こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

日本M&Aセンターホールディングス【2127】~株主総会雑感(ちょっと物足りない)

投稿日:2020.8.15、更新日:2022.1.20、2022.2.15、2022.6.25、2022.7.14、2022.11.8、2023.7.7

こんにちは!

この記事は、日本M&Aセンター【2127】の株式に関心のある方に対して、株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2023年6月の株主総会の内容を追記して記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

【目次】

【会社が所在する(22階)東京駅八重洲口に位置する鉄鋼ビルディング】

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1 日本M&Aセンター について

⑴ 会社概要

中小企業のM&A仲介で最大手。

売上高413億円、総資産657億円、時価総額3527億円の事業規模です。

不適切な会計で株価が半分になってもなお、総資産や売上高に比べて桁違いに高い時価総額は市場や投資家の期待の高さを物語っています。

現在でもPBRは6.37倍と高い数値を誇っています。

なお、一番の絶頂期の時価総額は1兆円を超えていました。

そもそも上場されている主なM&A会社には、日本M&Aセンターの他、M&AキャピタルパートナーズストライクGCAオンデック、明南M&Aインターネット総合研究所などが上場しています。

その中で、日本M&Aセンターは業界のリーディングカンパニーとの位置付け。

そして、他社との価格競争には距離を置き、高めの手数料を維持しているのは、それに見合ったサービスに自信があるとのこと。

そのサービスのクオリティーの高さは、これからの会社の成長ストーリーに裏打ちされているように感じます。

ただし、2021年末に発覚した”不適切な会計”事案で会社の成長ストーリーが揺さぶられています。

⑵ 株主になったきっかけ

2006年10月に東証マザーズに上場する際、みずほ証券IPOに当選したのが株主になるきっかけでした。

適時利益を確定しながら、それ以降も売買を繰り返しています。

会社は業績を伸ばし続け、適時株式分割を繰り返しながら株価も右肩上がり。

もし、上場から15年間ホールドしておけば最大70倍以上になっていました。

ちょっとした退職金ですね。

また、会社を通じて、後継者不足という社会問題に取り組み、豊かな社会の実現に貢献したいという思いもあり売買を繰り返しつつもホールドしています。

⑶ 2023年3月期の経営分析

増収減益です。

成約件数と売上高が過去最高でしたが当初目標は未達成。

原因は成約単価の低下とのこと。

収益性

・売上高総利益率:57%

売上高営業利益率:37%

前期よりも低下していますが、高収益性は確保されていると考えます。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):496%

自己資本比率(30%以上が望ましい):83%

財務的は健全性を確保しています。

逆に資本効率の点でどうなんだろうと思ったりしてしまいます。

効率性 

・有形固定資産回転率:70.44

前期とほぼ変化ありません。

固定資産に関して効率的な経営がなされていると考えます。

⑷ 2022年3月期の経営分析

増収増益です。

収益性

・売上高総利益率:60%

売上高営業利益率:41%

高収益なビジネスモデルです。

高品質のサービスに応じた手数料の高さが効いているのでしょうか。

また、昨年よりも多少数値は低下していますが、”巡航速度”に近づいているのかもしれません。

安全性

流動比率(200%以上が望ましい):664%

自己資本比率(30%以上が望ましい):86%

財務的にも問題ありません。

昨年と比べるとむしろ安全性が高まっていることは、不祥事に対する反応の速さ安全意識の高さを物語っていると思います。

効率性 

・有形固定資産回転率:70.16

昨年と同水準であり固定資産に関して効率的な経営がなされていると考えます。

なお、有形固定資産の内訳は「建物」「その他」の2つであり、所用のオフィススペースのコストと考えます。

⑸ 2021年3月期の経営分析

収益性

11年連続最高益を更新。

・売上高総利益率:62%

売上高営業利益率:45%

であり、高収益体質です。

日本の少子高齢化や後継者不足問題を背景とした優れたビジネスモデルを有しています。

安全性

流動比率(目安として200%以上が望ましい):約490%

負債比率(目安として100%以下が望ましい):22%

自己資本比率(目安として30%以上が望ましい):82%

財務基盤は盤石です。

効率性

コンサルティング業のため棚卸資産はありません。 

売上債権や有形固定資産の回転率も悪くなく効率的な経営がなされています。

なお、無形固定資産の中に投資その他資産の項目がありその中で長期預金として140憶円が計上されていることが特徴として挙げられます。

何に投資されるか注意深くモニタしたいと思います。

株主総会の受付にて】

2 株主総会・決算説明会

⑴ 2023年6月の株主総会

第32期定時株主総会 2023年6月23日(金) 鉄鋼ビルディング

社長の説明部分は当社ホームページでアーカイブ配信されています。

不祥事についての再発防止と相談窓口の活性化についての社長の説明がありました。

株価対策については、海外からの投資を促すために6月は米国、11月は欧州に行くとともに、ESG関連のスコアを上げることに努めるとのこと。

併せて、5月に70億円の自社株買いを実施している。

あと、十六銀行合弁会社を設立するそうです。

主な質疑応答

Q.週刊誌の役員・社員の処分の記事について

A.当初、処分についてはWebで伝えた。

その後、コロナ後20人ずつ50回の面談を実施した。

その結果、処分の内容、今後のビジョン、仕事のアドバイス、仕事との両立などの質問を受けた。

また、10月にアンケートも実施している。

Q.M&A総研に当社の元社員が移籍したことについて

A.当該元社員については重要なポストにはいなかったこと、当社とは考え方が異なることから情報漏洩には至らないと考える。

Q.利益及び株価の低迷について

A.株価については3つのフェーズで捉えている。

・不祥事前:3000円(時価総額1兆円)

・不祥事後:1700円(時価総額6000億円)

・現在:1000円(3500億円)

株価低迷は、当社は従来は12月に売上がピークになる会社であったが、今回はピークがずれていることが原因の一つ。

また、当業界は仕事は無限大にあるので今後10年間は成長することを見込んでいる。

部長が15名の部下を見ていたが、不祥事で25名を担当することになりあっぷあっぷになっていた。

それを解消するために新たに部長を増やしたがその人が慣れるまでにもう少し時間を要する。

同業他社については

・M&A総研は早い転換型

・M&Aキャピタルは時間をかける対応

・当社は丁寧な対応とうまく行かなかったときのための保険に加入

という違いがあり、同業他社との競争に対して油断はしていない。

Q.IT化の推進について

A.Mコンパス(マッチング)等はアプリを活用することでコスト削減をしながら実施している。

また、他社の動向についても注意を払っている。

Q.社会貢献(教育)について

A.神戸大学経営学部において社長等が講義を実施している。

併せて、早稲田大学一橋大学における講義も行なっている。

Q.利益貢献する新規事業について

A.東京プロマーケットにおける上場支援を実施している。

今期はこれまで20社上場させ、最終的には32社と予想している。

ちなみに、これまで78社の上場実績がある。

内訳は東京が3割で、地方が7割であり地方のスター企業の育成に努めている。

Q.外部環境の厳しさについて

A.ブティックが300社(社員が3〜5名)増えた。

そのような会社は営業が強い方が起業する場合が多く、分析が苦手であることから、彼らを支援する仕事を当社は実施しており、感謝されている。

Q.ESGスコアの伸ばし方について

A.海外からの投資を増やすめにIR等に注力している。

決議事項

・剰余金処分の件

・取締役10名選任の件

拍手を持って承認・可決されました。

新役員の紹介(女性)がありました。

海外の機関投資家に株を買ってもらうことについて

海外の機関投資家に株を持ってもらうように努力していると社長から説明がありました。

今回の不祥事で売られたため、買い戻してもらうためとのこと。

でも、ちょっとその方針に疑問を持ちました。

というのは、株が売られる原因は当社だけでなく、機関投資家側にも起こりうるからです。

100年に一度のショックは10年に一度の頻度で生じています。

リーマンショックからコロナショック、そして金利上昇の影響もまだまだ未知数です。

例えば、オリックスリーマンショックの時に機関投資家が株を売却したため株価が10分の1になるという危機を経験しています。

その教訓として、個人株主を増やすこととし、ふるさと優待の拡充に努めた結果、コロナショックの際には大きな危機を経験することなくこれを乗り越えています。

社長が海外の機関投資家が長期で当社株を保持し続けると考える根拠は何なのか?

ちょっと、疑問に思いました。

高い自己資本比率について

社長は高い自己資本比率を根拠に安心してくださいとアピールしていました。

でも、世の中の流れは、”株式の持ち合い解消”、”自己資本の効率化”です。

東京海上も、必要以上に資本を溜め込むことはしない!

として、金融機関の中でも高い成長率を維持しています。

配当性向を40%から60%に向上させるとのことですが、自社株買いをすることで株数が減れば、剰余金の配当額はそのままでも配当性向は上昇します。

その意味で、溜め込んだ資本を株主に還元するなり、成長投資に回すなりして企業価値向上に資する試みが期待されます。

新中期経営計画について

新中計など将来の成長ストーリーについて多くの株主は、

その通りにいけばいいけど、そんなに上手くいくかなあ・・・。

と思ったかもしれません。

でも、自分は反対にちょっと物足りないと感じました。

例えば、霞ヶ関キャピタルの中期経営計画では、

5年間で利益は10倍を目指す!

と宣言し、その計画に沿って事業を展開しています。

先日の決算発表では上方修正と増配を発表し、ストップ高へ。

それに比べると、社長はエネルギッシュに多くを語っていますが、いまいち”夢”が感じられませんでした。

”禊(みそぎ)”が過ぎたら、攻めに転じるのかもしれませんが、今後の非連続的な成長が語られることを期待しています。

総括

株価はピークの3分の1になって悲しいですが、IPOからの長い付き合いの会社

なんだかんだ言っても応援しています。

株主優待のお米も頂きました。

1Qの決算発表に期待しています。

⑵ 2023年3月期の中間決算について

2022年10月24日に「業績予想の(上方)修正に関するお知らせ」が発信され、株価は素直に上昇。

ところが、同年10月28日の「2023年3月期第2四半期決算短信(日本基準)(連結)」が発信されると、株価は急落。

決算短信で示された、前年同期比の業績が悪かったための影響と考えられます。

では、上方修正は誤りだったのか?

よく見ると、事前予想に対する上方修正で、会社は前期4割、後期6割の収益で元々計画していたので、コンプラ対策をしつつもハードル緩めの4割をクリアできたということでの上方修正ということが分かりました。

うーん。

全ての情報には発信者の意図がある!

このことを肝に銘じつつ、何を発信して、何を発信しなかったのかを留意する必要があると感じました。

ここでは、乱高下する株価と中間決算の関係について考察します。

決算動画は下記のリンクからご覧ください。

www.nihon-ma.co.jp

決算概要

主なポイントは次の通りです。

コンプライアンス対策の取り組みとしての品質本部の設立

・売上計上要件厳格化による売掛金の減少

・パーパスに基づく経営戦略と最高のM&A

・人員採用の遅れ(1〜7月まで新規採用ストップ)に対してリファラ採用の推進

・ソーシングの遅れに対してセミナー活動やダイナミックなダイレクトメール展開

・関連事業としてBATONZ事業(オンラインM&Aマッチングサイト)やTPM(東京プロマーケット)上場支援事業の健闘

・海外法人持株比率はピークの52%から48%に低下

・配当性向は2027年3月期まで40%から60%に引き上げ個人の長期投資に期待

・中期経営計画において5年間の間、毎年平均15%の成長を目指す

・中計達成のためには、「良き人材の採用」、「教育」、「DX」が重要

・トピックスとして神戸大と産学連携しM&Aの研究者の育成を開始

日本郵政グループとの「あとつぎ探し」の支援サービス開始

など。

悪くない内容だと思いますが、前年同期比の悪さについて”一言”欲しかったです。

決算動画雑感

不適切な会計事案についての影響については一服したと感じました。

理由は、再発防止に向けた半年以上の組織的な対応が続いているからです。

株価も6月の一株1213円で大底を打ってから、1700円近辺で推移しています。

また、投資以上に信用が不可欠な競業について神戸大学日本郵政との協力関係の成立を踏まえると”失われた信頼”についても回復基調であると言えると考えます。

また、他の会社の決算と比較して見ましがが、やはり共通して乱高下していました。

M&Aキャピタルパートナーズの場合は好決算発表後、何故か急落し、その後に長い下髭をつけて上昇基調にあります。

同じく好決算のストライクは発表後に素直に上昇基調でしたが、現在は一服中の値動き。

そのように考えると、決算の内容のみならず、短期的には思惑により株価が乱高下するのはやむを得ないと思われます。

よって、最終的には(長期的には)株価は業績に収斂すると信じ、大きく下落した際に売らざるを得ない状態にならないように資金やメンタルの管理を徹底することが大切だと感じました。

あと、M&A総合研究所も注目ですが、基本的に売上高約40億円の会社

売上高100億円未満の会社は”成長途上”なのでリスクテイカーの皆さんにお任せしたいと思いつつモニターします。

ちなみに、売上高は

センター:約400億円

キャピタル:約200億円

ストライク:約100億円

以上、中間決算についてまとめると

・ただでさえ決算前後の株価は乱高下するのに、事前の上方修正により下駄を履かせたぶん、前年同期比でマイナスの決算の影響が響いた。

・ただし、関連事業の奮闘、神戸大学との産学連携、日本郵政との協力関係、そして今後はコンプライアンス以上に再度成長に重きを置くということなので、緩やかな回復は期待できそう。

と考えます。

⑶ 2022年6月の株主総会

第31期定時株主総会 2022年6月23日(木) 鉄鋼ビルディング22階

10時から開始して13時過ぎまでの3時間株主総会でした。

他の会社の株主総会終了後1200頃に到着して終盤の1時間ほど参加しました。

入口でお茶をいただきました。

主な質疑応答は下記のとおりです。

主な質疑応答(後半)

Q.平均勤続年数について

A.3.9年である。

また、離職率については全産業は14%、当社は13.5%となっている。

適切な採用と新陳代謝を踏まえた適正な離職率の値は10〜15%と言われており問題ないと考える。

Q.平均勤続年数が短いとコンプライアンスの徹底に支障があるのでは?

A.M&Aの仕事はウオームハートとクールヘッドが必要なハードな仕事であり、誰でもできる仕事ではない。

採用時のチェック定着率のアップに努める。

Q.5ヵ年計画の変更について

A.今期は保守的な見通しを立てているが、来期には5ヵ年計画に通りの進捗に復帰できると考える。

Q.不適切な会計の報告におけるゴタゴタについて

A.申し訳ない。

3/四半期の決算報告日である1月28日までに報告する予定であったが、不適切な会計の関係者が当初の予想(数名)から大幅に増えた(84名)ため報告までに時間を要した。

Q.社員の株式の購入について(アップル、テスラのように)

A.積極的に検討する。

Q.同業他社と比べた当社の強みについて

A.現在ブティック(仲介M&A会社)は約300社でそのうち85%は創業2年以内、社員4名以内の会社となっている。

自分の会社を売りたいと考えている社長を見つけるのは容易なことではないが、当社は大手金融機関(野村證券大和証券MUFG等)や地銀とのネットワークという強みを持っている。

成約率も他社の倍以上である。

Q.上場廃止はないか?

A.東証にも適時報告しており上場廃止はない。

Q.社長の独演会(しゃべりすぎ)について

A.申し訳ない。極力、他の役員に話させます。

Q.個人株主の割合について

A.17.4%(3万人に倍増)である。

もう少し増やせれば良いと考える。

外国人投資家は53.4%から50.1%に低下している。

Q.個人投資家を増やす手段について

A.積極的なIR、株主還元(増配、自社株買い)

Q.信用金庫とのネットワークづくりについて

A.”きんざい”という雑誌社とコンタクトは取っている。

全国250社の信用金庫と体力・マンパワーの許す範囲でネットワークづくりに努める。

Q.(16歳高校生から)M&A業界に興味があり今のうちにやっておくべきことは?

A.何かに凝って考える力をつけること(社長)

小論文、現代社会、数学をよく勉強すること(38歳取締役)

Q.社長が70年間で一番大事だと思ったことは?

A.自分の言葉で自分の考えを伝えるコミュニケーション力

Q.いい大学経由でいい企業に努めることは幸せな人生につながるのか?

A.自分(社長)は1浪2留で大学を出て財閥系ではなく外資系の会社へ進んだ。

今は、起業したりベンチャーに勤める道もある。

自分なりの価値観を持つ事が重要である。

決議事項

・剰余金処分の件

・定款一部変更の件

・取締役12名専任の件

・監査等委員である取締役3名選任の件

・補欠の監査等委員である取締役1名選任の件

拍手を持って賛成・可決されました。

その後、新着任者3名が紹介され、

「不祥事をバネに頑張っていきます!」

という社長の言葉で締めくくられました。

続いて、2022年6月の株主総会雑感です。

社長が中心の会社

株主から社長の独演会と言われるほどエネルギッシュに社長が話続けていました。

いろいろな意味で社長が中心の会社だと考えます。

特に社長のアウトプット力(話すこと、書くこと、行動すること)は特筆すべきレベルだと感じています。

他の取締役も頑張っていますが、やはり名実ともに社長が中心である会社だと思います。

不祥事の中にあっても社長は元気

ビジネスは攻めと守りの2面があると思います。

今までは攻めて攻めて攻めまくって好業績を続けました。

けれども今回の不祥事で、守りの面の粘り強さも実感しています。

株主総会終了時の社長が締め括った「不祥事をバネに頑張ります!」に全てが集約されていると感じました。

不祥事の禊(みそぎ)は株価半値、調整半年?

自分の持株の中で他に不祥事を起こした会社にアウトソーシング(人材派遣)アルベルト(人工知能があります。

横並びで見ると、株価はざっくり半値、調整期間は半年が基準となるように思います。

今回の株主総会でも株価の低迷を嘆く株主の声が少なからず聞こえましたが、原因がはっきりしているだけ救いがあります。

小型グロース株の中にはMSOLのように原因がわからず数週間で株価が半値になるものも少なくないことをもっと自覚すべきだと思います。

ダラダラ続く株価低迷の理由

では、不祥事から半年後の現在でも低迷を続けている理由は何か?

受給の問題だと思います。

米国の金利上昇によってグロース株が売られる流れの影響だと思います。

特に、外国人投資家が半数を占める、日本の個人投資家が少ない会社はその影響が顕著だと考えます。

例えば、SBIは新生銀行を完全子会社化して業績は絶好調なのに株価が下落基調なのは外国人投資家が7割、個人投資家2割の株主構成のためであり、よって、今後は個人株主を増やすよう努める北尾社長がおっしゃっていました。

反対に、JALは2期連続の赤字・無配にもかかわらずあまり株かは下がっていません。

個人投資家の割合が5割ということが主な理由と推測します。

持論ですが、個人投資家の多さはボラティリティを弱め、外国人投資家の多さはボラを高める要因と考えています。

日本M&Aセンターはボラの高い会社だと認識しています。

キャッシュリッチな理由と株主総会で得られた情報について

この会社は総資産590億の中で、利益剰余金が480億円というキャッシュリッチが特徴です。

ちょっと多すぎると思いませんか?

株主総会に参加した4年前からずっとこん状態でした。

そのことに対する質問に対しては社長は3年前はM&A、2年前は戦略的なM&Aを検討しているというものでした。

けれども、顕著なM&Aは実施されていません。

これは一体どういうことなのでしょうか?

社長は株主に対していい加減な回答を続けたのでしょうか?

今なら自分なりに腹落ちする理由を述べることができます。

おそらく、社長は内部留保を確保することによって様々な危機から会社を守りたかったのが本音だったと推察します。

今回の不祥事とそこからの回復過程において、巨額な内部留保の貢献がその証左と考えます。

また、昨年の総会ではキャッシュリッチであったことでコロナ禍を乗り越える事ができたとの社長の発言もありました。

厳しいM&Aの世界でありかつ、多くの訴訟を抱える日本M&Aセンターとしては会社を存続させるために”まさかのための保険”として多額の内部留保が必要だったのはある意味当然かもしれません。

けれども、株主に対してそのような本音株主総会の場で説明するのは”ちょっと違う”ことも理解できます。

よって、(戦略的)M&Aのためという方便を使ったのだと思います。

結論として、

株主総会で得られた情報を過信しないこと!』

ということは言えそうです。

もし、社長の戦略的M&Aを鵜呑みにして株価の暴騰を夢見て買い増ししていたらきっともっと痛い目にあっていたはず。

『情報には発信者の意図がある!』

ことを肝に銘じ、情報を多面的に分析し活用していきたいと思います。

⑷ 2022年2月14日の決算説明会

事前に申し込み、決算説明会の動画を約1時間半視聴しました。

投資家にとって色々と学ぶことの多い内容でした。

視聴者は約200人程。

2021年11月5日に実施された、M&Aカンファレンス(EXCEED30)の視聴者が15万人ということを考えると、ちょっと少なめだと思います。

以下、説明会を視聴した所感を3点述べます。

説明会を見たコメント

●株価の説明に始まり株価の対策に終わった説明会

会社が不適切な会計を発表した12月20日の株価と現在(2月14日)の株価を挙げて約4割下落したことへの陳謝から始まりました。

そして、質疑応答の最後に、自社株買いを含むあらゆる株価対策を講じると約束し説明会は終了しました。

投資家のことをしっかりと意識している点は評価できます。

株主総会においては多くの企業が、

”株価は市場が決めること”

で議論も思考も停止してしまうことが多い中、株価を意識した経営には好感がもてます。

●攻めだけでなく守りにつての粘り強さ

外部の弁護士と会計士による内部調査結果が公表されました。

不適切会計についての原因、対策、再発防止等がしっかり説明されていたと思います。

ちなみに、子会社の補助金不正受給が問題となったHISの株主総会にも参加していますが、その時との比較からも、より広い項目について深く検討されていたと考えます。

・原因:現場へのプレッシャー、業務フローの脆弱さ、社内文書という安心感など

・対策:決算の修正、関係者の処分(降格、役員報酬の減額・自主返納など)

・再発防止:コンプライアンス重視経営、内部統制の再構築、文化の変革

組織活動には攻めと守りの両面があります。

日本M&Aセンターは社長のリーダーシップのも攻めに強いことは良くわかっていました。

今回の謝罪と調査結果の説明を聴き、しっかりとしたリスク管理がなされていると感じました。

話は変わりますが、ソニーが米国で情報流出事案を引き起こした際、平井元会長が米国人の反対を押し切って謝罪会見を行い事態収集に努めたことがありました。

そういった、不祥事が発生したときの対応が組織の盛衰を左右するものです。

現在、絶好調のソニーも様々な難関を超えてきたことから分かるように、守りに強いことが組織の持続的成長には不可欠と考えます。

今回の日本M&Aセンターの説明会、そして、引き続き実施される社長によるステークホルダーに対する説明巡業がどのような効果を生むのか注目しています。

●社長の力量

社長が本事案を知ったのが10月19日とのこと。

ということは、この事案を懸念しつつ6億円を投じつつM&Aカンファレンスを実施していたことになります。

当時、どこまで広がりを見せるか分からない本事案に対処しながら、15万人ものステークホルダー等の期待に応えるプレゼンをするのは容易なことではないと考えます。

並みの方なら疲弊してしまって仕方のないような状況においても、

「あのね、・・・」

と繰り返し熱く語り続ける社長のエネルギー、ひいては力量はすごいと感じました。

ほとんど疲れを感じさせませんでした。

今後の株式の保有方針

事案が明らかになっても、株式は売却等していません。

買い増しもしていません。

元々トレーディングではなく、投資の対象としているのでその成長ストーリーやビジネスモデルが崩れるまでは保有しつづけるつもりです。

材料を整理してみます。

●強気

・決算及び不適切な会計についての調査結果(原因、対策、再発防止)等について説明がなされた。

・財務基盤がしっかりしており、キャッシュリッチ(売上高約390億円に対して、有利子負債ゼロ、利益剰余金は480億円)

・事業環境は良好で業績もしっかりしている。

・社長は相変わらず元気!

●弱気

グロース株”売り”の世界的トレンド(あのリクルートも高値から4割以上下落)

・下げトレンドの継続(米国利上げ、ウクライナ情勢の状況下)

・同業他社に比べてまだまだ割高(PBRの比較)

日本M&Aセンター:10.91

M&Aキャピタルパートナーズ:5.83

ストライク:8.92

株価大幅下落となってもまだまだPBRは高いです。

逆に、比較的割安に見られるM&Aキャピタルパートナーズの株価が元気です。

・マスコミによる批判(河野太郎氏の両手勘定問題から相変わらずですが)

コンプライアンスに厳しい保有比率53.2%を占める外国人投資の動向は?

・同業他社からの人材の引き抜きの加速

株価はランダムウオーク。

ノイズとシグナルをしっかりと区別して投資を継続したいと思います。

主な質疑応答

Q.期ずれの問題なのに時間がかかったのは何故か?

A.発見しずらい手法で、かつ、多くの広がりを見せたため、網羅性を確保するため調査範囲が広がった。

Q.いつ認識したのか?

A.担当役員は10月18日、社長は10月19日

Q.12月20日に事案を公表するまでに時間がかかっているのは隠蔽をするためか?

A.慎重に調査方針を決めるため、1件ごと関係者を一人づつ緻密に面談したため正式な予備調査までに時間を要した。

Q.目標値に無理があったのではないか?

A.本人以外にも上司等がマンパワーを分析しているのでそれなないと考える。

Q.T営業部長の期間に件数が増えているのでプレッシャーが強くなったのでは?

A.むしろ、コロナ禍、M&Aカンファレンス、コミットメント制度の方がプレッシャーになっていたと考える。

Q.内部通報制度が機能しなかったのは何故か?

A.内部通報制度による訴えはほぼ無い。これとは別に、社長へのシークレットレーターという制度はあり年間数件程度(上司との反りが合わないなど)は受けている。内部通報制度で早く事態を掌握していればここまで大きなコンプライアンス上の問題にはならなかったと認識している。

Q.四半期ごとの目標やコミットメント制度の見直しは?

A.顧客満足は早ければ良いとい得ものでは無いので、ラップを刻むのは難しい。バランス感覚が必要となる。

また、コミットメント制度は、上司から与えられたものでなく自分で宣言しているぶん、厳しい一面がある。顧客ファーストの観点から見直すべき点があると考える。

Q.顧客の印を無断で使ったのは犯罪ではないか?刑事告発しないのは何故か?

A.顧客の印を使ったのは社内文書のみ。

ビジネスマンとしての問題については懲罰委員会の決定を経て処分する。

Q.長期売掛金の案件はチェックでき無いのか?

A.チェックはやっていたのでずるずる長期化することはなかった。83件中13件は入金がなかったため、入金遅延=売上取消という措置をおこなっている。

Q.経常売上が下がった要因は?

A.M&Aカンファレンス(EXCEED30)の経費6億円等の販管費を計上したため。

Q.何故、第3者委員会ではなく社内調査としたのか?

A.調査結果を早く発表することを最優先としたため。デジタルフォレンジック等により精度と厳格性は担保されていると考える。

Q.中期経営計画は変更されるのか?

A.従来通り計画された目標を達成していく。

Q.従業員が業務に専念できる環境に戻せるのか?

A.社員の不安を払拭し、反省すべきは反省ししっかりと全社員が一丸となって業績達成に邁進していく。

Q.売上計上ルールは変更するのか?

A.基準は変わらないが厳格化していく。売掛金計上は毎月1〜7日までしか成立しない。

Q.今回の件で、経費は上昇するのか?

調査、コンプライアンス、文書管理に係るコストが増加する。オフィスは必要で、教育にも注力する。ただし、会社の収益力から見れば十分に吸収できる範囲。

Q.株価低下に対して自社株買いはありうるのか?

A.インサイダー問題に気をつけ調査を続けてきた。本日、調査結果を報告することができた。今は何も決定していないが、自社株買いを含め株価対策を積極的に行っていく。

⑸ 2021年6月の株主総会

第30期定時株主総会 2021年6月24日(木)鉄鋼ビルディング

途中から参加しました。

会場には30名程の株主が集っていました。

質疑応答等のポイントは以下のとおりです。

・会社の経営において社員500名までは人を増やせば業績が上がるが、それ以上はDXで効率性を上げることが必須。

・人材とDXは社長直轄。

・創業30周年、そして第2創業へ向けて頑張る。

・”利益相反”の問題については中小企業庁によるガイドラインに従って粛々と業務を行う。

・M&A業界を作る。

・今後、株主総会のバーチャルと対面の両立に努力する。

・キャッシュリッチな会社であったことがコロナ禍を乗り越えることに貢献。

・業界団体は日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナー、ストライク、オンデック、明南M&Aなど、きちっとしたキャリアや実績を持ち品位・品格を重んじる企業。

・プライム市場を目指すが、気持ちはグロースのつもりで頑張る!

株主総会終了後の拍手はありませんでした。

⑹ 2020年6月の株主総会

第29期定時株主総会 2020年7月29日(水) 

鉄鋼ビルディング22階会議室

総会に参加するのは昨年に続き2回目。

今回は、コロナ禍での株主総会、社長が挨拶するときだけマスクを外されたのが印象的でした。 

社長からは、増収増益、しかもコロナ禍におけるM&Aによる損失回避効果が3000億円にも及び、これは10年間で考えると企業を救うことにより2兆6千億円の経済効果を上げたことを意味している旨の説明がありました。 

M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」という会社グループの社会的使命を強調しつつ実績を上げているようです。

また、真の地方創生のため、優良企業中堅企業中小企業零細企業にセグメント別の成長戦略について青森県などでの具体的な事例が紹介されました。

Tokyo PRO Marketへの上場支援サービスも手掛けており、M&A仲介企業」から「M&A総合企業」への成長ストーリーが熱く語られました。

株主の指摘にもありましたが、今回の取締役の選任では、女性外国人社内の生え抜きの若手などバランスよく選任されており、人事戦略もよく練られていることが伺えました。

海外展開については、この先アジアが世界のGDPの49%を占めることを踏まえ、ベトナムを中心としたアセアン地区にも展開しているとのこと。

同業他社のGCAが欧米に強いこともあり、ある意味”すみわけ”が出来ているように思いました。

印象に残ったのは、コロナ禍で自信を無くしている経営者が少なくないとのこと。

ステークホルダーのためということはもちろんですが、もう少し広く社会のためにも頑張ってほしいと感じました。

⑺ 株主還元

配当

1株配当実績は下記の通りです。

2023年3月期:23円

2022年3月期:18円

2021年3月期:28円

2020年3月期:26円

2019年3月期:23円

2018年3月期:41円

毎年配当金は乱高下しています。

加重平均方式を導入してある程度安定させることを検討しても良いかもしれません。

株主優待

100株 1年以上継続保有で魚沼産こしひかり産直品 5kg

自社株買い

約700億円の自社株買いを実施したとのことでした。

 

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3 株主としてのコメント

⑴  投機と投資の違いを教えられた株

IPOに当選した話をしました。

その際は、100万円強の株を上場後に約2倍で売却し、約100万円の利益を確定しました。

当時は自分はすごい!と上機嫌。

でも、これは価格の変化に着目した投機でした。

それから15年間で株式分割により当時の単位株は192倍となりました。

2021年11月頃の株価は3700円を超えていました。

単純計算で、192倍×3700円×100株=7104万円

となります。

約100万円が7千万以上になった計算になります。

これが企業の成長(価値の向上)に着目した投資です。

どちらが良いとか悪いとかではありません。

投機と投資の違いを理解することの大切さを学んだという話です。

7千万円以上の計算結果に驚くとともに悔しい思いはありますが・・・。

⑵  さまざまな困難を乗り越えてきた会社

M&Aの仲介という新しい業界のリーディングカンパニーとしてこれまで様々な困難を乗り越えてきたと思います。

数年前は国会議員の河野太郎氏から、M&A仲介企業の手数料買い手と売り手から取ることによる”両手勘定”であるり利益相反の懸念があると指摘し、これを受け”東洋経済”も批判的な記事が掲載されたことがありました。

これに対しては”業界団体”を作り中小企業庁に協力しつつガイドラインを策定し悪質な業務の排除に努める姿勢を示しながら問題を乗り越えていったようです。

また、M&A業界は訴訟が多い業界ですが、これに対しては東京海上日動と業務提携契約を結んでの対処を試みています(ちなみに、業界2位のM&Aキャピタルパートナーズは2020年の株主総会では訴訟が一件もないとのことでした)。

このように、日本M&Aセンターの30年間は、問題にガチで取り組み”ディール”により乗り越えてきた歴史のように感じています。

そしてその原動力は、何と言っても社長のリーダーシップに尽きると思います。

15万人が視聴したという創業30周年記念イベント「M&Aカンファレンス2021」のコンテンンツの中で社長は、

・毎週社員に対してA4用紙10枚以上のボリュームのメールを社員に配信し続ける!

・週末に社員(最近は部長)と合宿し酒を酌み交わしながら徹夜で議論をする!

・家族の誕生日に会社からのプレゼント

などの話がありました。

動画コンテンツを見ながら、会社が急成長し続けてきた背景にこれ程強烈な社長のリーダーシップがあったことを知り納得がいきました。

⑶  安定成長の中に見える不安定さ

2021年の年末に子会社の”不適切な会計”事案が報じられ、株価は急落しています。

”不適切な会計”とは売上高の計上時期についてとのこと。

”期ずれ”とも言われており、今期の売上の予定が来期にずれ込むことで業績の”未達”と批判され株価の急落を招くものです。

日本M&Aセンターの業績は売上高も利益も綺麗な右肩上がりで計画通り安定して進捗してきました。

けれども、その安定成長は”不適切な会計”によるものだとしたら会社の信頼を根本から損ねるものとなりかねません。

頑張りすぎたのでしょうか?

社長の強力なリーダーシップゆえのガバナンスの不安定さ感じます。

原因の究明と再発防止の徹底を期待します。

ちなみに、”期ずれ”の問題に対して

・業界2位のM&Aキャピタルは、少数精鋭で事業活動しているので”期ずれ”はあって当然と開き直り

・業界3位のストライクは、1度”期ずれ”が生じたがもう2度と経験したくはないと苦しい表情

と、株主総会での社長のご様子でした。

⑷ 杉村富生さんの株式講演会のコメント

2022年7月14日(木)に東京証券会館にて株式講演会が実施されました。

その中で株式評論家の杉村富生さんの日本M&AセンターHDに対するコメントがありました。

要点は下記の通りです。

・優良株が急落した時に買えば取れる!(バフェットより)

・日本M&Aは不適切な会計により時価総額が1.2兆円から4000億円へ暴落

・株価の急落は外国の機関投資家の売却による

・再発防止の徹底と好業績の説明などのIR活動をフランス等の欧州で実施中

・IRの中心は能楽師として名高い分林会長(78歳)で相手は”感激”とのこと

・株価は6月下旬より上昇トレンド

・長い時間をかけてコツコツ拾っていけば報われるのでは(特に1300円台)?

株主として、かつ投資家として大変興味深く話を伺いました。

実は、この話はラジオ日経のザ・マネー7月13日(水)でも聴いていました。

杉村さんがおっしゃるように過去の不祥事を乗り越えた、ブリヂストンオリンパスのように日本M&Aの復活を期待しつつ、買い増しを検討しています。

4 まとめ

会社の後継者不足を背景に成長著しいM&A仲介業界のリーディングカンパニーとしての日本M&Aセンターホールディングスについて述べてきました。

社長の極めて強いリーダーシップのもと社員が一丸となって事業に取り組み成長を続ける姿には頼もしさを感じます。

けれども、「驕る平家は久しからず」ではありませんが、15万人動員!の創業30周年記念イベント直後に”不適切な会計”事案が発覚し、わずか2ヶ月で、ピーク時に3700円以上だった株価は約1500円下がって2200円程度の年初来安値を更新し続けているのも事実(企業価値が4割毀損しました)。

時価総額は1兆円を超えました!」との社長のプレゼンがありましたが現在は約3500億円で底ばいを継続しています。

個人的には投機と投資の違いについて学んだ銘柄ですが、企業経営の面白さと怖さについても得られるところが大きな会社だと思います。

引き続き、株主として日本M&Aセンターホールディングスの成長に関わっていきたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。

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