の社外取締役の場合、年数回会議に出るだけではなく米国のシアトルやサンフランシスコの現地経営陣と面談をしたりして積極的な活動をしている。

Q.外国籍の取締役について

A.当社のスキルマトリックスにおいては国際ビジネスの項目があり、海外勤務の経験豊富な人材がこれに該当している。

例えば、社長が海外勤務20年の経験を有する他、たの現役員でも多彩な国際経験を持つ。

今後も、縛りなく、その時々において必要な人材を確保するよう判断していく。

Q.株主総会招集通知の資料は簡便なものでも良いのでは?

A.今回は株主の混乱を避ける趣旨で、従来に近い内容を郵送した。

次回以降は、今回の件や他社の状況を踏まえて適切に判断する。

【会場】

Q.当社の保有株式がゼロの取締役と生え抜き取締役について

A.当社の内容を深く知る立場において、購入するタイミングを逸してしまった。

ただし、会社に対するコミットメントは強く持っていることをご理解頂きたい。

また、現取締役の中では日立キャピタルの社員が生え抜きとして1名存在している。

ビジネスパートナーのMUFG三菱商事は重要なビジネスパートナーであり、人的支援や交流の重要性を認識しつつも、社員のモチベーションを考慮する必要性も認識している。

なお、執行役員の中ではプロパーが半分以上存在し、かつ、3割は中途採用組である。

Q.社外取締役が当社の株式を持つにあたって何か取り決めはあるのか?

A.ない。

併せて、インサイダー取引に抵触するようなこともないことを申し添える。

Q.日立製作所の株式の売却と社名変更について

A.株主のご意向もあり売却についてはコメントを差し控える。

社名の変更については考えていない。

両者のアイデンティや価値観の共有を象徴するものとして大切にし続ける。

Q.人材育成の具体策について

A.人材ポートフォリオを構築している。

層別の研修を実施しており、中堅クラスにはマネジメントに適した研修を用意している。

併せて、女性活躍のための研修にも力を注いでいる。

Q.(怪しいものではないMUFGと旧日立キャピタルの株主より)社長の説明も理解しているが、自社株買いについて考えてほしい

A.14億の株式に対して株主数が少ない、株主に対するアピールが足りない、総還元性向方式等についてのご指摘、ありがとうございます。

配当重視の姿勢で頑張るが、自社株買いを否定しているわけではないことをご理解いただきたい。

Q.海外事業の欧米以外の展開の可能性について

A.欧米中心は不変であるが、ASEANにも注目している。

他の地域でも進出の計画はないが、良い候補地が見つかれば展開していくつもりである。

Q.PBR1倍割れ解消のスケジュール感について

A.中継の中でPBR1倍割れ解消を謳っているが、3年かけて実現するという意味ではない。

と言っても期限を決めて対応しているわけでもない。

ROE等の向上と非財務資本の活用等を通じてできるだけ早く解消していきたい。

決議事項

・取締役8名選任の件

・監査等委員である者を除く取締役等に対する業績連動型株式報酬制度に基づく報酬等の額及び内容決定の件

拍手を持って承認・可決されました。

株主総会雑感

株式の数が多い会社の株主還元について考えさせられました。

というのも、日本郵船が当社と真逆な対応をとっているからです。

日本郵船は、商船三井と比べると株式数が1.5倍も多いので、多額の配当をしても一人当たりに行き渡る配当金が少ないことを問題とし、2000億円の自社株買いを実施しています(株価も絶好調です)。

これに対して、当社は自社株買いはせず、時間はかかっても収益を上げることで株主に報いるということでした。

そして、当社も株価は長期上昇トレンドを継続中です。

株主還元の方法は会社によっていろいろあることを実感しました。

ちなみに、当社の株式数と予想配当利回りは14億株(4.82%)、業界1位のオリックスは12億株(3.93%)となっており、当社の方が頑張っていると感じています。

⑵  臨時株主総会

2021年2月26日(金) ホテルニューオータニ ザ・メイン

三菱UFJリース日立キャピタルとの合併契約承認の件を含め8議案が上程されました。

合併により、総資産額でみた場合10兆円となり、業界内の地位が4位から、3位の三井住友ファイナンス&リースを抜いて2位に向上。

1位のオリックスの13兆円に迫る規模です。

広い会場で、数十人の株主が参加。

ソーシャルディスタンスを確保するなど、コロナ対策もしっかりとされていました。

パワーポイントの配布資料を用いて、合併の理由と期待される効果などについて社長が分かりやすく説明されました。

質疑応答

Q.日立キャピタル株主優待はどうなるのか?

A.申し訳ない株主優待はなくなる。今後は配当により株主還元に力を注ぐ(海外投資家の意向を含む)。

Q.定款の変更が既存の損害保険に与える影響は?

A.既存事業への悪影響は回避する方針。

Q.合併によるデメリットは?コストはどうみつもっているのか?

A.(コストの見積額を説明の上)リスク管理の徹底を図る。

Q.オリックスとのビジネスの差別化は?

A.オリックスは水族館経営とうハイリスク・ハイリターン経営、弊社は得意な分野でのスケールメリットを追求していく!

決議事項は拍手をもって承認され、滞りなく総会は終了しました。

新しい称号は

三菱HCキャピタル株式会社

となるそうです。

⑶  株主還元等

配当

過去の配当の推移は以下の通りです。

毎年増配をしているのはすごいことであり、かつ、ありがたい銘柄です。

・2023年3月期:33円

・2022年3月期:28円

・2021年3月期:25.5円

・2020年3月期:25.0円

・2019年3月期:23.5円

・2018年3月期:18.0円

・2017年3月期:13.0円

・2016年3月期:12.3円

・2015年3月期:9.5円

・2014年3月期:8.0円

株主優待

なし

株主総会の会場となったホテルニューオータニ

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3 株主としてのコメント

⑴  今後の方針

NISA口座で保有しているため、5年以内に売却せざるを得ません。

特定口座で買い増しも考えています。

何故か、家族が自分の気づかない間に、株主になっていたことを最近知りました。

日銀もETF買いは日経平均ではなくTOPIXに変更。

グロース株からバリュー株に注目が集まる昨今、長期で保有する方針です。

⑵  株主通信を読んで

株主通信を読んで2つの記事に関心を持ちました。

経営統合/PMI(経営統合プロセス)

以下の3つの側面からシナジー効果を最大化する取り組みが示されていました。

経営資源シナジー

●営業シナジー

●投資シナジー

二つの巨大会社が一つになってそのシナジー効果をいかに出していくか興味深いところです。

少なくとも、みずほ銀行のような統合失敗は避けられそうだと考えます。

注力領域

下記の5つの注力領域が示されていました。

●社会資本/ライフ

●環境・エネルギー

●販売金融

●モビリティ

●グローバルアセット

良いことだと思います。

不動産会社で少数精鋭で頑張っているヒューリックも、重点地域(銀座、浅草、渋谷、新宿)を決めて収益を上げています。

経営資源の有効活用として期待しています。

4 まとめ

三菱HCキャピタルについて述べてきました。

24期連続増配は当社の強みだと思います。

それに加えて心ある株主からの建設的な意見も会社にとっては大きな力になると考えます。

業界1位のオリックスとの比較自社株買いの件での日本郵船との比較などに注目しながら末長く株主を続けていきます。

お読み頂き、ありがとうございました。

 

なお、PBRについては下記の図書を参考にしています。

 

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

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