初投稿:2021.4.29、更新日:2022.3.14
こんにちは!
この記事は、アルベルト【3906】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年3月に株主総会招集通知を頂いたので事業報告等を分析したコメントを追記し、記事を更新しています(更新箇所は青字です)。
・AIビジネス成長分野、データサイエンティストとカタリスト戦略
・上場後6年間で2度の不祥事
【目次】
【株主総会が行われた住友不動産新宿グランドタワー(ベルサール新宿グランド)】
1 アルベルトについて
⑴ 会社概要
アルベルトは流行りのAI企業、データ分析の会社です。
名前は、アルベルト・アインシュタイン博士にちなんでいて、
既成概念にとらわれない革新的な理論とアイディアで世界をよりよくしていきたいたい
という想いが込められているそうです。
上場7年目、総資産450億円を用いて330億円を売上げ、時価総額240億という会社です。
特徴としては、トヨタ、東京海上日動火災、KDDI、三井住友フィナンシャルグループ、マクニカ、日本ユニシスなど、各産業のリーディングカンパニーを顧客に持つ点。
特に、トヨタと資本業務提携しており、第2位の大株主であることが目を引きます。
多くのデータサイエンティスト(2020年9月時点では250名)を抱える強みが評価された結果だと考えます。
なお、筆頭株主はSBIでありその株主通信によるとM&Aをした会社の中にアルベルトが含まれていました。
MISSION
「データサイエンスで未来を紡ぐWe are tha CATALYST.」
3つの事業
・AI実装支援事業(プロジェクト型サービス)
・データサイエンティスト育成支援j事業
・AIプロダクト事業
⑵ 株主となったきっかけ
2018年12月25日(権利付き最終日)に購入しました。
アルベルトのチャートを俯瞰してみると、低迷していた株価が一気に1万5千円まで急騰しました。
その状況を、
「AI銘柄だからそのまま長期的に上昇トレンドになるだろう」
と判断。
1万5千円が1万2千円を割り込んだところで
・押目が来た
・NISA口座枠が使える
と判断して購入。
しばらくは、同水準をもみ合っていましたが、その後は下落トレンド。
典型的な高値つかみ。
現在の株価は買値の半分程度で推移。
あらためて損切りの大切さを学びました。
⑶ 経営分析(2021年12月期)
前期から一変し、増収増益です。
株主総会招集通知書の連結計算書類をもとに経営分析を行いました。
収益性
・売上高総利益率:59%
・売上高営業利益率:13%
高収益なビジネスであることが分かります。
なお、これまでとの比較で売上高総利益率が下がる一方で、売上高営業利益率が上昇傾向にあります。
最終的な利益が増加することは望ましいと考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):526%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):83%
短期的にも中・長期的にも安全性に問題は見出せません。
逆に考えると、株主へ配当をしていないことで安全性が確保されているともいうことができそうです。
効率性
・有形固定資産回転率:18.49
IT企業らしく、土地・建物等にはあまり資金を投じてなく、比較的効率的な経営がなされていると考えます。
ただし、毎年有形固定資産が上昇しています。
招集通知の設備投資の状況では、先進技術研究用の機材購入等(28,180千円)とあります。
具体的にどんなハイテク機器なのか気になります。
⑷ 経営分析(2020年12月期)
増収減益
収益性
売上高総利益率は62%
売上高営業利益率は9%
粗利率の良さが際立っています。
販管費の多くは、大学院卒のデータサイエンティストを250名も抱えていることによる人件費と推察します。
安全性
流動比率は888%
自己資本比率は90%
なかなかお目にかかれない数値です。
強固な財務体質と言っていいと思います。
2 株主総会等
⑴ 株主総会
第16回定時株主総会 2021年3月26日(金)住友不動産新宿グランドタワー
今回は都合がつかず、欠席しました。
過去に参加した際、松本社長が自信をもって経営に臨んでいる姿が印象的でした。
いろいろありましたが、さらなる奮闘を期待しています。
アルベルトは、トヨタが大株主となったことで株式の希薄化が生じていると言われています。
株数が増えることにより一株当たりの利益が低下します。
それを嫌って売却する株主がいたことも株価低迷の一因と考えられます。
そして今回の決議事項の中で
定款一部変更の件があり、発行可能株式総数を現在の
現: 9,500,000株
新:17,810,000株
となりました。
変更の理由として、流動性の向上、将来の事業拡大に備えた機動的な資本政策の遂行を可能にするためとあります。
事業拡大には寄与しますが、株数がさらに増えることの株主に与える影響はどうなのでしょうか?
懸念材料です。
⑵ 株主還元
配当
なし
株主優待等
なし
【株主総会会場のロビーにて】
3 株主としてのコメント
⑴ カタリスト戦略
カタリストというのは触媒の意味。
トヨタ、東京海上、KDDI、三井住友などの大手企業の間のデータ分析を通じて新たな価値を提供しつつ非連続的な成長を遂げるという戦略。
例えば、車に関する膨大な事故の情報(ビックデータ)を解析することによって新たな保険商品が生まれるかもしれないという説明を聞いたことがあります。
Wi-Fiアクセスポイントから最寄りのおすすめレストランが紹介されるなどのサービスも魅力的です。
産業間のAI・データシェアリングによるAIネットワーク化社会の実現を目指す戦略に注目しています。
⑵ 第4次産業革命
第4次産業革命(知識集約産業)が進行中と言われています。
①IOT(モノのインターネット)によるさまざまな情報のインプット
②ビックデータを活用した一次情報の蓄積
③AIを駆使した新たな価値の創造
④RPA(ロボット)を使った効率的なアウトプット
から構成されていると言われています。
アルベルトはその第4次産業革命に関わる企業であり、日本の繁栄にも貢献しうる位置づけにあります。
また、コロナ禍においてはデータサイエンティスト7名が厚労省に派遣され、人同士の接触頻度の分析を行う任務を達成するなどの実績もあります。
アルベルトやAI関連銘柄の投資における適切な判断をするためにも、そして現在進行形の第4次産業革命のトレンドをつかむためにも、引き続き、アルベルトのことを深掘りしていきたいと思います。
⑶ 不祥事について
過去に、創業メンバーによるインサイダー取引、現社長による不適切会計などの不祥事を引き起こしています。
その結果、2020年12月の減益の理由は特別損失として、外部調査委員会による調査費(約1億7千万円)の計上。
そして外部調査委員会による調査とは、不適切な売り上げ計上が指摘されました。
この結果、再発防止として
①再発防止策の実効性を担保する体制
②CFOの役割の明確化及び充実化
③教育・研修を通じた会計に係る知識・コンプライアンス意識の強化
④適切な会計処理に関するルールの整備及びコミュニケーション環境の改善
⑤不適切な会計処理に関与した役職員に対する適正に処分
に取り組むとのことでした。
特に、⑤に関しては、松本社長が報酬の減額及び自主返納の処分を受けています。
また、今回の件で独立監査人が変わっています。
さらに、招集通知によると”期ずれ”もあったとのことです。
日本M&Aセンター、アウトソーシングを含め、”期ずれ”の問題はどの企業でも起こりうる投資家にとっては頭の痛い問題だと感じています。
⑷ 気になる点
一般に株価が下落する要因は3つあると言われています。
業績低迷、不祥事、将来の成長期待の剥落
です。
アルベルトの場合、残念ながらインサイダー取引と不適切な会計の不祥事を引き起こしています。
では、業績についてはどうでしょうか。
EPS(一株あたりの当期純利益)の推移は下記の通りです。
2018年12月期:88.33円
2019年12月期:54.88円
2020年12月期:33.06円
2021年12月期:79.60円
直近4年間では、右肩下がりを続けようやく前期に回復基調となっています。
会社がいう「非連続成長の実現」どころか、「既存事業のリニア成長」すら実現できていません。
強いていうならば、前社長から今の社長に交代した時に株価を大きく上昇しただけです。
でも、その時からおおよそ5年が経過しました。
経営環境の変化のスピードは早いです。
「カタリスト」も悪くはありませんが、この5年間の”成長”を鑑みるに賞味期限切れのように考えます。
そう考えると、将来の成長期待の剥落の懸念もあります。
PBRが6.36倍ということは、会社に対するのれん、ブランド価値、無形の価値に対して市場や投資家の評価が高いことを意味しています。
そして
PBR=PER×ROE
で表され長期的な視点たるPERは約54、短期的な視点たるROEは約11%
に分解されます。
長期的な評価が高い一方、短期的な評価としてはイマイチです。
招集通知にはAIシステムの実装スケジュールの遅延と追加作業による”納期遅延”が報告されています。
将来の夢を語るのは結構ですが、現実を直視し、しっかりと契約を履行しROEを高める努力が伴わないと高PBRを維持するのは難しいのではないでしょうか。
4 まとめ
アルベルトについて述べてきました。
AI、データサイエンティストなどのフィールドの良さがあり、SBI傘下でトヨタや東京海上日動火災保険などの大企業との取引先を抱える強みがあります。
その一方で、2度の不祥事、EPSの低さ、納期遅延など懸念材料も少なくなく、無配のため下落トレンドに歯止めが掛かりにくい”弱み”もあります。
他のAI銘柄同様に難しい株なので、10年単位での長期投資、または、値動きを果敢に捉えるトレーディングが良いのではないかと感じています。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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