初投稿:2021.1.10、更新日:2022.1.8、2022.12.25
こんにちは!
この記事は、M&Aキャピタルパートナーズ(株)に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年12月の株主総会の内容等を追記し記事をアップデートしています(青字が更新箇所です)。
【目次】
【株主総会で頂いた社長の著書】
1 M&Aキャピタルパートナーズ【6080】について
⑴ 会社概要
業界2位のM&Aの仲介会社です。
業績は好調で急成長中。
以前は、ライオンのCMや社員の高額年俸報道などから”派手な印象”がありました。
けれども、よく調べてみると意外と堅実な要素の多い会社であることが分かってきました。
売上高178億円、総資産382億円、時価総額136億円の事業規模。
PBRは4.24倍でありそれほど高くはありません。
⑵ M&A関連銘柄
以下は、M&A関連会社の一覧です。
1 日本M&Aセンター(2127)
業界ナンバーワン、質の高いサービス
経営トップ:営業職、世代交代済み
2 M&Aキャピタルパートナーズ(6080)
業界2位、ライオンのCM、社員の高額報酬で有名
経営トップ:理系、大手ハウスメーカーの設計・営業業務を経て創業
3 ストライク(6196)
業界3位、ネットを駆使した経営
経営トップ:公認会計士
売却専門 欧米に強み
経営トップ:公認会計士、大学教授歴任、著書多数
5 明南M&A(7076)
名古屋拠点、医療業界に強み
6 オンデック(7360)
大阪拠点、事業承継に強み
経営トップ:野球好き、100年続く会社を目指す
⑶ 株主となったきっかけ
株主優待目当ての投資としていた10年近く前に、高額のクオカード目当てで購入しました。
その際、家族名義のNISA口座で長期間保有していたため、自分自身は株主総会に出席することはこれまでありませんでした。
しかし最近、自分自身が特定口座で保有することとなり、2020年に初めて株主総会に出席。
社長のビジョンに共感したので長期投資を考えています。
⑷ 2022年9月期の経営分析
収益性
●売上高総利益率:67%
●売上高営業利益率:51%
非常に高収益なビジネスモデルと考えます。
8年連続平均給与トップ(現在は2688万円)という人件費を支払ってもなお、営業利益率が50%を超えるというのは大したものだと思います。
安全性
●流動比率(200%以上が望ましい):615%
●自己資本比率(30%以上が望ましい):84%
財務については、短期的にも中・長期的にも問題ありません。
むしろ、株主からの指摘があったように資金効率という点でキャッシュ・リッチすぎる面もあります。
社長は、M&Aのためと行っていますが、レコフのグループ化の実績からその説明には説得力があります。
ちなみに、日本M&Aセンターも同じく膨大な剰余金を抱えておりそれはM&Aのためと言っていますが、そのような実績を見つけられませんでした。
効率性
●有形固定資産回転率:151.52
数値の高さから売上高に比べて有形固定資産への投資は少なく、効率的な経営がなされていると考えます。
ただし、東京ミッドタウン八重洲等へのオフィスの移転(2.5倍へ拡充)の経費が来期決算にどう反映されるのか注目しています。
⑸ 2021年9月期の経営分析
2021年9月期の連結計算書類より
収益性
●売上高総利益率:64%
●売上高営業利益(10%以上が優良株):43%
ビジネスモデルを含め高収益体質であることがわかります。
安全性
●流動比率(200%以上が望ましい):591%
●自己資本比率(30%以上が望ましい):84%
短期及び中・長期的にも財務基盤が盤石であることが明らかです。
効率性
●有形固定資産回転率:65.71
東京駅八重洲駅前や麹町等に事務所があるようですが、不動産等にかかるコストは売上に比べて小さく効率的な経営がなされていると考えます。
2 株主総会等
⑴ 2022年12月の株主総会
第17回定時株主総会 2022年12月23日(金) サピアタワー
ハイブリッド総会でしたのでライブ配信を視聴しました。
社長から事業報告、業績予想、会社説明、将来展望などの力強い説明がありました。
主なポイント
・増収(9年間で18倍の売上)増益
・年間成長率の目標は社内25%、社外20%
・9年間で時価総額は9倍
・コンサルタント数は6名減少だが、今後は増やす予定
・手数料がレーマン方式なので1〜5%と他社の1/3程度
・日本M&Aを抜いて日本一を目指す!
・その後は世界的な投資銀行を目指す!
・毎週月曜日の朝は全員で経営理念を唱和
・質の高いチームワークを重視するため営業拠点は東京に集中
主な質疑応答
Q.チャイナリスクについて
A.現在の海外展開はベトナムがあるが中国との関係は薄い。
今後も、米国等を見据えた海外展開を考えており、中国の優先順位は高くない。
Q.将来目指している投資銀行について
A.ゴールドマンサックスのように法人向けの証券会社サービスを目指している。
現在はドメスティックな活動であり、クロスボーダーのビジネスも未実施であるが、より広くビジネスを広めるという趣旨である。
Q.利益剰余金261億円について
A.過去にレコフをグループ化した時は約30億円を要した(剰余金は約46億円)。
その実績を踏まえて、海外展開をする際のM&Aの資金と認識している。
Q.株主還元について
A.成長を優先させているので無配だが、配当について議論は重ねている。
自社株買いについては、社長が45%を持っていることを踏まえると容易ではない。
決議事項
●定款一部変更の件
●取締役6名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
なお、新役員の挨拶で、
「人生を賭してがんばります!」
という力強い自己紹介が印象的でした。
株主総会雑感
社長の説明で一番印象に残っているのは「月曜日の朝の経営理念の唱和」です。
理念経営を実践していることを初めて知りました。
理念経営の良さは、全員が理念を共有しているため、マイクロマネジメントや細かい規則類が不要ということです(『ビジョナリーカンパニー』より)。
そのことが、少数精鋭の社員による生産性の高い仕事に通じていると感じました。
⑵ 2021年12月の株主総会
第16回定時株主総会 2021年12月22日(木) サピアタワー
当日は、別の会社の総会に出席していたため録画を視聴しました。
なお、ライブ配信も実施。
報告事項の中で、業績が絶好調であることを強調していました。
質疑応答
Q.労務管理はどのようになっているのか?
A .大部屋(社長室も無い)によってオープンな環境で仕事ができるようになっている。
併せて、外部の弁護士等への相談体制や産業医と連携した社員一人一人のメンタルを含む健康管理とタイムリーな休暇取得の奨励に努めている。
決議事項
・取締役5名専任の件
・取締役の報酬限度額改定の件
滞りなく可決されました。
⑶ 2020年12月の株主総会
第15回定時株主総会2020年12月18日(金) サピアタワー
株主総会参加は初めて。
出席者は十数人ほど。
決議事項は取締役と監査役選任の件の2議案であり、本総会をもって可決。
社長からは、減収減益となったものの、受注残を表す前受け金残高が過去最高となったことやコロナ禍の影響を最小限に抑えたことを根拠として、明るい見通しが示されました。
インセンティブ制度の説明として、給与ではなく業績に連動した賞与を重視しているとありました。高額年俸の理由が何となく分かったような気になります。
また、新株予約権についても行使できるようになるのは55歳からと言及されており、株主と社員がWIN-WINの関係になることをねらったものと思いました。
さらに、訴訟が多いこの業界にあって、今まで1件の訴訟もないことの”強み”が強調されてており、全体としては好印象です。
主な質疑応答
Q.採用状況は?
A.採用スピードは保守的で25%だが、内定辞退がいないため妥当と考える。
Q.会社がまだ小さかった時に最も苦労したことは?
A.顧客からの信用をいかにして獲得するかが最優先事項だった。
Q.手元キャッシュが2割増加してるが使い道は?
A.M&Aを検討中である。
Q.外部取締役1000人不足と報じられているが御社は大丈夫か?
A.担当取締から”問題ない”(外部取締役の発言なし)
Q.同業他社が増収増益の中、何故、減収減益か?
A.少数精鋭で業務をこなしているため生産性は高いが、ブレも大きい。直接的には期ずれの影響だが、背景には業績の平準化という課題がある。
株主総会雑感
理系だからというわけではありませんが、社長の話は丁寧で、根拠をもって論理的に話されているように感じました。
どちらかと言えば、同業他社の社長の回答がキーワード(時には難しい専門用語)を中心とした直観的なものとは対照的をなすものでした。
また、出席した株主が少人数だったことから総会終了時に拍手はありませんでしたが、新取締役の紹介時に拍手があったことは良かったと思います。
⑷ 株主還元
配当
なし
成長企業なので仕方ないと思います。
株主優待
クオカード3000円を今年も頂きました。
ありがたいです。
株主総会のお土産(社長の著書)
2019年と2021年の株主総会のお土産として社長の著書をいただいています。
M&Aだけでなく、中小企業並びに中小企業経営者とその親族について多く知ることのできる良書だと感じました。
【株主優待 クオカード3000円】
3 株主としてのコメント
⑴ 日本M&AセンターHDとの比較
共通点
共通点としては下記3点が挙げられると思います。
・M&A仲介会社として急成長中
・世界的な起業を目指している
・社長等が著書を出版している
相違点
世界を目指すという共通点がありますがそのアプローチには差異があります。
■手数料
センター:比較的高額、着手金あり
キャピタル:比較的定額、着手金なし
■リーダーシップ
センター:強い
社長は毎週、全社員に対してA4原稿用紙10枚分相当のメールを配信、”合宿”も実施
キャピタル:緩やか
社長室なし、社長自らM&A業務を担当
■グループ企業の構造
センター:自前主義で会社を3事業に分割し、ホールディングカンパニーへ
キャピタル:子会社4社とともに5社のグループで構成
ちなみに、キャピタルの子会社にはM&Aの大型案件に強くアドバイザリーも行うレコフ、幅広いユーザーにデータ提供を行うレコフデータ、企業再生に強いみらいエフピーなどがあります。
■不祥事等
センター:不適切な会計が発覚、訴訟の有無は?
キャピタル:訴訟がない(2020年の総会時の社長説明より)
■総合
センター:社長の強力なリーダーシップのもと、高い手数料で多くのコンサルタントを動員して数多くの案件をこなすビジネスモデル。
キャピタル:社長の緩やかなリーダーシップのもと、少数精鋭で、難しいが大型の案件をまとめることで、社員に高額報酬を還元するビジネスモデル。
⑵ 業界2位から1位への可能性はあるのか?
業界2位から1位への可能性はあるのか?
訴訟が1件もない、「着手金+月額報酬+企業評価レポートの作成=ゼロ円」というのは時間とともに信用を蓄積し会社にとって大きな強みになると予想します。
その意味では、将来業界トップになることも考えられなくもありません。
ただし、そのためには大きな”節目”があると思います。
それは、M&Aキャピタルパートナーズの後継者問題。
いい意味で社長のトップダウンに負うところが大きい会社ですが、2020年の株主総会での役員の質疑応答から力量不足を感じました。
業界の地位云々以前に、ゴーイングコンサーンとして永続できる態勢確保への着手が必要です。
既に、日本M&Aセンターは創業者からの経営トップの交代がなされると同時に、役員人事でも、社内生え抜きの若手や女性、外国人がバランスよく登用されています。
組織力を総合的に発揮できるようになるかどうかがますます問われるようになるでしょう。
業界における価格競争、人材引き抜きなどは激しさを増しており、社長独力で対応できるものではありません。
社長のトップダウンと社員からのボトムアップのマッチングが会社の将来を大きく左右するように思われます。
【現在本社があるグラントウキョウノースタワーと建設中の東京ミッドタウン八重洲(2023年1月1日本社移転予定)】
4 まとめ
M&A業界や日本M&AセンターHDとの比較を踏まえて、M&Aキャピタルパートナーズについて述べてきました。
センターは業績、株価ともに安定した右肩上がりを続けてきました(不適切な会計事案までは)。
これに対して、キャピタルは”期ずれ”の影響で株価や業績も乱高下することが少なくありませんでした(前々期は減収減益)。
しかし、その誠実かつ無理のない不安定さが逆に長期的な安定につながる可能性も感じています。
引き続き、株主としてモニターをつづけます。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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