投稿日:2022.8.15、更新日:2023.7.10
こんにちは!
この記事は、博報堂DY【2433】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2023年6月の株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・続く不祥事、されど株主の質問は皆無
・分かりにくいビジョン、即効性を欠く戦略、中途採用に依存するオペレーション
【目次】
【赤坂BIZタワー】
1 博報堂DYについて
⑴ 会社概要
広告会社として電通に続いて国内2位。
売上高9900憶円、総資産1兆円、時価総額5619憶円の事業規模です。
PBRは1.46倍。
四季報ではメディア業種に区分され、時価総額順位は4/139社とのこと。
日経業界地図によると広告業界の国内市場規模は6兆円で、約1兆円づつを電通と博報堂DYHDが占めているそうです。
博報堂のDNA
●フィロソフィー
・生活者発想
・パートナー主義
●ビジョン
未来を発明する会社へ。
「センタードット」:起点、結節点
広告会社らしい理念ですが、当たり前といえば当たり前のことがかっこよく記されているだけのようにも感じます。
正直、分かりにくい。
これらの博報堂DNAがどの程度社員に浸透しているかがポイントと考えます。
セグメント
・博報堂
・大広
等
2014年に博報堂、大広、読売広告が経営統合されてホールディング会社となったようです。
横串機能強化をしているようですが、総務部門等の重複などまだまだ効率化の余地はありそうです。
⑵ 株主になったきっかけ
アフターコロナで広告業界が復活すると予想。
2022年の春に株主になりました。
信用売り残が若干多いのが特徴。
そのことが、株価の低迷にも通じているように思えます。
⑶ 2023年の経営分析
業績は増収減益です。
収益性
・売上高総利益率:41%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):6%
前期よりも収益性は低下しています。
事業報告では、中期的な成長を見据えた戦略費の投下や活動費の戻りによる費用の増加が挙げられていました。
具体的には人員が666名増加したことがその主な要因と推測します。
ただし、四季報では北米他の海外で赤字が続いているそうです。
ちょっと気になります。
安全性
・流動比率(100%以上が望ましい):120%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):38%
短期的な財務健全性については若干低下、中・長期の安全性はほとんど変化なしと考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:16.97
前期よりも低下しています。
情報通信関連投資を中心に約180億円の設備投資をしたことが影響していると推察します。
⑷ 2022年の経営分析
収益性
・売上高総利益率:43%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):8%
粗利がとても高いです。
その割に販管費が多く営業利益は少な目です。
営業利益率低迷の原因は販管費の多さ。
ただし、400名規模の中途採用がなされているとのことで成長のための一時的な投資と評価します。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):149%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):37%
財務については盤石とは言えませんが、直ちに問題となるれべるではなさそうです。
効率性
・有形固定資産回転率:24.11
比較的高い数値です。
投資した有形固定資産に着目すれば効率的な経営と言えそうです。
2 株主総会等
⑴ 2022年6月の株主総会
第20期定時株主総会 2023年6月29日(木) 東京プリンスホテル
ライブ配信を視聴しました。
19分で終了しました。
事業報告の中で、
・東京オリパラをめぐる業務の談合事件
が報告されています。
主な質疑応答
なし
決議事項
・剰余金処分の件
・取締役10名選任の件
・監査役2名選任の件
拍手を持って、承認・可決されました。
株主総会雑感
報告内容の薄さと株主からの質問がなかったことに驚きました。
しかも、不祥事が報告されているのに・・・。
そもそも、当社は社員お不祥事で億単位の損失計上が定期的に発生しています。
ある意味、恐るべし!
ガバナンスはどうなっているのでしょうか?
おそらく、会社としては指名委員会等設置会社であり厳正に監督していると答えると思います。
けれども、粉飾決算が行われた東芝もまた指名委員会等設置会社でした。
要は中身の問題。
株主のチェック機能も働かない会社であることから、ちょっと距離を置きたいと考えて全株売却しました。
⑵ 2022年6月の株主総会
第19期定時株主総会 2022年6月29日(水) 東京プリンスホテル
参加せず。
決議事項
・剰余金の処分の件
・定款一部変更の件
・取締役10名選任の件
・監査役2名選任の件
・監査役の報酬額改定の件
全て可決されたとの通知をいただいています。
⑶ 株主還元
配当
一株当たりの配当の推移は下記の通りです。
2023年3月期:32円
2022年3月期:32円
2021年3月期:30円
2020年3月期:30円
2019年3月期:28円
2018年3月期:26円
増配基調が続いていることは評価できます。
株主優待
なし
3 株主としてのコメント
⑴ 気に入っていること
中期経営計画の見直し
コロナ禍により経営陣は中期経営計画の見直しが必要と判断。
即実行する柔軟な対応は評価できます。
また、アフターコロナに向けて四季報では、「テレビ広告が底堅くネット広告は堅調」とのこと。
業界全体の回復基調も安心材料です。
人的戦力の拡充
四季報によると【大量採用】ということでエンジニアやデジタルマーケなど400人規模を中途採用とあります(同時にグループ内で早期退職制度も実施)。
併せてM&Aをした会社を中心に地方での事業を強化するとのこと。
大胆な方針展開は、厳しい環境を生き抜くために不可欠と考えます。
ただし、中途採用者の戦力化はそんなに簡単ではありません。
期待しつつも紆余曲折の覚悟も必要と考えます。
⑵ 気になっていること
株価の低迷
株価が低迷しています。
業界トップの電通と比べても見劣りします。
特に、当社のトップライン、EPS共に来期以降もコロナ前の水準には及んでいない。
会社はソウルドアウトの完全子会社化、博報堂テクノロジーズの設立でデジタル化への対応に取り組んでいるとしています。
でも、デジタル化促進という戦略だけでは足りないと考える投資家や市場が株価の低迷をもたらしているのではないでしょうか。
業績について即効性を欠く戦略に懸念を抱かざるを得ません。。
広告の会社なのに動画などのPRが少ない
企業理念たる博報堂DNAが分かりずらいだけでなく、ちょっと内向きな組織文化があるように感じます。
例えば、ホームページを見ても、株主総会や決算に関する動画による説明がありません。
広告会社でありながら重要なステークホルダーたる株主(個人投資家は26%以上で少なくない)に対して効果的なPRができていないと考えます。
そのことはビジョンレベルで課題を抱えていることを意味します。
4 まとめ
博報堂DYについて述べてきました。
ビジョンレベルでの博報堂DNAの分かりにくさ、戦略レベルで数年間はコロナ前を回復できない将来性の無さ、オペレーションレベルでの400名の中途採用への依存など、戦略の階層における課題を指摘しました。
”株主通信”では、2024年3月期までを戦略的投資フェーズと称しており成長が滞ることを公言しています。
今期は増収減益でしたが、将来増収に転じる可能性は高いと思われます。
ただし不祥事の多さと、ガバナンスの悪さによる自浄作用のなさ、株主のチェック不在などを考え売却しました。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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