こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

丸紅【8002】〜株主総会雑感(株主との良好な関係)

投稿日:2022.3.5、更新日:2022.7.31、2023.1.10、2023.8.28

こんにちは!

この記事は、丸紅【8002】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2023年の株主総会の内容を追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

・2年連続の過去最高益

経営陣と株主の良い関係

【目次】 

【丸紅本社ビル】

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1 丸紅について

⑴ 会社概要

5大商社の1つで、伊藤忠商事から独立した会社。

芙蓉グループで非財閥系です。

バフェット氏が大量に購入したこともあり株価は上昇トレンド。

売上高9.0兆円、総資産7.9兆円、時価総額3.9兆円の事業規模です。

付加価値(ブランド力、のれん)を示すPBRは1.28倍であり前期に比べて大幅に向上しています。

企業理念 

伝統のある会社らしく、下記の通りの理念を明らかにしています。

●社是

「正・新・和」

●経営理念

丸紅は社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指します。

セグメント

下記16のセグメントから構成されています。

・ライフスタイル

・情報・不動産

・フォレストプロダクツ

・食品第一

・食品第二

・アグリ事業

・化学品

・エネルギー

・金属

・電力

・インフラプロジェクト

・航空・船舶

・金融・リリース事業

・建機・産機・モビリティ

・次世代事業開発

・その他

特徴は食料のセグメントが2つあることでありアグリ事業も含め、食料に強い商社と言えそうです。

また、直近の稼ぎ頭は金属であり、最近の資源価格の上昇の影響を上手に活かしていると考えます。

⑵ 株主になったきっかけ

高配当で今後の資源価格上昇を見込んで2021年9月に株主となりました。

配当の高さを考えてNISA口座で保有しています。

思惑通り株価は堅調に推移しています。

5年間の期限はありますが、さらに長期的な付き合いになるような予感がします。

⑶ 2023年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:12%

売上高経常利益率:7%

前期よりもそれぞれ1%づつ収益性が改善しています。

しかも継続しています。

計画的に収益性を上げているとすれば相当の実力を有していると推察します。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):134%

自己資本比率(30%以上が望ましい):37%

・ネットDEレシオ:0.52倍

安全性についても前期より向上しています。

特に、ネットDEレシオの中期経営計画の目標である0.7倍程度という目標達成です。

効率性 

・有形固定資産回転率:9.55

毎年、回転率が高まっており効率的な経営がなされていると思います。

稼ぐ力がついてきた証左と考えます。

本社ビルの建替コスト”回収”も進んでいると思います。

⑷ 2022年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:11%

売上高経常利益率:6%

昨年よりも収益性は高まっています。

5大商社の中では事業の”質”はイマイチですが、改善しているは評価すべきだと考えます。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):121%

自己資本比率(30%以上が望ましい):28%

・ネットDEレシオ:0.8倍

安全性については昨年とほとんど変化はありません。

なお、ネットDEレシオの中期経営計画の目標である0.7倍程度に対して、0.8倍であったことから安全性に対しては会社の目標達成と考えられます。

効率性 

・有形固定資産回転率:8.91

昨年よりも回転率が高まっており効率的な経営がなされていると思います。

他の総合商社と比較しても高い数値となっています。

よって、本社ビルを建て替えることに投じたコスト等も含めて十分に”回収”されていると推測します。

⑸ 2021年3月期の経営分析

2021年3月期の連結計算書類をもとに経営分析を試みます。

基本的には上方修正と増配ということで2019年3月期の赤字から回復しています。

収益性

・売上高総利益率:8%

売上高経常利益率:4%

収益性はそれほど高くはありませんが、収益の合計が6兆円を超えているので稼ぎは小さくはありません。

持株会社である三菱商事(売上高総利益率12%、売上高計上利益率4%)と比較すると丸紅の方が売上原価が高い一方、販管費等のコスト削減で利益率は丸紅の方が良いと考えられます。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):126%

自己資本比率(30%以上が望ましい):28%

なお丸紅はNet D /Eレシオを経営指標として重視しているようです。

ネットD /Eレシオ=(有利子負債ー現預金)/自己資本

負債(Debt)は資本(Equity)でまかなえることが望ましいという見方から、長期の支払い能力(安全性)を見るときに使われる指標。

これまでの丸紅のネットD/Eレシオの推移

2020年3月期:1.16

2021年3月期:0.88

2022年3月期:0.8(見通し)

ちなみに、株主レポートによるとネットD/Eレシオが0.8倍で財務基盤の再生に目処がつきつつあるとのことです。

効率性 

・有形固定資産回転率:6.32

経営の効率性という点では、三菱商事と同レベルです。

売上債権や棚卸資産も含め、三菱商事との間で顕著な相違は見られませんでした。

【丸紅ギャラリー無料招待券(入場料500円) 2名入場可】

2 株主総会

⑴ 2023年6月の株主総会

第99回定時株主総会 2023年6月23日(金) 丸紅ビル

ライブ配信を視聴しました。

主なポイント

・新社屋での初めての株主総会

・2年連続の過去最高益

・ネットDEレシオが0.52倍

・78円を起点とする累進配当

・機動的な自社株買いの実施

・非資源の実力がついてきた

主な質疑応答

【事前】

Q.中・長期の業績見通しについて

A.過去2年間は追い風が吹いていた。

2023年度、2024年度は厳しいと予想する。

Q.株主還元方針

A.従来の配当性向25%以上から累進配当と機動的自社株買いとした。

自社株買いは21年度は300億円、22年度は600億円実施。

株価も上昇傾向。

収益力や財務基盤が向上したことにより株主還元を拡充した。

【会場】

Q.ロシアのウクライナ侵攻とウクライナ復興事業について

A.(CFOより)ウクライナ侵攻の財務的なインパクトは少ないし、昨年までに処理済みである。

(社長から)ウクライナ復興については現在まさに活発化している。

フィンランドの担当大臣からも参加して欲しいとの要請もあり、前向きに対応していこうと考えている。

Q.米国のガビロン社の売却について

A.ガビロン社の収益については赤字にはなっていなかった。

ただし、農家が力をつけた(バイオ燃料ビジネス)という米国の農業の構造的変化があり、それに対応した。

また、穀物を中国に向けてトレードしていたが、チャイナリスクにも対応することの重要性も高まってきていた。

売却はしたが、日本向けの穀物ビジネスは確保している。

Q.さらなる増配について

A.増配できるのならしたい。

連結純利益が2023年度に4200億円、2024年度に4000億円を大きく達成した際には可能。

現在、事業は巡航速度以上で進捗中である。

Q.ウェルファムフーズの動物虐待について

A.アニマルウェルフェアに注意を払っている。

動き回れない鶏についてのことについては、当社では屋根付きの施設にて飼育している。

Q.雷対策について(株主の推奨する避雷針について)

A.参考にさせていただく。

Q.ホライゾン3の進捗について

A.(CDIO(次世代事業担当)より)次のビジネスを見出すために、当社の今までの知見と勝ち筋を生かすための事業である。

若い世代に支持されるビジネスやヘルスケアに進展が見られる。

数字での貢献はまだないが、2030年代を目指してゼロからの挑戦を試みている。

近いうちに発表したい案件がいくつか出てきているのでご期待下さい。

Q.バフェットさんの投資について

A.光栄なこと。

当社の株式を買い増す際も、事前に取締役会の承認を得てから実施するなど、クリアかつ紳士的である。

ただし、買い方は急。

・ビジネスに投資をしている

・ビジネスを安く買う

・良い経営者

の3点がバフェットさんの投資方針なので、その期待の添えるよう今後も尽力する。

Q.芸術を定款に加えたことについて

A.当社では多くの作品を保有している。

新社屋にはギャラリーもありそこで活かすことを考えている。

なお、NFTアートの可能性もあるが今は具体的なことは考えていない。

Q.累進配当は大丈夫か?

A.ある程度数字は掴んでいるので、世界大恐慌でも起きない限り大丈夫。

そしてもし、世界大恐慌が発生した場合であっても、社会全体が大問題になっており、当社だけの問題ではなくなっている。

Q.人材育成について(ゼネラリストかスペシャリストか)

A.良い質問です。

これまでは、”サイロ?”と呼ばれるあるセグメントにいる人が多かった。

今後は、優秀な人材をゼネラリストでありつつ専門性を持つ人材として育成して行きたい。

Q.取締役の定年について

A.原則として定年は設けているが、重視していない。

人的リソースの枯渇が問題視されている昨今、女性、シニア、外国人の活用が重視されてきていると認識。

年齢で切るのではなく、能力に応じて働けるような環境が大切。

Q.脱炭素エネルギーのキャンペーンの一環としての”ワンピースの世界”の展示について

A.”ワンピースの世界”については多くの反響と評価をいただいた。

ただし、契約期間を満了したことから、あたらしい企画を考えていく。

Q.航空船舶セグメントのバウンド・フォー社(スペイン)との風力プロジェクトについて

A.当社も50隻の船舶を保有しており、10%の燃料節減効果が達成できれば大きな貢献になる。

風力推進装置ではバウンド・フォー社の持つ知見に期待している。

Q.女性人材の活用について

A.現在、部長クラスまで女性が数名活躍しているが、執行役員までは時間がかかる見通し。

ただし、採用において女性総合職を40〜50%採用しており、計画的に人材育成を実施している。

なお、女性だからといって下駄を履かせる登用は意味がないと考える。

Q.(10年以上の株主より)最近、事業投資が上手になった理由は?

A.投資の規律を強化した。

それ以降、投資案件については精査され、安易な申請は上がらなくなり、厳選度は高まってきている。

2019年度にまとめて大型の減損処理を実施し、若い人のための環境を整備した。

ご指摘のとおり、仕組みをいじくってもカルチャーが動かないと意味はないと考える。

ぞうぞ、長く株主でいてエンジョイしてください。

Q.女性の社外取締役から一言

A.社内では働きがいを持っている社員がたくさんいる。

自分も、ダイバーシティという点では意見を言って行きたい。

決議事項

・定款一部変更の件

・取締役10名選任の件

監査役1名選任の件

・取締役報酬改定の件

監査役の報酬額改定の件

拍手を持って承認・可決されました。

株主総会雑感

ライブ配信を視聴していて気持ちの良い株主総会でした。

株価が4倍になった株主からの慰労の言葉に社長も思わず

「頑張りました!」

との返事に、会場からも笑いが湧き上がっていました。

また、バフェットさんとのやりとりも具体的なビジネスのやり取りが伺えて有益でした。

同じ質問に対して、三菱商事

「相手がある話なので、コメントは控えさせていただく。」

という塩回答とは対照的でした。

単に、キャピタルゲイン(含み益)やインカムゲイン(配当)が得られるだけでなく、そういった世界を相手にビジネスをしている当社ならではの”学びや気づき”のある株主総会も株主にとっては大きな魅力です。

新社屋での株主総会に近いうちに足を運んでみたいと感じました。

⑵ 2022年6月の株主総会

第98回定時株主総会 2022年6月24日(金) パレスホテル「葵」

ライブ配信を視聴しました。

社長から冒頭、記録を塗り替えることのできた年(増収増益、過去最高の配当、株価の上場来高値など)という言葉で総括されていました。

中期経営計画(GC2024)に言及され

・配当の下限を60円

・既存事業の強化&新たなビジネスモデルの創出

・グリーンのトップランナー(水素、アンモニアを重視)

・連結純利益4,000億円

ROE:15%

・ネットD/Eレシオ0.8倍

などの説明がありました。

主な質疑応答

Q.新しくなった自社ビルでの株主総会開催について

A.コロナ禍で来場する株主数が見通せない中、柔軟な対応が可能なパレスホテルでの開催に至った。

自社ビルについては無料招待券をご活用の上、丸紅ギャラリーにご足労いただいた際に併せてご覧きたい。

なお、新しく自社ビルを新しくしたのは

・本社勤務の4,000名の勤務環境を向上させること

・災害に対応し、通信インフラを強化(ネットやソフトに対応)することによって世界中で働く社員の営業活動のサポートに万全を記す

ためである。

Q.米ガビロン穀物事業の売却について

A.穀物を売却する時期を米国の農家が決めており収益力が低下していたため売却するに至った。

なお、売却益が見込まれており、ある意味”良いタイミングで手仕舞いできて満足”。

Q.国内の農村の育成(自給自足)について

A.現状の自給率はカロリーベースで36%。

農業に携わる160万人のうち65歳以上の年齢が120万人であり、その方達の重労働を支援するためにITを駆使しした可視化などを展開している。

畜産関連は米国とブラジルが圧倒的に強く海外から安定て輸入することも大切。

Q.中期経営計画(GC2024)の展望について

A.カタール天然ガス利用、オーストラリアでのCO2貯蔵回収実証など実施している。

グリーンについて米国企業との協業も模索している。

Q.次世代事業開発本部(CDIO)の進捗について

A.2030年に大きくなる事業を開発(ヘルスケア、スマートシティ、若い世代向けビジネス等)を継続しており、本社社員の成長や他社からの評価など、手応えを感じている。

Q.グリーンビジネスのコアについて

A .EV(電気自動車)の普及とともに銅事業の強みが活かされると考える。

Q.最近の株価低迷について

A.株価については商社株の中で一番上昇した。

現在の低迷は特定の原因によるものではなく調整と見ている。

Q.株主総会資料の電子提供制度について

A.インターネットが使えない人でも、来年の3月31日までに証券会社や信託会社に書類送付の申込を行えばこれまで通り書類をもらうことは可能。

Q.バフェット氏の株式売買について

A.大量報告書での変動(売買)は確認されていない。

現在の株価とバフェット氏との関連は薄いと考える。

Q.航空・船舶部門のeVTOLの進捗について

A.eVTOL(電動垂直離着陸機、空飛ぶタクシー、空飛ぶ車)についての業務提携は

・英国のバーティカルエアロスペース社と五人乗り

・米国のリフトエアクラフト社とひとり乗り

の2つがあり販売権を取得している。

大阪万博に向けた実証実験中である。

決議事項

・定款一部変更の件

・取締役10名専任の件

拍手を持って賛成・可決されました。

株主総会雑感

総合商社は日本独自の会社であり説明がしにくい印象がありました。

けれども株主総会ライブ配信を視聴して、丸紅がアグリ(農業)や銅に強いことや将来に向けての布石を打っており、e VTOLなどの夢のある事業を手がけていることがわかってきました。

業績が絶好調のためか株主からの質問も多すぎることなく、社長が一つ一つの質問に対して真摯に応えている姿勢は好感が持てました。

⑶ 株主還元    

配当

配当利回り(予想)は4.99と高いです。

また、配当の推移は以下のとおりです。

配当金額が上下しますが、配当の下限を60円とすることは有り難いです。

・2022年3月期:62円

・2021年3月期:33円

・2020年3月期:35円

自社株買い

・2023年3月期:600億円

・2022年3月期:300億円

株主優待

なし

その他

2019年の赤字で中断していた自社株買いの再開も検討中とのこと。

株主レーポートに丸紅ギャラリー無料ご招待券が添付されていました。 

【丸紅のモニュメント】

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3 株主としてのコメント

⑴ 丸紅ギャラリーについて

丸紅ギャラリーは古今東西の美が共鳴する空間」をコンセプトに、丸紅が保有している染織物、染織図案、絵画の3本柱から構成される美術品コレクションを中心に展示・公開する施設とのことです。

注意点は期間限定で開館しているということ。

過去、2回開館している時期を失念してしまったため満を辞して2023年1月に訪れました。

広くはありませんが、綺麗で近代的なギャラリー

今回の展示は開館記念第3回展『ボッティチェリ特別展《美しきシモネッタ》』

『ビーナス誕生』のモデルとなった方です。

美術についての知見はあまりありませんが、色々と気づきが得られて満足です。

これからも、定期的に足を運んでみたいと思いました。

【本社ビル1階のエスカレーター横のデジタルサイネージ

【入口前にて 奥が入口です】

⑵ 気になる点

ウクライナ情勢を含め、地政学的リスクは意識しなければならないと考えます。

ロシアが中国を道連れにして冷戦時代に戻る可能性もあると思います。

四季報では”中国に強い”との記述。

そうした、チャイナリスクをどこまで管理できるのか気になります。

また、今期の好業績は鉄鉱石価格上昇のおかげですが、来期は価格下落に伴う減益予想も懸念しています。

【館内1階のデジタルサイネージ

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4 まとめ

丸紅について述べてきました。

総合商社であり馴染みがない印象ですが、調べてみると皇居横に自社ビルがあったりギャラリーを有しているなどの発見がありました。

株主総会実施場所のパレスホテル東京は宿泊経験もあり、皇居周辺をよく走っており、さらに美術館巡りも好きなので一気に親しみが湧いてきました。

インフレや資源高騰という追い風とカントリーリスクという逆風が吹き荒れていますが、それらを含め紅の活動に長期間注目していくつもりです。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

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