こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

東京海上ホールディングス【8766】〜株主総会雑感(不祥事VS好業績)

投稿日:2021.3.10、2023.6.26、2024.8.4

こんにちは!

この記事は、東京海上ホールディングス【8766】に関心のある方に向けた株主としてのコメントを記したものです。

なお、2024年6月の株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(変更箇所は青字です)。

・海外M&Aの成功による成長

・情熱的な経営トップ(社長)について

【目次】 

東京海上ホールディングスの本社ビル】

f:id:cogepan20:20220309135915j:plain                     

1 東京海上ホールディングスについて

⑴ 会社概要

メガ損保で首位級と四季報にあります。

自動車保険等でお馴染みの会社です。

「パーパス」(存在意義)

「安心と安全の提供を通じてお客様や社会の”いざ”をお支えしお守りする」

中期経営計画2023〜成長への変革と挑戦

2+1の成長戦略

下記のポイント1及びポイント2にポイント3を加えたもの

ポイント1:新しいマーケット×新しいアプローチ

ポイント2:保険本業の収益力強化

ポイント3:次の成長ステージに向けた事業投資

セグメント

・国内損害保険事業(53.5%)

・国内生命保険事業(13.1%)

・海外保健事業(33.3%)

・金融・一般事業

⑵ 株主になったきっかけ

今後金利が上がる事を見込んで金融関係で、かつ、高配当銘柄ということで2021年に株主となりました。

配当を考えNISA口座で購入しています。

ちなみに、生保や損保で顧客となったことはなかったと思います。

ただし、個人的には東京マラソン(フル)を走ったことが過去2回あり、そのゴールが東京海上ホールディングスビルの真横であることから親しみを感じてます。

しばらく保有後に売却(利益確定)して、3分割後に再度株主となっています。

⑶ 2024年3月期の経営分析

収益性

売上高経常利益率:11%

毎年収益性が向上しており、かつ、10%を超える優良株であることに満足しています。

安全性

自己資本比率(30%以上が望ましい):17%

資本の効率化を進めつつも、前期よりも安全性が向上しており、まだまだ”伸び代”があると考えます。

効率性

・有形固定資産回転率:18.58

前期に比べ、大きな変化はありません。

本社ビルを木造に建て替えるためのコストは事業規模から考えて比較的小さいものと推察します。

⑷ 2023年3月期の経営分析

収益性

売上高経常利益率:8%

2年前よりも向上している点は評価できます。

安全性

自己資本比率(30%以上が望ましい):13%

自己資本比率は低いですが、金融機関ということもあり妥当なんだろうと推察します。

社長も意味のない資本を抱える考えのないことを株主総会で強調されていました。

効率性

・有形固定資産回転率:17.1

2年前に比べて顕著な変化はありません。

本社ビル建替の影響はまだ先と推測します。

⑸ 2021年3月期の経営分析

25兆円の総資産を用いて5兆円の売上を計上しています。

そして修正純利益は5000億円(世界第3位)とのこと。

割合で考えると低いようにも感じられますが、立派な業績と考えて良いと思います。

収益性

売上高経常利益率:5%

安全性

自己資本比率(一般に30%以上が望ましい):14%

一見低い数値となっていますが、金融機関ということもあり問題とはならないようです。

効率性 

・有形固定資産回転率:16.33

売上に対しては土地・不動産は小さめと考えられます。

なお、丸の内の本社ビルは建て替えられるとの報道がありました。

株主総会の案内板】

2 株主総会

⑴ 2024年6月の株主総会

第22回定時株主総会 2024年6月24日(月) パレスホテル「葵」

ライブ配信を視聴しました。

主なポイント

・お客様のいざに応える

・増収・増益

・中期経営計画において”次の一歩の力になる”

・リスク分散(地理的、事業的、商品的に分散)

・”いざ”→”いつも”

・保険事業をソリューション事業へ

ウェルビーイングとしての”ヘルスデータ管理システム”、”気象災害状況プラットフォーム”

・生保、損保に次ぐ第3の柱を立てる

・事故になりにくいレジリエンスの高まるサービス

・利益成長5%、ROE20%、増配

主な質疑応答

Q.株主総会日の集中日について

A.当社は10年前から株主総会開催が少ない月曜日に開催してきたが、最近は同じように月曜日に開催する企業が増えてきた。

【事前】

Q.保険料調整事案、ビックモーター事案等の不適切事案について

A.ビジネスパートナーと共に計画に基づき改善に努める。

Q.株主還元について

A.配当が基本

配当金に関しては5年間の利益の平均で決定している。

50%の配当性向となっている。

また、2000億円の自社株買いをしているが、成長投資とのバランスを十分に検討しながら実施していくことが大切。

いずれにしても、必要以上の資本は還元していく方針。

今後も政策保有株解消を配当にしていく。

Q.海外保健事業の今後について

A.各社のオーガニックな成長を推進していく。

また、M&Aは目的でなく成長のための手段。

M&A3原則(カルチャーフィット、高い収益性、強固なビジネスモデル)に基づいて実施していくが今は忍耐の時期。

【会場】

Q.不祥事の真因について

A.ルール作りが十分でなく、事前に手を打つことができなかった。

社内のビジネスの中のリスクに気づきにくい部分があるため社外の視点によるモニタリングを導入している。

Q.保険料調整行為に対する取締役の責任について

A.取締役の責任の重さも考慮して減給としているがこれは他社の事例も踏まえたものである。

今は悪しき慣行を改めることが大切と考える。

Q.コンプライアンス担当から一言

A.痛恨に極み!

不祥事が続いているが再発したわけではない。

営業数値重視や自然災害の厳しさに伴う保険料上昇などを背景に利害相反に直面している現場を救う意識が足りなかった。

グループ監査を重視していく。

保険業界のカルチャーに切り込む意識が求められている。

Q.スキルマトリックスのIT項目について

A.取締役の中にもITに知見を持つものはいる。

Q.政策保有株の売却について

A.6年間で政策保有株をゼロにする方針で取り組んでいる。

売却金額も1500億円から6000億円と4倍に加速している。

使徒については、M&A、内部成長、還元、保険事業などがある。

いずれにしてもパーパスを果たすために使用する。

Q.CRE(商用不動産)ローンについて

A.CREローンは1.8兆円あり引当金は470億円積んでいる。

一定程度傷んでいるが、1000億円の利益も出ている。

ロスもあるがリザーブ(積立金)もありトップラインにも貢献することからCREについては注意しつつ運用していく。

Q.サプライチェーンを含めた信頼回復について

A.ヒアリングで横通しを図っている。

カルチャーを含めて信頼されるように努める。

決議事項

⚫️剰余金の処分の件

⚫️締役15名選任の件

⚫️監査役1名選任の件

⚫️取締役の報酬等の額の変更の件

拍手を持って承認・可決されました。

株主総会雑感

2年連続で、不祥事に対する陳謝株主総会は始まりました。

その原因は、業界の慣行、さまざまな板挟みに苦しむ現場の苦悩などという説明には説得感があったように感じます。

その一方で、業績は絶好調で経営陣にも余裕と自信が感じられました。

質問した株主の中には一方的に正義感を振りかざす人もいましたが、成長戦略、業績、株価等を総合的に考えると当社を良き方向に導いている考えます。

全体最適の重要性を改めて認識させられました。

⑵ 2023年6月の株主総会

第21回定時株主総会 2023年6月26日(月) パレスホテル「葵」

会場入口にてお茶をいただきました。

会場の中ではスクリーンが5面もあり、広い会場を有効に使っているように感じました。

株主総会の冒頭、社長による不祥事(保険料の調整行為)についての陳謝から始まりました。

その後、議案の上程が為された後に経営戦略についてのプレゼンが社長から熱く語られました。

ビデオでは、防災・減災という点でリアルタイムハザードサービスとしてアラートメールが配信されるサービスが紹介されていました。

増収にも関わらず、災害が多くて減益となったことに対する対応と理解しました。

最後は、4万人の社員に対して

人が成長の「原動力」

として締めくくっていました。

主な質疑応答

【事前】

Q.株主還元方針について

A.基本は配当で、利益のブレを考慮して5年平均の配当性向50%を基準に実施している。

また、財務の健全性や成長投資ののちに自己株式の取得を実施しており、今回は1000億円を実施した。

不必要な資本は溜め込む必要はないと考えている。

Q.女性経営者の選抜について

A.2027年に女性の役員比率30%、2030年に女性の管理職比率30%を目標として取り組んでいる。

候補者は着実に増加しているが、まだまだ道半ばと認識しつつ低年齢時から高度な役割を付与して人材育成に努めている。

【会場】

Q.気候変動対策について

A.米国において気候変動等によるリスクの高い火災保険の販売停止等については承知している。

当社としては、保険を禁止することにこだわらず、顧客との対話、保険のカバーの限定、脱炭素活動など様々な活動も同時に実施していくこととしている。

Q.不祥事について

A.成立しなかったものの、共同保険に対して保険料の調整行為が行われたことについてお詫びいたします。

真摯に対応しつつ再発防止に努めているが、金融庁には23日に報告を実施した。

”裏切った利益に価値はない”

という意識を社員に周知徹底させていく。

Q.不祥事に対する監査人の見解について

A.当該事案については、直ちに報告を受けている。

その後の対応についてもガバナンス上、コンプライアンス上も適切に対応されていたと思料する。

Q.金融庁からの行政処分について

A.コメントする立場にない。

Q.NZIA(ネットゼロ保険同盟)脱退後もネットゼロ目標は維持するのか?

NZIAについては加入企業が独自で活動するようになり脱退が相次いだことから当社も脱退したが、目標は維持していく。

Q.東アジア石油パイプラインには関与するのか?

A.個別の契約についてはお答えできませんが、グループとして保険の引き受け方針に基づいて活動を実施している。

Q.グレーゾーンのある保険について支払い可能かどうかを明確にすることについて

A.個別の案件については総会終了後に担当者からお話を伺います。

既に保険の支払い可能な場合とそうでない場合の事例を示している商品もある。

保険金については法令で規定されていない場合もあり、打ち合わせの中で総合的に対応させていただきつつ、わかりやすい説明に努める。

Q.労働環境について

A.当社はピープルズビジネスということで社員の頑張りによる生産性向上を重視している。

残業時間は減少傾向にある。

休暇についても、5日間連続で取得できる特別休暇を年2回付与している。

育児休暇については女性については当然のこと、男性についても100%以上取得している。

その意味で概ね問題ないと認識。

ちなみに、育児休暇期間は1ヶ月以内が多いようだが、もっと長期でリードしていくことが重要と考えている。

Q.株式分割について

A.東証の指導による50万円以内を実現すべく、昨年3分割した。

今後も投資しやすい株価に留意する。

Q.昔の火災保険の場合時価となっているものが多いが、新価(同じ物件を新たに購入等する際に必要な金額)への切り替えはどうなっているのか?

A.長期契約者を含め、切り替えの案内等、適時実施している。

Q.支払いのわかりやすさや約款の説明について

A.パンフレット等を用いて、分かりやすい説明に努めている。

Q.NTTの25分割のようにもっと分割してほしい

A.株主からの投資しやすさに考慮していく。

Q.事業売却の考え方について

A.資本効率の向上のため事業ポートフォリオの見直しを実施しており、その一環として事業売却を実施している。

選定に当たっては収益性と成長性について追加出資の効果の見極めを含めて総合的に検討して実施している。

Q.地政学的なリスクが事業に与える影響について

A.各種事案については、エマージングリスク、重大なリスク等に選定して注視している。

その際、学識経験者からの知見を得てインテリジェンスを向上させ、顧客との共有も実施している。

また、場合によってはBCP(事業継続プログラム)の作成支援、ひいては所要の訓練等を実施したりしている。

現状では差し迫った脅威はないと認識している。

しかし、株価や金利の変動等によるストレスについては常に検討している。

決議事項

・剰余金処分の件

・取締役15名選任の件

監査役1名選任の件

拍手を持って、承認・可決されました。

株主総会雑感

社長のエネルギッシュさは以前から知っていましたが、株主からの質問に対して複数の担当役員を指名したり、自ら補足(確認)のために回答内容を念押ししたりして丁寧な議事運営を行なっていたことが印象的でした。

また、株主も保険関連と推察される方が多く、話が上手でちょっと長く”語る”方が多かったように感じました。

一番の気づきは、”不必要な資本をため込まない”資本効率を追求する姿勢の徹底です。

事業ポートフォリオの見直しとして、見込みのない会社を売却することも徹底しています。

内部留保を溜め込むキャッシュリッチの会社が多い中、資本効率を高める経営については良い勉強になりました。

ただし、当社が持ち合い解消ということで長期間にわたって株式を売却し続けたことが、バブル崩壊後の株価右肩下がりの原因の一つという専門家もいて、物事は多面的に見ることが大切だと感じました。

⑶ 2021年6月の株主総会

第19回定時株主総会 2021年6月28日(月) パレスホテル東京

株主でなかったため参加していません。

ただし、経営戦略についてのプレゼン動画をHPで見ることができます。

東京海上DRによるデータ活用の取り組みなどを挙げながら、今後の成長戦略が熱く語られていました。

株主に夢を与える内容だと考えます。

ちなみに、個人的にパレスホテル記念日にクラブフロアに宿泊したこともあり思い出の場所です。

⑷ 株主還元    

配当

1株配当実績は次のとおりです。

13期連続増配とのこと。

2023年3月期:123円

2022年3月期:100円

2021年3月期:85円

2020年3月期:67円

2019年3月期:63円

2018年3月期:60円

2017年3月期:53円

2016年3月期:47円

2015年3月期:37円

2014年3月期:32円

株主優待   

なし

自社株買い

2024年度中に2000億円を実施するとのことです。

【2022年3月6日の東京マラソン当日の本社ビル】

f:id:cogepan20:20220309141047j:plain               

3 株主としてのコメント

⑴  社長のTV出演

2022年2月10日の朝のテレビ番組に社長がテレビ出演していました。

社長は麻布高校で剣道部主将を務めた後、東大工学部を卒業する文武両道の情熱的な経営トップとして紹介されていました。

テーマは深化する”グローバル経営”

大手金融機関の中で東京海上HDが唯一PBRが1倍を超えている事を取り上げその原動力となっている”海外M&A”の成功について取り上げていました。

興味深かったのは規律あるM&Aということで

1 高い収益性

2 強固なビジネスモデル

3 カルチャーフィット

の3要件を挙げている点でした。

M&Aについては個人的にも関心が高いので参考になりました。

そして、M&Aに伴い優秀な人材を確保することにも成功しているとのこと。

自然災害が常態化する昨今、グローバル化により強固な経営基盤確保をするという戦略は妥当なものだと感じました。

また、損保事業については

・防災・減災

・モビリティ

・ヘルスケア

に着目とのこと。

その際、

「自動運転が広がれば自動車保険に影響が出るのでは?」

との問いには

「むしろ自動運転車の混在により事故処理の複雑化が予想されるので、迅速な支払いによる被害者救済というニーズが高まる」

との回答。

なるほど、そういう面もあるかもしれません。

今後は保険金の支払いのみならず、その前後についての取り組みを拡充されるとここと。

いい番組でした。

⑵  気になる点

地政学的リスク(ウクライナ情勢等)

さまざまなリスクに対応する商品・サービスを考えている点は評価できます。

けれども、現在の私達をとりまく環境の変化のスピードはそれ以上と考えます。

ウクライナ情勢もその一つ。

よりスピード感のある経営が期待されます。

気候変動リスク

防災・減災について研究機関とともに研究に乗り出しているとのことでした。

四季報にも【ESG】という見出しがあるように、その分野にも注力していくことが予想されます。

ただし、ESG投資の14%はロシアにお金が流れているとの指摘もありました(天然ガスがグリーンエネルギーと位置付けられているため)。

さまざまな投資をしていますがお金の流れについてもきちんと把握することを期待します。

M&Aについて

今の東京海上HDの好業績は海外M&Aの成功によるものです。

そして、今後も積極的にM&Aを展開していくとのこと。

”数合わせのM&Aはしない”という言葉に安心しつつも、一つM&Aの失敗が事業に与える影響が大きいのも事実(例えば、コロワイドかっぱ寿司の買収など)。

会社の過去の成功体験への過剰適合してしまわないか少し懸念を持っています。

株主総会で頂いた資料とお茶】

4 まとめ

東京海上HDについて述べてきました。

情熱的な社長海外M&A成功による好業績、自動運転と自動車保険など投資をする上で参考になると考えます。

個人的には保険ではお世話になっていませんが、上昇トレンドの株価高配当東京マラソンフィニッシュエリアの本社ビルパレスホテルでの株主総会など好感を持っています。

不確実な世の中、リスク管理、ひいてはソリューションプロバイダーとしての東京海上HDの今後に注目しています。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

#投資 #株式 #株主総会 #資産形成 #資産運用 #東京海上ホールディングス