投稿日:2020.8.15、更新日:2022.1.20、2022.2.15
こんにちは!
この記事は、日本M&Aセンター【2127】の株式に関心のある方に対して、株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年2月14日の不適切会計調査結果を含む決算説明動画を視聴し、記事を更新しています(更新箇所は青字です)。
【目次】
【会社が所在する(22階)東京駅八重洲口に位置する鉄鋼ビルディング】
1 日本M&Aセンター について
⑴ 会社概要
中小企業のM&A仲介で最大手。
そもそも上場されている主なM&A会社には、日本M&Aセンターの他、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、GCA、オンデック、明南M&A等が上場しています。
その中で、日本M&Aセンターは業界のリーディングカンパニーとの位置付け。
そして、他社との価格競争には距離を置き、高めの手数料を維持しているのは、それに見合ったサービスに自信があるとのこと。
そのサービスのクオリティーの高さは、これからの会社の成長ストーリーに裏打ちされているように感じます。
ただし、2021年末に発覚した”不適切な会計”事案で会社の成長ストーリーが揺さぶられています。
⑵ 株主になったきっかけ
2006年10月に東証マザーズに上場する際、みずほ証券のIPOに当選したのが株主になるきっかけでした。
適時利益を確定しながら、それ以降も売買を繰り返しています。
会社は業績を伸ばし続け、適時株式分割を繰り返しながら株価も右肩上がり。
もし、上場から15年間ホールドしておけば最大70倍以上になっていました。
ちょっとした退職金ですね。
また、会社を通じて、後継者不足という社会問題に取り組み、豊かな社会の実現に貢献したいという思いもあり売買を繰り返しつつもホールドしています。
⑶ 経営分析
収益性
11年連続最高益を更新。
・売上高総利益率:62%
・売上高営業利益率:45%
であり、高収益体質です。
日本の少子高齢化や後継者不足問題を背景とした優れたビジネスモデルを有しています。
安全性
流動比率(目安として200%以上が望ましい):約490%
負債比率(目安として100%以下が望ましい):22%
自己資本比率(目安として30%以上が望ましい):82%
財務基盤は盤石です。
効率性
売上債権や有形固定資産の回転率も悪くなく効率的な経営がなされています。
なお、無形固定資産の中に投資その他資産の項目がありその中で長期預金として140憶円が計上されていることが特徴として挙げられます。
何に投資されるか注意深くモニタしたいと思います。
2 株主総会等
⑴ 2022年2月14日の決算説明会
事前に申し込み、決算説明会の動画を約1時間半視聴しました。
投資家にとって色々と学ぶことの多い内容でした。
視聴者は約200人程。
2021年11月5日に実施された、M&Aカンファレンス(EXCEED30)の視聴者が15万人ということを考えると、ちょっと少なめだと思います。
以下、説明会を視聴した所感を3点述べます。
説明会を見たコメント
●株価の説明に始まり株価の対策に終わった説明会
会社が不適切な会計を発表した12月20日の株価と現在(2月14日)の株価を挙げて約4割下落したことへの陳謝から始まりました。
そして、質疑応答の最後に、自社株買いを含むあらゆる株価対策を講じると約束し説明会は終了しました。
投資家のことをしっかりと意識している点は評価できます。
株主総会においては多くの企業が、
”株価は市場が決めること”
で議論も思考も停止してしまうことが多い中、株価を意識した経営には好感がもてます。
●攻めだけでなく守りにつての粘り強さ
外部の弁護士と会計士による内部調査結果が公表されました。
不適切会計についての原因、対策、再発防止等がしっかり説明されていたと思います。
ちなみに、子会社の補助金不正受給が問題となったHISの株主総会にも参加していますが、その時との比較からも、より広い項目について深く検討されていたと考えます。
・原因:現場へのプレッシャー、業務フローの脆弱さ、社内文書という安心感など
・対策:決算の修正、関係者の処分(降格、役員報酬の減額・自主返納など)
・再発防止:コンプライアンス重視経営、内部統制の再構築、文化の変革
組織活動には攻めと守りの両面があります。
日本M&Aセンターは社長のリーダーシップのも攻めに強いことは良くわかっていました。
今回の謝罪と調査結果の説明を聴き、しっかりとしたリスク管理がなされていると感じました。
話は変わりますが、ソニーが米国で情報流出事案を引き起こした際、平井元会長が米国人の反対を押し切って謝罪会見を行い事態収集に努めたことがありました。
そういった、不祥事が発生したときの対応が組織の盛衰を左右するものです。
現在、絶好調のソニーも様々な難関を超えてきたことから分かるように、守りに強いことが組織の持続的成長には不可欠と考えます。
今回の日本M&Aセンターの説明会、そして、引き続き実施される社長によるステークホルダーに対する説明巡業がどのような効果を生むのか注目しています。
●社長の力量
社長が本事案を知ったのが10月19日とのこと。
ということは、この事案を懸念しつつ6億円を投じつつM&Aカンファレンスを実施していたことになります。
当時、どこまで広がりを見せるか分からない本事案に対処しながら、15万人ものステークホルダー等の期待に応えるプレゼンをするのは容易なことではないと考えます。
並みの方なら疲弊してしまって仕方のないような状況においても、
「あのね、・・・」
と繰り返し熱く語り続ける社長のエネルギー、ひいては力量はすごいと感じました。
ほとんど疲れを感じさせませんでした。
今後の株式の保有方針
事案が明らかになっても、株式は売却等していません。
買い増しもしていません。
元々トレーディングではなく、投資の対象としているのでその成長ストーリーやビジネスモデルが崩れるまでは保有しつづけるつもりです。
材料を整理してみます。
●強気
・決算及び不適切な会計についての調査結果(原因、対策、再発防止)等について説明がなされた。
・財務基盤がしっかりしており、キャッシュリッチ(売上高約390億円に対して、有利子負債ゼロ、利益剰余金は480億円)
・事業環境は良好で業績もしっかりしている。
・社長は相変わらず元気!
●弱気
・グロース株”売り”の世界的トレンド(あのリクルートも高値から4割以上下落)
・下げトレンドの継続(米国利上げ、ウクライナ情勢の状況下)
・同業他社に比べてまだまだ割高(PBRの比較)
日本M&Aセンター:10.91
M&Aキャピタルパートナーズ:5.83
ストライク:8.92
株価大幅下落となってもまだまだPBRは高いです。
逆に、比較的割安に見られるM&Aキャピタルパートナーズの株価が元気です。
・マスコミによる批判(河野太郎氏の両手勘定問題から相変わらずですが)
・コンプライアンスに厳しい保有比率53.2%を占める外国人投資の動向は?
・同業他社からの人材の引き抜きの加速
株価はランダムウオーク。
ノイズとシグナルをしっかりと区別して投資を継続したいと思います。
主な質疑応答
Q.期ずれの問題なのに時間がかかったのは何故か?
A.発見しずらい手法で、かつ、多くの広がりを見せたため、網羅性を確保するため調査範囲が広がった。
Q.いつ認識したのか?
A.担当役員は10月18日、社長は10月19日
Q.12月20日に事案を公表するまでに時間がかかっているのは隠蔽をするためか?
A.慎重に調査方針を決めるため、1件ごと関係者を一人づつ緻密に面談したため正式な予備調査までに時間を要した。
Q.目標値に無理があったのではないか?
A.本人以外にも上司等がマンパワーを分析しているのでそれなないと考える。
Q.T営業部長の期間に件数が増えているのでプレッシャーが強くなったのでは?
A.むしろ、コロナ禍、M&Aカンファレンス、コミットメント制度の方がプレッシャーになっていたと考える。
Q.内部通報制度が機能しなかったのは何故か?
A.内部通報制度による訴えはほぼ無い。これとは別に、社長へのシークレットレーターという制度はあり年間数件程度(上司との反りが合わないなど)は受けている。内部通報制度で早く事態を掌握していればここまで大きなコンプライアンス上の問題にはならなかったと認識している。
Q.四半期ごとの目標やコミットメント制度の見直しは?
A.顧客満足は早ければ良いとい得ものでは無いので、ラップを刻むのは難しい。バランス感覚が必要となる。
また、コミットメント制度は、上司から与えられたものでなく自分で宣言しているぶん、厳しい一面がある。顧客ファーストの観点から見直すべき点があると考える。
Q.顧客の印を無断で使ったのは犯罪ではないか?刑事告発しないのは何故か?
A.顧客の印を使ったのは社内文書のみ。
ビジネスマンとしての問題については懲罰委員会の決定を経て処分する。
Q.長期売掛金の案件はチェックでき無いのか?
A.チェックはやっていたのでずるずる長期化することはなかった。83件中13件は入金がなかったため、入金遅延=売上取消という措置をおこなっている。
Q.経常売上が下がった要因は?
A.M&Aカンファレンス(EXCEED30)の経費6億円等の販管費を計上したため。
Q.何故、第3者委員会ではなく社内調査としたのか?
A.調査結果を早く発表することを最優先としたため。デジタルフォレンジック等により精度と厳格性は担保されていると考える。
Q.中期経営計画は変更されるのか?
A.従来通り計画された目標を達成していく。
Q.従業員が業務に専念できる環境に戻せるのか?
A.社員の不安を払拭し、反省すべきは反省ししっかりと全社員が一丸となって業績達成に邁進していく。
Q.売上計上ルールは変更するのか?
A.基準は変わらないが厳格化していく。売掛金計上は毎月1〜7日までしか成立しない。
Q.今回の件で、経費は上昇するのか?
調査、コンプライアンス、文書管理に係るコストが増加する。オフィスは必要で、教育にも注力する。ただし、会社の収益力から見れば十分に吸収できる範囲。
Q.株価低下に対して自社株買いはありうるのか?
A.インサイダー問題に気をつけ調査を続けてきた。本日、調査結果を報告することができた。今は何も決定していないが、自社株買いを含め株価対策を積極的に行っていく。
⑵ 2021年株主総会
第30期定時株主総会 2021年6月24日(木)鉄鋼ビルディング
途中から参加しました。
会場には30名程の株主が集っていました。
質疑応答等のポイントは以下のとおりです。
・会社の経営において社員500名までは人を増やせば業績が上がるが、それ以上はDXで効率性を上げることが必須。
・人材とDXは社長直轄。
・創業30周年、そして第2創業へ向けて頑張る。
・”利益相反”の問題については中小企業庁によるガイドラインに従って粛々と業務を行う。
・M&A業界を作る。
・今後、株主総会のバーチャルと対面の両立に努力する。
・キャッシュリッチな会社であったことがコロナ禍を乗り越えることに貢献。
・業界団体は日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナー、ストライク、オンデック、明南M&Aなど、きちっとしたキャリアや実績を持ち品位・品格を重んじる企業。
・プライム市場を目指すが、気持ちはグロースのつもりで頑張る!
株主総会終了後の拍手はありませんでした。
⑶ 2020年株主総会
第29期定時株主総会 2020年7月29日(水)
鉄鋼ビルディング22階会議室
総会に参加するのは昨年に続き2回目。
今回は、コロナ禍での株主総会、社長が挨拶するときだけマスクを外されたのが印象的でした。
社長からは、増収増益、しかもコロナ禍におけるM&Aによる損失回避効果が3000億円にも及び、これは10年間で考えると企業を救うことにより2兆6千億円の経済効果を上げたことを意味している旨の説明がありました。
「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」という会社グループの社会的使命を強調しつつ実績を上げているようです。
また、真の地方創生のため、優良企業、中堅企業、中小企業、零細企業にセグメント別の成長戦略について青森県などでの具体的な事例が紹介されました。
Tokyo PRO Marketへの上場支援サービスも手掛けており、「M&A仲介企業」から「M&A総合企業」への成長ストーリーが熱く語られました。
株主の指摘にもありましたが、今回の取締役の選任では、女性、外国人、社内の生え抜きの若手などバランスよく選任されており、人事戦略もよく練られていることが伺えました。
海外展開については、この先アジアが世界のGDPの49%を占めることを踏まえ、ベトナムを中心としたアセアン地区にも展開しているとのこと。
同業他社のGCAが欧米に強いこともあり、ある意味”すみわけ”が出来ているように思いました。
印象に残ったのは、コロナ禍で自信を無くしている経営者が少なくないとのこと。
ステークホルダーのためということはもちろんですが、もう少し広く社会のためにも頑張ってほしいと感じました。
⑶ 配当
1株あたりの配当は15円で中間配当金11円と合わせて年間26円となります。
⑷ 株主優待
100株 1年以上継続保有で魚沼産こしひかり産直品 5kg
3 株主としてのコメント
⑴ 投機と投資の違いを教えられた株
IPOに当選した話をしました。
その際は、100万円強の株を上場後に約2倍で売却し、約100万円の利益を確定しました。
当時は自分はすごい!と上機嫌。
でも、これは価格の変化に着目した投機でした。
それから15年間で株式分割により当時の単位株は192倍となりました。
2021年11月頃の株価は3700円を超えていました。
単純計算で、192倍×3700円×100株=7104万円
となります。
約100万円が7千万以上になった計算になります。
これが企業の成長(価値の向上)に着目した投資です。
どちらが良いとか悪いとかではありません。
投機と投資の違いを理解することの大切さを学んだという話です。
7千万円以上の計算結果に驚くとともに悔しい思いはありますが・・・。
⑵ さまざまな困難を乗り越えてきた会社
M&Aの仲介という新しい業界のリーディングカンパニーとしてこれまで様々な困難を乗り越えてきたと思います。
数年前は国会議員の河野太郎氏から、M&A仲介企業の手数料買い手と売り手から取ることによる”両手勘定”であるり”利益相反”の懸念があると指摘し、これを受け”東洋経済”も批判的な記事が掲載されたことがありました。
これに対しては”業界団体”を作り中小企業庁に協力しつつガイドラインを策定し悪質な業務の排除に努める姿勢を示しながら問題を乗り越えていったようです。
また、M&A業界は訴訟が多い業界ですが、これに対しては東京海上日動と業務提携契約を結んでの対処を試みています(ちなみに、業界2位のM&Aキャピタルパートナーズは2020年の株主総会では訴訟が一件もないとのことでした)。
このように、日本M&Aセンターの30年間は、問題にガチで取り組み”ディール”により乗り越えてきた歴史のように感じています。
そしてその原動力は、何と言っても社長のリーダーシップに尽きると思います。
15万人が視聴したという創業30周年記念イベント「M&Aカンファレンス2021」のコンテンンツの中で社長は、
・毎週社員に対してA4用紙10枚以上のボリュームのメールを社員に配信し続ける!
・週末に社員(最近は部長)と合宿し酒を酌み交わしながら徹夜で議論をする!
・家族の誕生日に会社からのプレゼント
などの話がありました。
動画コンテンツを見ながら、会社が急成長し続けてきた背景にこれ程強烈な社長のリーダーシップがあったことを知り納得がいきました。
⑶ 安定成長の中に見える不安定さ
2021年の年末に子会社の”不適切な会計”事案が報じられ、株価は急落しています。
”不適切な会計”とは売上高の計上時期についてとのこと。
”期ずれ”とも言われており、今期の売上の予定が来期にずれ込むことで業績の”未達”と批判され株価の急落を招くものです。
日本M&Aセンターの業績は売上高も利益も綺麗な右肩上がりで計画通り安定して進捗してきました。
けれども、その安定成長は”不適切な会計”によるものだとしたら会社の信頼を根本から損ねるものとなりかねません。
頑張りすぎたのでしょうか?
社長の強力なリーダーシップゆえのガバナンスの不安定さ感じます。
原因の究明と再発防止の徹底を期待します。
ちなみに、”期ずれ”の問題に対して
・業界2位のM&Aキャピタルは、少数精鋭で事業活動しているので”期ずれ”はあって当然と開き直り
・業界3位のストライクは、1度”期ずれ”が生じたがもう2度と経験したくはないと苦しい表情
と、株主総会での社長のご様子でした。
4 まとめ
会社の後継者不足を背景に成長著しいM&A仲介業界のリーディングカンパニーとしての日本M&Aセンターホールディングスについて述べてきました。
社長の極めて強いリーダーシップのもと社員が一丸となって事業に取り組み成長を続ける姿には頼もしさを感じます。
けれども、「驕る平家は久しからず」ではありませんが、15万人動員!の創業30周年記念イベント直後に”不適切な会計”事案が発覚し、わずか2ヶ月で、ピーク時に3700円以上だった株価は約1500円下がって2200円程度の年初来安値を更新し続けているのも事実(企業価値が4割毀損しました)。
「時価総額は1兆円を超えました!」との社長のプレゼンがありましたが現在は7500億円で下降トレンドを継続しています。
個人的には投機と投資の違いについて学んだ銘柄ですが、企業経営の面白さと怖さについても得られるところが大きな会社だと思います。
引き続き、株主として日本M&Aセンターホールディングスの成長に関わっていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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