投稿日:2022.7.9
こんにちは!
この記事は、三井物産【8031】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
・5大総合商社の中の位置付け
・自社株買い重視について
★★★
【目次】
【三井物産ビル】
1 三井物産について
⑴ 会社概要
総資産15兆円、売上高11.7兆円、時価総額4.6兆円の事業規模です。
総資産に比べて時価総額はその3分の1。
PBRが0.81倍と厳しめの評価。
企業理念
Mission
●世界中の未来をつくる
●360°business innovators
Values
●「挑戦と創造」を支える価値観
・変革を行動で
・多様性を力に
・個から成長を
・真摯に誠実に
立派な経営理念だと思います。
あとは、この経営理念がどこまでグループ全体にどこまで浸透しているかが問題です。
オペレーティングセグメント
・金属資源
・エネルギー
・機械・インフラ
・化学品
・鉄鋼製品
・生活産業
・次世代・機能推進
⑵ 株主になったきっかけ
資源高を背景にした好業績期待と高配当に魅力を感じました。
地政学リスクの影響を受けつつも思った通りの利益が得られています。
⑶ 経営分析
収益性
・売上高総利益率:10%
・売上高に対する法人所得税前利益率:10%
粗利と税前利益がほぼ同額なのは持分法による投資損益のおかげです。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):150%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):39%
短期的にも中・長期的にも安全性に問題は無いと考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:5.37
他の総合商社に比べると多少苦戦している数値となっています。
【株主総会が実施されたThe Okura Tokyo】
2 株主総会等
⑴ 株主総会
第103回定時株主総会2022年6月22日(水)オークラ東京「平安の間」
ライブ中継を視聴しました。
会長が司会を務めていました。
対処すべき課題についてようやく社長が話を始めました。
その中で過去最高益を達成したことなどが説明されています。
主な質疑応答
【事前の質問】
Q.業績について
2022年は基礎営業キャッシュフローが特に良かった。
2023年もトレーディングとポートフォリオの最適化により力強い収益力を確保する。
Q.株価について
A.株価を意識して経営しており、更なる上昇余地があると考える。
中期経営計画に沿って市場との対話を重視していく。
Q.配当・自社株買いについて
A.配当は一株あたり80円から段階的に引き上げて現在120円としている。
自社株買いは5月〜9月に1000億を上限に実施中である。
基礎営業キャッシュフローに対する総還元性向は33%である。
Q.サハリンプロジェクトについて
A.ロシアへの制裁には賛同しつつ、エネルギーの安定供給に努める。
【会場からの質問】
Q.株主総会の経費について
A.正確な数値は言えないが、これまでグランドプリンスホテルからオークラになりさらにハイブリッド総会にも対応している。
Q.脱炭素について
A.主要な柱であり、”業際”あるいは複合的な対応が大切である。
Q.チャイナリスクについて
A.地域分散が重要であり、代替えプランを用意している。
Q.(社外取締役に対して)感想は?
A.赤字決算から安定したポートフォリオの再構築までやってこれた。
サステナビリティを重視しつ、厳しい意見を言うことも必要。
Q.社長選任のプロセスについて
A.指名委員会の議論により候補者が選定されている。
その中で、全人格、資質、リーダーシップ、危機管理力などを総合的考慮して社長が選ばれる。
Q.ESG等について
A.効率化はデジタルの力で達成していく。
Q.金属が利益に半分を占めている。リスク分散を考慮したポートフォリオについて
A.強い部門は強化しつつ、同時に”業際”を重視する。
材料化学、鉄鉱石、エネルギー分野におけるガスに着目している。
Q.モザンビークにおける事業について
A.LNGアフリカのプロジェクトとしてガスが有望である。
安全が確保され次第、工事を再開させる。
Q.商品価格の下落を見込むとは?
A.金属資源の価格低下が減益要因となり得ることを示している。
Q.女性役員の割合について
A.当社は女性役員の割合が高くはないがそれは新卒総合職の採用の遅れによるもの。
今は採用者の30%が女性であり、現状の8%の管理職の割合が2025年までに10%にすることを目指している。
Q.食料の安定供給について
A.穀物、肥料の値上がりや円安ではあるが頑張る。
Q.障害者の雇用について
A.多様性を重視しており、本社ビルに入居する三井物産パートナーズで採用し業務をアウトソーシングしている。
Q.経営のスピードについて
A.本社の仕事が現地で遅いと言われないよう、ディシジョンメイキングは早く行うよう努めている。
その際、手続きは省くが重要な論点は見逃さないことを心がけている。
”人の三井”と言う良さが活かされ、社員が元気になってきている。
Q.コロナ禍を踏まえた医薬・医療についての商社の役割について
A.ワクチンを早期に普及させるためには臨床試験を体系的に実施し得るインフラが必要でありその構築の検討を進めている。
併せて予防や治療に関する世界中の知見を集めて生かせるように努める。
決議事項
・剰余金の配当の件
・定款一部変更の件
・取締役14名選任の件
・監査役1名選任の件
・取締役報酬改定の件
拍手を持って賛成・可決されました。
最後に新任の取締役の紹介がありました。
⑵ 株主還元
配当
配当の推移は下記のとおりです。
2022年3月期:105円
2021年3月期:80円
2020年3月期:80円
2019年3月期:80円
2018年3月期:70円
増配はありがたいです。
株主優待
なし
【三井物産ビルの案内板】
3 株主としてのコメント
⑴ 5大総合商社の中の位置付け
5大商社の中では地道な印象があります。
ビジネスの規模で三菱商事、ビジネスの質では伊藤忠、その間が三井物産と評価する雑誌もあります。
今回、株主総会を視聴してもやはり特徴がいまいち掴めなかったです。
ただし、トレーディングとポートフォリオの見直しで収益を上げているという説明はよくわかりました。
⑵ 気になったこと
司会が会長
会長が司会をされていました。
ちょっと違和感がありました。
社長が”軽く”見えてしまったからです。
やはり、社長が司会を務め議事の進行を進めることでリーダーシップのあるところを株主に披露し、会長は何かあった時のためにどっしりと構えている方が”重み”があるように感じました。
カントリーリスク
サハリン2の資産をロシア企業に無償譲渡させる大統領令の問題が報じられています。
商社のビジネスモデル上、カントリーリスクは避けて通れないと考えます。
ただし、次はチャイナで同様なことが起こることは多くの投資家が懸念していることでもあります。
ロシアでの教訓を今後のビジネスに活かすことを強く希望します。
自己株式の取得への執着
自社株買いと配当の金額の推移を見てみると、2022年3月期に自社株買い(1750億円)が配当総額(1700億円)を初めて上回っています。
また、三菱商事との比較においても
三菱商事は
・営業キャッシュフロー:1兆円
・自社株買い:700億円
・営業キャッシュフロー:8000億円
・自社株買い:1700億円
と、キャッシュアウトにおける自社株買い比率が高めです。
何故、三井物産は自社株買いに執着するのでしょうか?
一般に自社株買いの効果は
・ROEの向上
・株主構成の入替
・経営陣が株価を意識した経営をおこなっていることのメッセージ
などが挙げられます。
三井物産の場合、ROEの向上を強く意識しているのでは無いかと推察します。
根拠は、「資本効率向上等を目的とした自己株式取得」と利益配分に関する基本方針に記載されているからです。
また、ROEが18%であることも報告の中で強調されています。
ただし、
で算出されます。
三井物産の経営理念に「真摯に誠実に」と謳われています。
個人的にはROEを上げるなら財務レバレッジではなく、利益率や回転率の向上で頑張って欲しいと思います。
ちなみに、三菱商事は自社株買いは少なめですが(会計マジックに頼らず)、ROEは15%を達成しています。
4 まとめ
三井物産について述べてきました。
5大商社の中では目立たない印象でしたが、株主となって色々と調べてみると自社株買いへの傾倒など、目立たない理由が見えてきました。
三井物産は多くの「志」を持つ優秀な人材を抱えているはず!
会計マジックに走らず本業において「真摯に誠実に」取り組むことを期待します。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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