投稿日:2022.6.11
こんにちは!
この記事は、Jフロントリテーリング【3086】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
・『我慢する社員はダメになる』 VS 指名委員会等設置会社
・長く株主をしていて感じたこと
【目次】
【銀座シックス】
1 Jフロントリテーリングについて
⑴ 会社概要
大丸や松坂屋の百貨店に加えパルコなどを有する企業グループ。
2月が決算月です。
総資産1.2兆円、売上高3300億円、時価総額3100億円の事業規模です。
PBRは0.78倍であり、投資家からの期待は高くありません。
基本理念
私たちは、時代の変化に即応した高質な商品・サービスを提供し、お客様の期待に応えるご満足の実現を目指します。
私たちは、公正で信頼される企業として、広く社会への貢献を通じてグループの発展を目指します。
グループビジョン
”くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”
セグメント
百貨店意外にもさまざまな事業を展開しています。
特に、ディベロッパー事業に力に強いことが特徴と思います。
●百貨店事業:大丸、松坂屋
●SC事業:パルコ
●ディベロッパー事業:「錦三丁目25番街区計画」
●決済・金融事業:カード事業、保険代理店事業
●その他:卸売業、人材派遣業
中期経営計画(2021〜2023)
●3つの重点戦略
・リアル×デジタル戦略
・プライムライフ戦略
・デベロッパー戦略
●経営構造改革
・ビジネスモデル改革によるコスト削減
・事業基盤の絞り込み
●経営基盤機能戦略
・財務戦略
・人財戦略
・IT戦略(守りのIT)
⑵ 株主になったきっかけ
地方都市に住んでいた時、東京出張のお土産を大丸東京店でよく買っていました。
東京に住むようになってからスーツなど、ますます大丸東京店を使うようになり優待欲しさから株主となりました。
NISA口座で約5年保有し、売却後、再度特定口座で株式を購入し現在に至っています。
⑶ 経営分析
コロナ禍の厳しい環境下で、増収増益そして増配は立派だと思います。
収益性
・売上高総利益率:45%
・売上高営業利益率:3%
粗利率の高いビジネスモデルです。
ただし、販管費が多く営業利益は低めです。
これが、将来の成長のための一時的な投資によるものか、構造的にコストがかかるのかを見極めることが大切だと考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):68%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):30%
短期的にも、中・長期的にも懸念される数値となっています。
不動産投資に注力し続けてきたことに加え、コロナ禍が加わった結果の安全性の低さだと考えます。
ただし、数年前の株主総会で財務面の懸念についての質問に対してはそれ程危惧べき水準ではないとの回答がありました。
今後も、安全性と成長性のバランスをとりながらの経営がなされると推測します。
効率性
・有形固定資産回転率:0.69
小売業というよりは、不動産業のような低い数値となっています。
巨額な不動産を有している一方で、売上高はそれに追いついていないと考えます。
また、非流動資産を見てみると、有形固定資産が4800億円、投資不動産が1900億円となっており、不動産に力を注いでいることが伺えます。
【株主優待】
2 株主総会等
⑴ 株主総会
第15期定時株主総会 2022年5月26日(木) ニューピアホール
ライブ配信を視聴しました。
社長の挨拶に続き、指名委員会、監査委員会、報酬委員会の各長の方から業務執行状況についての説明がありました。
質疑応答については、社長の多くの方からの発言を促す姿勢に好感を持ちました。
主な質疑応答
【事前の質問】
Q.取締役の構成について
A.独立・社外取締役が過半数となりガバナンスの強化を図っている。併せて善管注意義務を果たすことに注力し企業価値の向上に努めている。
Q.中期経営計画の進捗状況について
A.生活を豊かにする商品群の強さと優良な顧客を大切にし、”守り”から”攻め”に転じつつある。
Q.株主優待の改善について
A.パルコについては紙からクレジットカード化を図った。
通販についても10%引きとできるようにした。
パルコと大丸・松坂屋カードの統合については検討を続ける。
【会場からの質問】
Q.百貨店事業のメリットについて
小売業のエリア拡充、小売以外の業務の多様化、業務の効率化、人材の多様化などの点でシナジーが生じている。
ただし、B to BのパルコとB to Cの百貨店の基幹システムの統合については引き続き検討を重ねる。
Q.人材戦略(女性の活躍)について
A.女性の管理職への登用が進んでいる。
Q.従業員の賃金の向上について
A.さまざまな点を考慮し、年収ベースでの給与向上に努めている。
Q.(海外を含む)富裕層の取り込みについて
A.コンテンツとタッチポイントの2つが重要と認識。
コンテンツとしては現代アートと機械式高級腕時計の拡充を図っている。
タッチポイントとしては、使いやすいアプリ(英語版、中国語版を含む)を作り20〜30代へのオンラインでのアプローチに努めている。
Q.同業他社との比較した際の強みについて
A.不動産やエンタメに強いパルコがグループ内にあること、全国に店舗を展開していること、アプリの開発等やり切る力があること、外商を通じた富裕層へのアプローチなどがある。
Q.名古屋の不動産開発について
A.パルコでもない百貨店でもない豊かな生活に資するメディアセンター的なものの2026年の実現を目指して準備を進めている。
決議事項
●定款一部変更の件
●取締役10名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
最後に役員の紹介がありました。
⑵ 株主還元
配当
過去の一株あたりの配当の推移は以下のとおりです。
2017年2月期:28円
2018年2月期:35円
2019年2月期:35円
2020年2月期:36円
2021年2月期:27円
2022年2月期:29円
好業績を反映し、増配されています。
株主優待
大丸・松坂屋お買い物ご優待カード(10%割引)
【大丸のデパ地下にて】
3 株主としてのコメント
⑴ 同業他社との違いについて
JFRの強みは何と言っても百貨店と不動産の日本柱であることと思います。
これに対して、丸井は百貨店と金融の2本柱、そして三越伊勢丹は百貨店中心の戦略と考えています。
各社の戦略が今後どのように明暗を分けるのか?興味深いところです。
⑵ 株主総会雑感
過去に数回株主総会に参加し質問したことがあります。
非常に真摯な態度でお答えいただいたことを覚えています。
株主側も”ふつうの質問”をする方が多く、総会に参加していて気持ちの良い時間を過ごすことができました。
株主を含め、金融機関やテナントなど会社とステークホルダーとの関係が比較的良好なのではないかと思います。
⑶ 長く株主をしていて気になっていること
株主優待カード
10%割引となる株主優待カード(大丸松坂屋カード)を愛用しています。
ただし、2022年5月ごろからデパ地下の特売品での利用が禁止されるようになってきたようです。
JFRはこのように”しれっとセコイことをする組織文化”があるように感じています。
以前は利用していたクレジットカードも年会費を徴収するようになったので退会しました。
株主や消費者の期待や信頼をもっと大切にする組織文化が醸成されることを期待します。
株主総会でのある役員の対応
株主総会における質疑応答で手に持った何度も紙を見ながら回答している役員がいました。
想定問答集なのか事務局からの資料なのか分かりませんが、株主からの基本的な質問に対して紙を見ないと回答できないというのはちょっといただけません。
機関設計で厳しいガバナンスを目指しても、役員の対応(力量)が追いついていかないのでは意味がありません。
渡辺一雄さんの「我慢する社員はダメになる」
大丸といえば、『我慢する社員はダメになる』という渡辺一雄さんのエッセイを思い出します。
昭和の時代の大丸勤務の実態を明らかにしたものですが、この本を読んで大丸という会社の恐ろしさを感じました。
現在のJFRは機関設計としてはガバナンスが一番厳しい、指名委員会等設置会社となっており、過去のようなことはないとは思いますが・・・。
この本は、会社を多面的に長い時間軸を持ってかつ多面的にみることの大切さを教えてくれます。
【大丸京都店前にて】
4 まとめ
Jフロントリテーリングについて述べてきました。
株主を5年以上続けていて、質の高い商品をお値打ち価格で購入できたことなどのありがたい面がある一方で優待内容の改悪や役員の力量不足について懸念を感じています。
また、百貨店はそれぞれ独自の戦略で生き残りを図っており、JFRの百貨店と不動産の2本柱戦略の成果を期待しながら株主を続けていこうと考えています。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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