初投稿:2021.6.2、更新日:2022.1.18、2022.5.29、2022.12.9、2023.5.
こんにちは!
この記事は、イオン【8267】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
2022年11月の株主懇談会のライブ配信を視聴した内容を追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・株主懇談会で感じたイオンへの不安
・長期投資の効果
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【目次】
1 イオンについて
⑴ 会社概要
皆さんよくご存じの総合スーパーで有名なイオンです。
小売業に区分されますが、M&Aで成長し金融や不動産など業種が多岐にわたります。
⑵ 株主になったきっかけ
イオンで買い物をすることが多かったことから株主優待を目当てに10年以上前に100株購入しました。
⑶ 2023年2月期の営業分析
収益性
・売上高営業総利益率:36%
・売上高総利益率:29%
・売上高営業利益率:9%
イオンは小売事業に加えて総合金融事業も手掛けています。
小売としての粗利率は29%です。
前期に比べて改善している点が評価できます。
また、総合金融事業も含めると粗利率は36%に向上しており、高収益と考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):103%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):16%
前期と同水準の数値です。
金融事業としての面を考えると大丈夫なのかもしれませんが、短期的にも中・長期的にも懸念が残る財務です。
効率性
・有形固定資産回転率:2.41
ほぼ前期と同じです。
有形固定資産については大きな投資も売却もなかったと考えます。
⑷ 2022年2月期の経営分析
業績については増収・増益でした。
収益性
・売上高総利益率:28%
・売上高営業利益率:8%
業績が芳しくなかった2021年2月期からは回復基調にあると思います。
コロナ禍が収まり続ければ収益性はさらに高まると予想します。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):102%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):16%
短期的及び中・長期的な安全性については懸念が残る数値です。
ただし、昨年までに比べて著しい変化が有ったわけではないことと、金融業も営んでいることを考え合わせると、事業全体の及ぼす影響は大きくないと判断します。
効率性
・有形固定資産回転率:2.45
数値としては昨年からは大きな変化はありません。
有形固定資産については金額そのものが上昇していることもあり、売上が増えたとはいえ、効率的な経営とはいえない水準と考えます。
なお、有形固定の内訳は「建物」が約96億円、「土地」が40億円等となっています。
⑸ 2021年2月期までの経営分析
招集通知の連結計算書類をもとに簡単な経営分析をしてみます。
イオンは小売業でありつつも、イオン銀行を抱えていることから銀行業としての特性もあり、そのことが分析する点でのポイントとなります。
流動資産の中で、「現金及び預金」(約1.2兆円)より、「受取手形及び売掛金」(約1.6兆円)の科目が大きいことは意外でした。
というのも、小売業であれば、現金多めが”ふつう”と予想していたからです。
おそらくイオンカードによる売上債権が多いからだと思います。
それ以上に、流動資産で興味を引いたのは、一番金額の大きな科目が「銀行業における貸出金」(約2.3兆円)です。
棚卸資産については、約0.54兆円と在庫が巨額であることは小売業でとしての特色が表れています。
収益性
小売業の売上総利益率は30~25%と言われていますが、イオンの場合27%であることから標準的と言えます。
特筆すべきは、FC加盟店からのロイヤルティ(加盟料)収入やイオン銀行からの収益が併せて1.1兆円あるということです。
直営店からの売上総利益が約2兆円強であることを考えても、本業以外で稼ぐ力の大きさが伺えます。
また、
売上高営業利益率:2021年2月期:7%
2020年2月期:10%
収益性が落ちています。
安全性
安全性については、流動比率200%以上、当座比率100%以上という安全性についての基準値を割っています。
特に、自己資本比率については17%であり財務基盤は良いとは言えません。
ネット証券でイオンのファンダメンタルズの分析を見ても安全性は極めて低いスコア。
けれども、流動負債における金額の一番大きな項目が「銀行業における預金」で3.7兆円、流動資産の「現金及び預金」も1.2兆円であることからイオン銀行の利用者からの大量の現金を保有していることが大きな特徴と言えます。
効率性
売上債権回転率の小売業の平均が12回に比べるとイオンの4.7回は見劣りがします。
棚卸期間回転率は小売業平均とほぼ同じ14.0回。
有形固定資産回転率も業界平均の5.7回に対してイオンは半分以下の2.5回。
効率的な経営に関してはイオンは業界平均達していないと言えそうです。
2 株主総会等
⑴ 株主懇談会
2022年11月29日(火) 1400〜1600 ハイブリッド形式
オンラインで視聴しました。
経営陣についてちょっと不安になり途中で視聴をやめてしまいました。
概要は以下の通りです。
主なポイント
・2年ぶりの懇談会(ハイブリッド形式)による意見交換
・社長による中期経営計画の説明
・節約志向(価格訴求)vsアフターコロナの消費の盛り上がり(新価値創造)
・社長の後に地域の取組について説明した役員は原稿棒読みで呆然
質疑応答
【事前の質問】
Q.円安の影響について
A.円安により物価高となりコストプッシュ型が予想される。
しかし、商品の豊富さや物流の大きさ等、イオンのスケールが活かせる点でチャンスとも捉えている。
Q.チャイナリスクについて
A.中国は世界最大の市場?であり、中国のお客様も大切にしていく。
Q.イオンラウンジの再開について
A.2001年の対象者は1万5千人、2022年は88万人でこの間、60倍となった。
引き続き、検討を続ける。
Q.イオン1%クラブについて
A.ビデオで活動を紹介するのでご理解いただきたい。
【会場からの質問】
Q.冷凍食品よりフリーズドライの拡充について
A.コストや技術的な課題を抱えているが利便性が高い商品であり拡充に努める。
Q.電子レンジの表示について
A.分かりやすさを追求する。
Q.トップバリュー製品のメリット
A.自社のニーズに応える商品であり無駄がなく、物流・保管コストをカットできるメリットがある。
Q.OKスーパーがイオンを草刈場にしているのでは?
A.OKスーパーが近傍に誕生して共存している状態である。
Q.スマホアプリが使いずらい(複数の下請けゆえの一気通貫となってない問題)
A.セクショナリズム防止に努める。
今後はiAEONアプリを中心にやっていく。
Q.オーナーズカードが利用できないグループ会社について(カスミ等)
A.適時対応していく。
Q.海外の事業展開について
A.ベトナム及びカンボジアの事業は堅調であり利益率は日本以上。
特にカンボジアはコンペティターがない。
Q.品川シーサイドで実施されていた早朝コミュニケーションの取組中止について
A.活動については適時見直しを実施している。
株主としての雑感
下記の点で経営陣の資質に疑問を感じました。
・地域の活動について原稿棒読みの役員で大丈夫なのか?
・社長は世界最大のマーケットと発言したが、本当か?
GDPの8割が個人消費であるアメリカや2023年に人口が世界一になるインドについてはどう考えているのか?
・イオン1%クラブは”グレタさん”を量産する集団なのか?
長年イオンの株主をしていますが、こんなにイオンに不安を感じたのは初めてです。
すぐにどうこうなるということはないと思いますが、長期的には懸念を感じます。
特に、中国に執着する理由が理解できません。
株主懇親会でイオンの”闇”を垣間見た気がします。
⑵ 第97期定時株主総会 2022年5月25日(水) イオンタワー別棟
オンラインにて参加しました。
事前の登録による会場参加とネット経由での参加のハイブリッド方式。
総会時間は約1時間45分で、ネット参加者は385名だったそうです。
●会長:事業全般の説明・議案の上程
●監査:監査報告
●社外取締役:取締役会の状況報告、ガバナンス強化、経営のダッシュボード化
●ビデオ:事業報告
●社長:中期経営計画の概要説明
多少、冗長さも感じましたが、内容の濃い話が延々と続きました。
主な質疑応答
【事前の質問】
Q.イオンワンパーセントクラブを受益者、みずほ銀行を受託者とするスキームについて
A.確実な管理、透明性確保の観点からスキームを構築し、過去の実績からみずほ信託銀行を選択した。
Q.株価下落について
A.株価は需給、金利、為替等に左右されるが計画未達の影響が大きいと認識。前期は増収増益となったので今後は回復するものと考える。
Q.ウクライナとロシアのリスクについて
A.店舗を展開していないが、物流(輸送費)と原材料費の上昇の影響が見込まれる。これに対してはコスト削減を徹底させる。
Q.チャイナリスクについて
A.中国固有のリスクについては認識している。そもそもカントリーリスクはあらゆる国にある。中国に進出して30年、暴動やゼロコロナなど様々な事案を経験してきた。
Q.商品の値上げについて
A.安易な値上げのないように努める。
Q.ネットスーパーが盛んになった場合の店舗営業について
A.オンとオフがシームレスにつながるよう両方とも経営を継続する
【会場からの質問】
Q.ワンパーセントクラブのスキームについて
A.これまでの財団運営の実績と財源の安定化を優先してこのような仕組みを構築した。
Q.ディスカウントブランドの乱立について
A.ベストプライス、ザ・ビッグ、ビッグエイト等は差別化のためカテゴライズを進めている。
Q.マスクを着用しなかったことで不快感を持った株主からのクレームについて
A.しっかりと調査を行った上で、対策を講じる。
【ネットからの質問】
Q.エネルギー価格高騰の影響について
A.電気料金だけでも1800億円を要しており、省エネや太陽光パネルの設置等で対応している。
Q.増配について
A.配当性向30%を基本としており、増配は利益成長次第。
Q.イオンラウンジの再開について
A.コロナ対策に加え、80万人の株主の利用を考え検討を継続している。
決議事項
●定款一部変更の件
●取締役7名選任の件
●公益財団法人イオンワンパーセントクラブの社会貢献活動支援を目標値した第三者割当による自己株式処分の件
拍手を持って賛成・可決されました。
⑶ 2021年5月26日(水) オンライン株主総会
・赤字決算について陳謝
・事業報告のビデオ
・吉田社長からの5つの経営方針説明
・議案の説明。とりわけ買収防衛策については3年ごと見直しをしており、TOBが実施された際に、株主に正しい判断をしていただくために必要な時間と情報を確保することが趣旨。
などが実施されたのち質疑応答に移りました。
主な質疑応答
Q.店舗の込み具合が分かるようにしてほしい。
A.アプリ等実施済み。
Q.イオンラウンジの再会は?
A.コロナ禍終息後に実施予定。
Q.クーポンやアプリが多すぎる。
A.おっしゃる通り。真摯に受け止め改善を継続する。
Q.女性役員が少ない。
A.管理職の27%が女性である。ダイバーシティ経営を心掛ける。
Q.おなかに手をのせて挨拶をするのはおかしいのではないか?
A.承知した。一部、そのような挨拶のマニュアルが残っているので改善を進める。
Q.ジェノサイド関連でウイグル商品を扱うユニクロが米国から輸入差し止め処分となったが、イオンは大丈夫か?
A.(顔を引きつらせながら)そのような商品はない。また、オーストラリアの研究所が公表したジェノサイドに関わる企業の中にはイオンは入っていない。
Q.イオンにおける証券部門の立ち上げは?
A.イオンフィナンシャルの中で検討中。
⑷ 2020年5月22日(金) オンライン株主総会
初めてオンライン株主総会に参加しました。
オンライン総会と言っても、ZOOMを使った双方向というのではなく、YouTubeで総会の様子をみるという方式です。
株主からの事前の質問の大多数を占めたのが、マスク不足に関すもので、これに対しては、強靭なサプライチェーンを再構築されるとのこと。
主な質疑応答
Q.ウソをつく中国で展開するイオンが没収されるリスクについてどう考えるか?
A.武漢の例を挙げて、社員が頑張っている。米国リスクもある(米国からは撤退)。
覚悟をもって対応していく(最も歯切れの悪い回答)。
Q.国産ブランドに力を入れることはしないのか?
A.個々の商品ごとに対応する。
Q.イオンラウンジの再会はいつか?
A.ウイズコロナを見据えて、新しい形でオープンさせる。
3 株主還元
⑴ 配当
2020年2月期:中間18円、期末18円の36円(2円増配)。
2021年2月期:36円
2022年2月期:36円
連結配当性向30%が目標です。
⑵ 株主優待等
株主優待カード(イオンオーナーズカード)にとる保有株に応じた返金率でのキャッシュバック。
また、1000株以上の株主に対する長期保有制度もあります。
100株以上:3%
500株以上:4%
1000株以上:5%
3000株以上:7%
⑶ 株主総会のお土産
最近は無くなりましたが、以前は、当日イオンで使える割引券のお土産がありました。
4 株主としてのコメント
⑴ チャイナリスクについて
イオンの株主になったのも10年以上も前で、株価も買値の3倍弱となっています。
自宅から歩いて5分の場所にイオンがあり、もはや切っても切れない関係。
ただし、チャイナリスクに対する懸念が深まりました。
米中対立が長期化する中、米国は国家にも企業にも米中どちらにつくのか踏み絵を踏ませています。
・ウイグル人に対するジェノサイドを理由に米国への輸入が差し止めとなったユニクロ
・テンセント(中国)からの出資により日米両政府から監視企業となった楽天
米国の この2社に対するアプローチは始まったばかり。
今後、より厳しくなる可能性もあります。
さらに、他の企業も対象になる可能性もあります。
現状のイオンは明らかに”中国志向”。
その理由は岡田会長の言葉を借りれば、過去の米国進出と撤退の経験に基づく”米国リスク”。
けれども、米中対立の現在、日米関係は劇的に変化しています。
岡田屋の家訓に
「大黒柱に車をつけよ!」
というものがあり、環境の変化に対応することの重要性が言い伝えられています。
ダイバシティ経営というものは女性を採用すれば済むというような単純な話ではありません。
三菱電機では経済安全保障担当という役員を儲けたと報じられています。
米国とのビジネスや経済安保に知見のある役員の採用を通じて、会社の持続的発展に取り組むことを切に願っています。
⑵ 長期投資の効果
過去2回の決算発表時に業績が芳しくないことなどから株価が下落しています。
これに対してあまり問題視していません。
理由は下記のとおりです。
・赤字はコロナ禍によるスーパーの低迷によるもので原因が明らかになっている。
・イオンはスーパーのみならず、不動産、金融、薬局等の多角化によって利益を確保している。
・ここ数年間で売上高は8兆円はほぼ維持している依然として巨大企業である。
・個人的に長期の株主であり”もとは引いている”
長期投資の効果について補足します。
イオンの株式を約10年前に約10万円で100株購入しました。
株主優待でオーナーズカード(3%キャッシュバック)を利用しています。
近所にイオンがありよく使うこともあり、年間で80万円程度は買い物をします。
そうすると
80万円×3%=2万4千円
となります。
すでに10年利用しているので約24万円程度のキャッシュバックを受けています。
しかもこれに配当が加わります。
株価は下落していますが、評価益は10万円以上あります。
長期投資の効果を実感しています。
株式投資はとかく短期的な値動きに振り回されがちです。
けれども、10年単位の長期な発想も有効な場合があることは覚えておくべきだと考えます。
5 まとめ
イオンについて述べてきました。
消費者として株主として長い付き合いの会社です。
株主総会で、会長、社外取締役、社長等がそれぞれの想いをしっかりと語られる様子からガバナンスのしっかりとした会社だと感じています(指名委員会等設置会社)。
ただし、2022年秋の株主懇談会では経営陣に対する不安を感じました。
先入観を持たずに、経営状況を注視していこうと思います。
お読み頂き、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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