初投稿:2023.8.
こんにちは!
この記事は、三井住友トラスト・ホールディングス【8309】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
・富裕層向けビジネス
・ITについての脆弱性
【目次】
【丸の内永楽ビルディング 三井住友信託銀行本店ビル】
1 三井住友トラスト・ホールディングスについて
⑴ 会社概要
四季報では大手銀行に位置付けられ、時価総額順位は5/12位。
売上高1.8兆円、総資産69兆円、時価総額1.8兆円の事業規模。
会社の付加価値(のれん、ブランド力)を意味するPBRは0.66倍と極めて厳しい評価。
四季報では【連続最高益】、【新中計】など明るい見出しが踊りますが、株価はイマイチです。
企業理念等
⚫️存在意義(Purpose)
信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる
⚫️経営理念(Mission)
⑴ 高度な専門性と総合力を駆使して、お客さまにとってトータルなソリューションを迅速に提供してまいります。
⑵ 信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からの揺るぎない信頼を確立してまいります。
⑶ 信託銀行グループならではの多彩な機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出し、株主の期待に応えてまいります。
⑷ 個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる職場を提供してまいります。
⚫️目指す姿(Vision)
「The Trust Bank」の実現を目指して
⚫️行動規範(Value)
お客さま本意の徹底 ー信義誠実ー
社会への貢献 ー奉仕開拓ー
組織能力の発揮 ー信頼創造ー
個の確立 ー自助自立ー
法令等の厳格な遵守
反社会性力への毅然とした対応
セグメント
⚫️個人事業
⚫️法人事業
⚫️投資家事業
⚫️不動産事業
⚫️マーケット事業
⚫️運用ビジネス
⑵ 株主になったきっかけ
2022年12月20日に日銀がYCCの修正を発表しました。
いよいよデフレ時代からインフレ時代への第一歩と理解。
銀行株の中で新たに注目したのが当社。
トレンドを見ながら、2023年にNISA口座で購入しました。
⑶ 経営分析
収益性
・売上高経常利益率:16%
比較的利益率は高いと考えます。
安全性
・自己資本比率(30%以上が望ましい):4%
金融機関であることからこの水準でも問題ないと推測します。
ちなみに、MUFGも同程度の数値です。
効率性
・有形固定資産回転率:8.17
全業種の平均が72.3(2022年)であることを考えると、効率的とは言えないと思います。
ただし、MUFGの2倍程度の数値であることは評価できると思います。
2 株主総会等
⑴ 株主総会
第12期定時株主総会 2023年6月23日(金) 三井住友信託銀行本店ビル
ライブ配信を視聴しました。
質問については、同じ株主が3回質問するなど、多くの株主が参加したとはいえず、ちょっと寂しかったです。
主なポイントは下記の通りです。
・ビデオによる事業報告(増収増益)
・重要テーマは
「好循環を加速する事業ポートフォリオの強化」
「持続的成長の向けた戦略投資の推進」
「お客様の信任の応える経営基盤の高度化の取り組み」
・対処すべき課題3点
「信託グループらしいビジネスの成長と資本効率の向上」
「未来適合に向けた人的資本強化」
「経営基盤の高度化」
・株主還元としては配当性向40%、一株配当は210円、自社株買いも実施する!
主な質疑応答
【事前】
Q.海外業務関連のシステム更開に伴う特別損失について
A.ご心配をおかけして申し訳ありません。
160億円の損失を計上し、計画を凍結しています。
原因は一つのシステムで対応しようとしたこと。
今後は、業務ごとに更開していく方針です。
Q.キャッシュカードの郵貯ATMでの手数料無料化について
A.手数料無料かは考えていない。
Q.ダイナースクラブカードの活用について
A.トラストクラブはダイナースカードの発行会社であり、富裕層向けビジネスとして有効。
2018年、2019年と現存を出したが、財務リスクは一掃して現在は黒字化を達成中である。
今後もブランド力を強化していく。
Q.個人向け住宅ローン残高の減少について
A.資金・資産・資本の循環を重視する当社にとっては、個人向け住宅ローンはキープロダクトであり富裕層ビジネスの入り口と認識。
他社との競争激化により残高は減少しているが、当社の強みであるコンサルやソリューションを活かして頑張りたい。
【会場】
Q.バイオマス発電について
A.経産省の再生可能エネルギー、FIT制度を踏まえ、人権や環境に配慮し、セクターポリシー(与信ポリシー)に基づき融資を実施している。
常時モニタリングを実施し、抵触することがあれば融資を禁止する。
Q.金利上昇のリスクについて
A.アラームポイントを設けており、所用の取引の見直しを通じて損失拡大の防止に努めている。
併せて、フロントオフィス、バックオフィス、ミドルオフィスの中で、ミドルオフィスが所用のモニターを担当している。
Q.PBR1倍割れの解消について
A.当社のPBRは0.66倍であり、マイナス金利の影響が大きいと考える。
PBRはROEとPERという収益性と成長性の掛け算からなる。
よって、資本効率の高いビジネスに注力していく。
なお、ROEは7%から上昇中であり、稼ぐ力がついてきたと思う。
Q.TVコマーシャルについて
A.TVコマーシャルを含め、ブランディング戦略を重視し、専門部署の設置や外部の専門家の力を借りながらブランド価値を高めるよう尽力している。
Q.社外取締役の中で、兼職している人を兼職していないひとに変えては?
A.(社外取締役の選任基準を説明した上で、)ご理解いただきたい。
Q.ドル円レートの影響について
A.円安、円高、それぞれに長短がありどちらがいいとは一概には言えない。
Q.バイオマス事業のSHGプロトコルスコープ1、2以外の情報の開示について
A.開示は控えさせていただく。
Q.女性取締役の活躍・推進について
A.社員の54%が女性従業員である。
ラインポスト、マネジメントポストに対して数値目標を立てて人材育成に取り組む。
決議事項
・剰余金処分の件
・取締役15名選任の件
株主総会雑感
大部分の答弁は真摯な態度で丁寧になされていたと思います。
ただし、社外取締役の兼職数の質問に対しては選任基準を答えるのみの物足りない(会話になっていない)答弁も散見されました。
コンサルティングとソリューションが強み自負されていますが、役員の答弁からは強みを感じることはできませんでした。
むしろ、社長をはじめちょっと緊張気味のようにも感じられました。
もっと、信念に裏打ちされた自信のある答弁を次は期待します。
⑵ 株主還元
配当
1株配当実績は下記の通り。
・2023年3月期:210円
・2022年3月期:170円
・2021年3月期:150円
・2020年3月期:150円
・2019年3月期:140円
増配基調はありがたいです
株主優待
なし
自社株買い
機動的に実施するとのことでした。
【本店ビル】
3 株主としてのコメント
⑴ 気に入っていること
デフレからインフレ時代への転換という大きな流れを捉えると将来に期待でます。
併せて、高配当株であり増配が続いていることも株主としてはありがたいことです。
創業100年に向けて頑張っているとのこと
さらに、株主総会の中でもマイナス金利の影響が触れられていましたが、これらが解除された後は一段と株価に弾みがつくのではないかと期待しています。
⑵ 気になっていること
経営陣のPDCAは正しく回っていますか?
海外業務関連システムの更開の特損については、システムの一括に問題があったので個別に実施すると説明がありました。
本当の問題点はそこではなくて、社内、特に経営陣の中でITスキルを有する人材が欠落していることなのではないですか?
取締役15名の中で、スキルマトリックスに○がついているのはデンソーOBの74歳の社外取締役オンリー。
金融機関とITとは親和性が高く、ITの優劣が会社の生死を左右すると言っても過言ではないはず。
その意味で、当社のITをなんとかしないと大変なことになりかねないリスクがあると懸念します。
次回の株主総会では会社の企業価値向上に資する幅広い意見が交わされることを期待します。
4 まとめ
三井住友トラスト・ホールディングスについて述べてきました。
創業100年を迎える巨大企業で、インフレの時代での飛躍が期待されます。
けれども、システム開発の失敗にもかかわらずその総括が不十分なことなどに不安を覚えます。
ただし、ポテンシャルは高いので、何かのきっかけで大きく飛躍する可能性もあると思います。
そんなことを期待しながら、今後の展開を注視していきます。
お読みいただき、ありがとうございました。
なお、経営分析においては下記の書籍を参考にしています。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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