こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

日本モーゲージサービス【7192】について~株主総会雑感

初投稿:2021.9.23、更新日:2022.7.12

こんにちは!

この記事は、日本モーゲージサービス【7192】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたたものです。

なお、2022年6月の株主総会に参加したときの内容を追記して、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

・デフレ脳からインフレ脳へ

・MSワラントの問題点

★★

【目次】 

株主総会会場にて】

1 日本モーゲージサービスについて

⑴ 会社概要

フラット35」貸付が主力の住宅ローンで事業展開をする会社です。

総資産225億円、売上高76億円、時価総額143億円の事業規模。

PBRは2.11倍で比較的、高い評価を市場から得ています。

企業理念等

●事業方針

 住宅事業者の経営を支援する 

●企業戦略コンセプト

 最も敷居の低いビルダーズバンク

●使命

 「住宅産業の新しい仕組みを作る」こと

セグメント

2021年3月期の計算書類から(営業収益構成比)

・住宅金融事業(45.4%)

独立行政法人住宅金融支援機構と提携し、「フラット35」等の住宅ローンを、住宅事業者を通じて受託資金需要者に貸し付ける事業。

・住宅瑕疵保険等事業(47.7%)

住宅瑕疵担保責任保険人として、法廷義務保険である新築住宅向けの「住宅瑕疵(かし)保険」を販売する業務。

・受託アカデメイア事業(6.9%)

住宅引き渡し後の住宅保証サービスや、住宅事業クラウドシステム等を提供する業務。

資産は人財

招集通知の中で当社は「新卒採用しない」という独自の価値観が掲載されていました。

理由としては、

「・・・事業規模を考えると従来の成功体験をマニュアルにし、新卒をゼロから自社色に育てる方法では、この変化の激しい時代に当グループのような企業が生き残るのは極めて難しいと考えている・・・」

とのことでした。

ちょっと、良くわからなかったです。

単に、即戦力が欲しいとか、教育システムの問題のようにも思えるのですが・・・。

⑵ 株主になったきっかけ

日経マネーで桐谷さんのコーナーでおススメ優待銘柄として紹介されていました。

あまり、詳しく調べないで購入。

その後は、

優待改悪→MSワラント発行→長期株価低迷

⑶ 2022年3月期の経営分析

当期は増収増益でした。

収益性

・売上高総利益率:71%

売上高営業利益率:22%

前期同様、収益性の高いビジネスモデルだと思います。

金融系の強みを活かした結果と考えます。

安全性

流動比率(200%以上が望ましい):146%

自己資本比率(30%以上が望ましい):30%

昨年と同レベル。

直ちに危険に直面することはないもの安心できるレベルではなさそうです。

効率性

・有形固定資産回転率:39.18

有形固定資産については昨年と大きな変動はなさそうです。

有形固定資産の大半は「建物」が占めており限定的なコストでの経営がなされていると考えます。

⑷ 2021年3月期の経営分析

増収減益です。

収益性

・売上高総利益率:71%

売上高営業利益率:20%

上記の数値からは高収益のビジネスモデルと言えそうです。

ただし、営業キャッシュフローがマイナス17億円会社四季報秋号)であることに注意が必要です。

利益が出ているものの、現金が会社から流出しつづけていることは好ましいことではありません。

安全性

流動資産(200%以上が望ましい):143%

・負債比率(100%以下が望ましい):240%

自己資本比率(30%以上が望ましい):29%

MSワラントを発行したにもかかわらず、財務は短期的にも中・長期的にも安心できる水準にはないと判断します。

効率性 

・売上債権回転率:12.13

高い数値ではありません。

債権回収の調整に手間取っているのでしょうか?

さらに、バランスシートにおける流動資産に着目すると営業未収入金が約75億円あることが分かります。

営業収益が71憶円の会社にしては営業未収入金の金額が尋常ではありません。

これは当座預金口座を持つことが出来ない顧客を相手に取引しているためなのでしょうか?

いずれにしても、経営の効率性は高くないと判断します。

【資金調達についてのQ&A】

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2 株主総会

⑴ 2022年6月の株主総会

7期定時株主総会 2022年6月29日(水) 新橋プレイス

午後開催なので参加できました。

猛暑の中でしたが、お水がテーブルの上に置いてありました。

総会に続いて事業説明会という構成。

総会では質問もなく、下記事項が拍手を持って賛成・可決されました。

決議事項

・定款一部変更の件

・取締役5名選任の件

事業説明会

社長が今後の事業展開についてプレゼンをされました。

テーマは『家をお金に変える時代の成長戦略』

主なポイントは下記の通り。

家をお金に変えるビジネスを目指す!

・米中対立やデカップリングにより、デフレ輸出マシンとしての中国の影響の低下

・資材高騰により新築は在宅品となる。

・ウッドショックの背景には木を売らずに排出権を売った方が儲かる事情がある。

金利の上昇は何よりも恐ろしい。

金利の変動リスクを個人が取るのはナンセンス!

・5000万円の借金に対して1%の変動金利の上昇は860万円の負担増

・戸建持家は全国に2,700万戸あり、古くても価値はある。

・戸建流通市場というのはマンションとは異なり難しい。

・買手(住める?)、売手(ただ同然?)、住宅事業者(田舎では商売にならない)

・時代の転換時、ストック循環型ビジネスでナンバーワンを目指す。

・当社の強みは58万件の戸建住宅のデータと住宅・再生・流通ビルダーとしての知見

・中古戸建住宅市場のラストワンマイルを克服してマネタイズできるよう努力中

・デフレ脳からインフレ脳への転換者が勝利を掴む!

などなど

質疑応答に際しては、

「いい勉強になりました」

とのコメントがありました。

株主総会雑感

正確には株主総会ではなく事業説明会ですが、興味深い話が聞けました。

特に、住宅ローン会社の社長が

金利の変動リスクを個人が取るのはナンセンス!

との発言は説得力がありました。

もちろん全てを鵜呑みにすることはできませんし、疑問点もあります。

けれども、デフレの時代からインフレの時代への発想の転換の必要性については腹落ちしました。

なお、当日のプレゼンについては7月4日から動画配信されています。

動画は下記のリンクです。

www.msj-group.jp

⑵ 2021年6月の株主総会

第16期定時株主総会 2021年6月29日(火) 新橋東急ビル

参加せず。

株主総会招集通知について

株主総会招集通知の表紙に社長の顔写真を掲載する会社は珍しい。

さらに頁をめくると資金調達Q&Aとして

Q.1 どうして新株予約券を発行しているのですか?

Q.2 希薄化に要る株価への影響が心配です。

との問いに対する答えが掲載されています。

業績&株価が低迷し続ける状況においては、説得力がありません。

⑵ 株主還元    

配当

2021年3月末:一株当たり20円

株主優待

持株数と保有期間に応じてクオカードが貰えます。

2020年の夏に持株数と保有期間を変更し大幅な株主優待改悪を行っています。  

株主優待QUOカード3000円分】

                                   

3 株主としてのコメント

⑴ MSワラントの問題点

財務的に問題があり銀行から借入金を得られない場合や信用力が無く公募増資ができない場合に、MSワラントによる資金の調達が行われます。

MSワラントは悪魔の錬金術と呼ぶ人もいるようで、投資家にとってはデメリットが大きい資金調達法です。

MSワラントとは?

まず、ワラントとは新株予約券のことです。

そして、MSはMoving Strikeの略なので、日本語としては「行使価格修正条項付新株予約券」となり、その意味するところは、「前日の株価終値よりも安い株価で株式を購入できるよう毎日購入価格を修正する新株予約権となります。

その問題点は、

・株価の希薄化

 株数の増加するため

・大量の売りが発生

 株を保有する意志のない証券会社に株式を発行するため

空売りの対象になり易い

 投資家から株価下落の材料と見なされるため。

などによります。

もちろん、MSワラントを発行する会社は多くあります。

自分の持株会社でもMSワラントを発行している会社は少なくありません。

ただし、日本モーゲージサービスの悪質なところは、いったん、株主優待を改良しておいて優待重視の株主に株を買わせた後、優待の改悪とMSワラントの発行を行うという計画的に新規株主を貶めるところにあります。

そのような非難や懸念を感じたのは自分だけではないと思います。

そのため、招集通知に資金調達Q&Aが掲載されているのだと考えます。

けれども、日本モーゲージサービスの問題点は、このような株主軽視の姿勢に留まりません。

もっと、ビジネスの根本的なところで問題を抱えているという理由を事項で列挙します。

⑵ ビジネスモデルについての疑問

●家は余っている!

現状でも全国で空き家が3割あり、人口減少によりさらに増加していくと予想されています。

これ以上家をつくっても売れるのか?

●メインバンクロスの会社が顧客で大丈夫か?

会社が顧客としている中小住宅事業者は財務基盤が弱く、銀行から見放された存在。

そんな顧客から資金を資金を確実に回収できるのか?

ちなみに、会社の営業収益が71憶円に対して営業未収入金が75憶円積みあがっていることをどのようにとらえているのか?

そもそも、メインバンクを失った会社に貸し付けする際はリスクを考え高金利になるはずです。

ウッドショック呼ばれ木材価格が高騰している現在、そこまでしてビルダーに融資することが本当にビルダーのためになるのか疑問を感じます。

●住宅金融事業ではそれほど儲かっていない

営業収益構成比で住宅金融事業は、住宅瑕疵保険等事業ほど儲かっていません。

MSワラントで調達したお金で商品を拡充したにもかかわらずです。

何のための資金調達だったのか?

儲からない事業に資金を投じる理由が分からない。

●SDGsのトレンドを無視

ほとんどの上場会社において株主通信等でSDGsの取組について紹介されているのにこの会社の招集通知にはそのような記載がない。

いまどき珍しい会社です。

そもそも、住宅関連事業においては中古住宅などの伸びが著しいなか、中小住宅供給会社が従来通りの仕事を続けるのは日々、難しくなってきているのではないだろうか?

●「デジタル化による生産性向上・利益確保」とはいうものの・・・

会社が考える対処すべき課題のなかに、「デジタル化による生産性向上・利益確保」というこうもくがある。

しかし、口で言うほど容易なことではないと考える。

リブワークというネットを駆使した住宅供給会社があり(株主でもありますl)、増収増益を続けている一方で、株価は低迷しています。

クラウドサービスを導入したからといって、著しく事業展開が向上すると考えるのなら、ちょっと認識が甘いのでは?

●そもそも、ビルダーをサポートする前に会社そのものの財務は大丈夫なの?

安全性を分析し、会社自体の財務基盤の脆弱性があきらかになっています。

ひょっとしたら、MSワラントで資金調達せざるを得なかったのは金融サービス拡充ではなく、自社が生き延びるための手当ではなかったのか?そんな疑念さえ生じます。

最後に

株主として、厳しい指摘がつづきました。

ではなぜ、株主でいるのか?と疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。

株式を保有している理由は、このようなある意味ユニークな会社の末路を見届けたいという好奇心(クックパッド)と同じです)からです。

ただし、最悪の事態も覚悟しておかなければならないと考えています。

引き続き、リスク管理を徹底しつつ会社の様子をモニターしていきます。

株主優待のカタログギフト】

4 まとめ

日本モーゲージサービスについて述べてきました。

株主優待、MSワラントなど特徴のある会社ですが、デフレからインフレの時代の転換に置いて必死に生き残ろうする姿勢が感じられました。

今後の事業展開の成否は株主を含むさまざまなステークホルダーの理解と支援にかかっていると思います。

そのためにも誠実かつ真摯な経営を期待します。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

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