初投稿:2021.7.22、更新日:2022.7.15
こんにちは!
この記事は、マネックスグループ【8698】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年6月の株主総会のライブ配信を視聴したことを追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・金融エンタメ企業
・今更「生涯バランスシートの最良化」と言われても・・・
★★★
【目次】
1 マネックスグループについて
⑴ 会社概要
ネット証券大手で、暗号資産会社のコインチェックを傘下におさめています。
証券・先物の業種の中では時価総額が7/48位というポジション。
総資産1.6兆円、売上高963億円、時価総額1131億円の事業規模。
PBRは1.08倍であり、あのSBI HDの0.7倍よりも市場からの評価が高いです。
セグメント
次の5つの事業領域を有しており、一番の収益源はクリプト・アセット事業です。
名実ともに仮想通貨銘柄となっているとみて良いでしょう。
・日本
・米国
・アジア・パシフィック
・クリプト・アセット事業
・投資事業
⑵ 株主になったきっかけ
マネックス証券が上場した2004年頃から(ずっとではありませんが)の長い付き合いです。
マネックス証券(S&P500積立投資中)とコインチェック(ビットコイン積立投資中)の利用者でもあります。
⑶ 2022年3月の経営分析
会社四季報では【減益続く】とあります。
収益性
・収益に対する税引き前利益率は22%
高い収益性と考えます。
けれども前の期に比べると5%低下しており安定性にやや欠けているように思います。
安全性
・負債比率:1416%
・自己資本比率:7%
前の期とほぼ同レベルの数値です。
特に懸念すべきではなさそうです。
ちなみに、SBIHDは、負債比率:905%、自己資本比率:10%となっています。
効率性
・棚卸資産回転率:1.75
資料によると
「近い将来に販売し、価格の変動による利益又はブローカーとしてのマージンを稼得する目的で保有する暗号資産は、棚卸しさんとして認識し・・・」
とあります。
よって、暗号資産ビジネスとの関わりがあると考えられます。
暗号資産銘柄としての面もあるマネックスですが、棚卸資産回転率の低さから見ると意外と暗号資産ビジネスは効率的ではないという見方ができるのかもしれません。
⑷ 2021年3月期の経営分析
計算書類が他社とちょっと異なっています。
増収増益です。
収益性
・収益に対する税引き前利益率は27%
高い収益性と考えます。
安全性
・負債比率:1448%
・自己資本比率:6%
金融のプロが集う集団ですから安全性については十分認識して経営に当たっていると思います。
数値的には極めて脆弱に見えますが、他の大手証券会社も同様なレベルです。
証券会社の財務はこのレベルがスタンダードなのだと考えます。
効率性
・棚卸資産回転率:1.75
数値だけ見ればあまり効率的とは言えません。
けれども、金融機関なのできっと効率的なお金の使い方をしていると思います。
そもそも、証券会社の棚卸資産とは何か?
新規開発中の金融商品などでしょうか。
それにしては、棚卸資産の金額が450憶円以上ということもあり、 額が大きすぎます。
すみません、良く分からないことばかりです。
ただし、マネックスグループの理解を深めることが、金融リテラシーの向上につながることは確かなようです。
2 株主総会等
⑴ 2022年6月の株主総会
主なポイント
・増収減益
・日本:信用取引で利益、米国:ボラティリティ低下で減益、クリプト:手数料で利益
主な質疑応答
【会場】
Q.中期的事業戦略について
A.ブロックチェーン技術は社会を変える可能性があり、企業成長のための新しいサービスの提供に努める。
Q.米国事業の赤字について
A.口座が思ったほど取れず、手数料も苦戦。
ただし、トレードステーションは金利上昇に伴い金融収入の増加が見込める。
ライフタイムバリューではペイしており、市場の変化を踏まえコストコントロールを徹底する。
Q.ESGアクティビストファンドについて
A.環境アクティビストが企業の定款変更活動を行なっていると認識。若者の投資家を増やす上で注目している。
Q.株価低迷について
A.暗号資産ビジネスの商品の売買については連結には影響を及ぼしていない(隠してはいない)。
トレードステーションやコインチェックの米国市場への上場についてはSECの注文をこなしつつ順調に進捗している。
分かりにくい部分もあるので、IRを通じた説明に努める。
Q.メタバース経済圏について
A.例えば、身障者がメタバースの中で円滑に働くことも出来る。
新しい街づくりとして注目している。
Q.M&A投資銀行業務について
A.社長の前職でもあるので検討していく。
Q.マネックスという社名の変更について
A.企業理念の中に、「個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指します。」を追加した。
社名にはこだわりはなく、必要に応じて変化させていくことは可能と考える。
Q.アクティビストファンド活動として皆で株主総会に参加することについて
A.総会参加はちょっと難しい。
ただし、コンビニで投資信託やETFを売れるようにすることは金融庁との調整で可能かもしれない。
Q.IEOについて
A.頑張る。
Q.株価と暗号資産の低迷の関係について
A.当社は分散したビジネスを展開しており、暗号資産の低迷の影響は限定的。
Q.有価証券報告書記載の金利、ボラティリティについての仮説の検証について
A.仮説は立ていない。
金利についてはイールドカーブコントロールをベースに考えている。
米国におけるボラティリティについてはVIX指数をベースとしている。
Q.出井取締役の業績について
A.「新しいことを探すのはCEOの仕事」という助言に基づき、オンライン証券以外のビジネスを手掛けるようになったのは出井取締役のおかげ。
今はブロックチェーンに注目し第2創業とも言える状態。
Q.オアシス(香港)がマネックスグループの株式5%以上保有していることについて
A.恐らく当社の株価が安いと思って買っていたら5%を超えてしまったのではないか。
オアシスの社長とは意見交換を良くしておりコミュニケーションは取れている。
Q.WEBサイトの利便性の向上について
A.シングルサインオンなど、セキュリティを考慮しつつ利便性向上に努める。
Q.マネックスグループのロゴの変更について
A.自分としてはこだわりがなくマークは変えても良いと考える。
Q.SBIホールディングスの完全子会社となった新生銀行との業務提携について
A.業務提携契約に基づき業務を実施していく。
Q.買収防衛策について
A.実施していない。
企業価値の向上を通じて株主かちの上げることに努める。
Q.清明社長は人の話を聞かない
A.そのようなことはない。
ただし、ご指摘は謙虚に受け止める。
【事前】
Q.自社株買いについて
A.原資として(配当余剰金)数百億円あるので実施について積極的に検討する。
Q.米国への投資の妥当性について
A.状況を踏まえ、検討する。
Q.郵便局はライバルか?
A.今はプラットフォーマーとしてのアマゾンやアップルを意識している。
Q.米国での金利上昇について
A.米国で金利1%の上昇は10億円の利益(米国)、50億円の上昇(グループ全体)、15%の収益性改善に通じる。
Q.アナリストの意見がバラバラなことについて
A.さまざまな視点を提供する趣旨だが、アナリストとも話し合ってみる。
Q.中国人取締役とウイグル問題について
A.指名委員会の妥当との審議結果を踏まえたもの。
決議事項
・定款一部変更の件
・取締役11名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
株主総会雑感
資産運用においてはコア・サテライト戦略の重要性が強調されます。
コア(8割)となる資産は複利の効果を活かしながら投資信託やロボアドなどの長期・分散・積立投資を継続する一方、エンタメとしてドキドキハラハラするような株式投資などをサテライト(2割)として運用するものです。
マネックスグループとの付き合いは20年以上にもなりますが、まさにこのエンタメ漬けの関係だったと思います。
会長も、「ツールと情報を与えて後は顧客にお任せというのはいかがなものか?」とおっしゃっていました。
今回、理念の中に
【生涯バランスシートの最良化】
という文言が入ったのは、これまでの金融エンタメ企業であることへの問題意識ゆえではないかと推察します。
「今頃、気づいたのか」
マネックスグループでは資産運用が実現できなかった、株主としての正直な気持ちです。
⑵ 2021年6月の株主総会
第17回定時株主総会 2021年6月26日(土)ベルサール東京日本橋
今年も晴れました。
あいにく今年は、他社の総会と競合したため最後しか参加できませんでした。
会場からの質問に対して丁寧に回答している様子が伺えました。
(終了15分前の)質疑応答
Q.暗号資産の今後についての展望は?
A.東インド会社(世界初の株式会社)の例を挙げ、新しいものやイノベーティブなものは最初は問題があることが多い。しかし、それを乗り越えていくことも大切。
Q.包括的業務提携をした新生銀行との今後の展開は?
A.新生銀行の顧客が得られる。今後は銀行の機能を付加していく。
Q.貸株についてもっと使いやすくならないか?
A.貸株はま当社が20年近く前に発明したサービス。難しい問題もあるが使いやすくしていきたい。
Q.STO市場についての見解は?
当社はSTO協会の理事でもあり、セキュリティ・トークン(デジタル証券)に関心をもって検討中である。
また、ブロックチェーン債を発行した実績もある。
STOにしっかりと取り組み、時価総額向上につなげたい。
決議事項
・定款一部変更の件
・取締役選任の件
について採決が行われ承認され、総会は閉会となりました。
⑶ 株主還元
配当
一株当たり年間12円の配当
総還元性向((配当金支払総額+自己株式取得総額)÷親会社の所有者に帰属する当期利益)は75%を目途とするそうです。
安定した配当政策は株主としても歓迎です。
株主優待
株数に応じたマネックスポイント
3 株主としてのコメント
⑴ アイデアがあることとそれを貫き通すことは別
毎年6月下旬の土曜日に行われるマネックスの 総会では、最先端の金融市場や金融商品等の動向について様々なアイデアが得られます。
今回も、セキュリティ・トークンについて知るきっかけを得ることが出来ました。
ただし、最先端のアイデアがあることとそれを実行し意味あることにつなげることは別です。
知らない<知っている<<出来る<<<習慣化している<<<<意味あることにつなげる
そんなイメージです。
具体例を挙げると、昨年の総会ではアクティビストファンドという商品を取り上げて、「今までは顧客に情報とツールを提供して手数料を頂き、あとは顧客自身におまかせというスタイルだったが、今後は、信託報酬の商品を育て顧客も会社もウイン・ウインの関係を目指す!」
と話されていました。
けれども、1年経って結局、暗号資産銘柄として手数料ビジネスに大きく依存したままというのが現状だと思います。
一方、信託報酬中心のビジネスを展開し、顧客と会社のウイン・ウインの関係を実現している会社もいます。
ロボアドバイザーNo1企業のウエルスナビです。
ちなみに、ウエルスナビの時価総額は上場後1年未満にもかかわらず約1,800億円(2021年7月22日時点)。
時価総額約1,700億円のマネックス・グループを超えています。
残念ながら、信託報酬による顧客と会社のウイン・ウインというビジネスモデルの正しさは、マネックス証券ではなくウエルスナビによって実証されてしまいました。
もっと、厳しいことを言えば今年の1月にコインチェックで、4月にマネックス証券でそれぞれシステム障害が生じています。
このことは、新しいアイデアを実行に移すどころか、恒常業務についてもしっかりと実行していく力が会社に備わっていないことを意味しています。
マネックス・グループの実行力不足、現場の疲弊などいろいろ気になる点はありますが、
”言うは易く行うは難し”
の大切さを今年も総会会場を後にする際に感じました。
⑵ 女性社長について
清明社長が2021年6月の総会で取締役にも選出されました。
おめでとうございます。
昨年の総会で、初めてお見掛けした時は会長にメッセージを届ける女性事務員かと勘違いしておりました(すみません)。
趣味がジョギングや登山、そしてお酒も強いということで共通の趣味をお持ちのこともあり、個人的には好印象です。
4 まとめ
マネックスグループについて述べてきました。
株主として顧客として20年を超える付き合いでしたが、もっと早くコア・サテライト戦略を学び、当社が金融エンタメ企業であることを認識すべきだったと後悔しています。
今更、「生涯バランスシートの最適化」と言われても困ってしまいます。
ただし、マネックスでS&P500、コインチェクでビットコインの積立を継続しつつ、当社の行末だけはしっかりと見届けるつもりです。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
#投資 #株式 #株主総会 #資産形成 #資産運用 #マネックス #コインチェック #コア・サテライト戦略 #生涯バランスシート