こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

ENEOS【5020】〜株主総会雑感

初投稿:2021.8.11、更新日:2022.7.27

こんにちは!

この記事は、ENEOS5020】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新か所は青字です)。

・減収増益の理由は?

・事業転換について

★★★

【目次】 

ENEOS水素ステーション東京湾岸エリア】

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1 ENEOSについて

⑴ 会社概要

 ガソリンスタンドでおなじみのENEOSです。

国内シェア5割の石油元売り首位。

けれども、銅などの非鉄事業、ひいては新規事業展開にも積極的に取り組んでいます。

株主総会招集通知から経営理念、体制、計画等を抜粋します。

総資産9.6兆円、売上高10.9兆円、時価総額1.6兆円の事業規模。

PBRは0.57倍とマーケットからの評価はとても低いです。

使命

地球の力を、社会の力に、そして人々のくらしの力に。

エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献します。

大切にしたい価値観

・高い倫理観

・安全・環境・健康

・お客様本位

・挑戦

・向上心

ENEOSグループ運営体制

・エネルギー事業:ENEOS株式会社

・石油・天然ガス開発事業:JX石油開発株式会社

・金属事業:JX金属株式会社

・その他事業:株式会社NIPPO

財務計画

・営業利益(在庫影響除き):9,700億円(2020~2022年度累計)

・設備投資/資産売却:1兆5千億円、1,500憶円(同上)

・フリーCF:1,500憶円(同上)

・ネットD/Eレシオ:0.8倍以下(資本合計ベース)

・ROE:10%以上

・総還元性向50%以上(在庫影響除き当期利益ベース)

※ネットD/Eレシオ(有利子負債比率、デットエクイティレシオ)は長期の支払い能力(安全性)を見る時に使われる指標。

・計算式
(前期末有利子負債-前期末現金同等物)÷前期末自己資本×100

事業戦略

基板事業

・石油精製販売事業:サプライチェーン改革

・石油・天然ガス開発事業:競争力強化

・銅資源・精錬事業:銅精錬事業・リサイクル事業の一体運営

成長事業

石油化学事業:ケミカルファイナリー化の推進

・素材(電子材料等)事業:高機能・高付加価値な先端素材供給

・次世代型エネルギー供給・地域サービス事業:SSネットワークの活用

・環境対応型事業:リサイクル(廃プラ・金属・EV電池)、CCS、CCUS

※CCS:二酸化炭素回収・貯蔵

 CCUS:二酸化炭素回収・有効利用・貯蔵

⑵ 株主になったきっかけ

 バリュー株(資源関連)かつ高配当なので2021年の春に購入しました。

⑶ 2022年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:14%

売上高営業利益率(10%以上が優良株):7%

収益性は低いですが、前期よりも営業利益率が3%上昇したことは評価できます。

なお、会社資料で3ヵ年のROEが11%となっていますが、自社株買いの影響もあるので、収益性の向上にしっかりと努めることが望ましいと思います。

安全性

流動比率(200%以上が望ましい):131%

自己資本比率(30%以上が望ましい):34%

資料ではネットD/Eは0.8倍を意識しているとのこと。

でもそれは短期の安全性。

中・長期的にはちょっと気になる水準

前期と比べても変化はありません。

自社株買いをしているので自己資本比率が向上しないのは当然です。

効率性

棚卸資産回転率:5.48

前期同様、市場平均を下回っています。

ちなみに、同じ資源関連銘柄のINPEXは26回を上回っています。

ENEOSの経営についての効率性には課題を抱えていると考えます。

⑷ 2021年3月期の経営分析

コロナ禍の厳しい環境下にもかかわらず、減収増益です。

■収益性

売上高営業利益率:3%

会社から、堅調な石油製品マージンと電子材料の増販等の影響とのことです。

■安全性

流動比率:114%

・負債比率:193%

自己資本比率:34%

財務基盤については盤石とまでは言えません。

しかし、財務計画でネットD/Eレシオ0.8倍を掲げていることから安全性に留意した経営がなされていると考えます。

■効率性

棚卸資産回転率:5.91

一般に平均が10程度であることを考えると、在庫が多いと言えそうです。

石油製品の販売減の影響だと考えます。

コロナ禍が長期化する前提でより効率的な経営努力が求められています。

株主総会が開催されたパレスホテル】

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2 株主総会

⑴ 2022年6月の株主総会

第12回定時株主総会2022年6月28日(火)パレスホテル「葵」

ライブ配信を視聴しました。

ビデオで事業報告、対処すべき課題、監査報告まで紹介されていました。

取締役と監査役はよほど株主の前で話をしたくないようです。

主な質疑応答

Q.ガソリンスタンド向け(B to C)IR強化について

A.検討する。

Q.水素ビジネスの展開について

A.まず素材で収益を上げ、次に再エネの一環としてCO2フリー水素を海外から輸入する予定。

Q.再エネとSAF(持続可能な航空燃料)の展開について

A.所要の技術開発を通じてCO2フリー水素を原料とするエネルギーを実用化することでカーボンニュートラルを実現する。

SAFについては2027年からの義務化を踏まえて、航空燃料の10%をSAFに置き換えるよう、三菱商事等と協力しながら対応していく。

Q.円安の影響について

A.想定為替レートは120円のところ現状は135円。

エネルギー、石油、金属の3事業ともにプラスの影響が生じている。

Q.自社株買いに比べ配当性向13%は低いのではないか?

A.総還元性向は55%。

成長性と株主還元のバランスを考慮している→自社株買いの巨額さを問題にしている株主の質問に対してズレた回答

Q.JX金属のチリ銅鉱山の状況について

A.ロイヤリティ法案による銅鉱山の国有化に伴う増税の懸念があるが、現状は上院にて審議中の状況である。

Q.JX金属敦賀リサイクル株式会社の事業の終了は、SDGsに掲げる人権尊重(地方の雇用)に矛盾する行為ではないか?

A.議案と関係ないので答えない。

決議事項

・剰余金処分の件

・定款中一部変更の件

・監査等委員でない取締役12名選任の件

・監査等委員である取締役3名選任の件

拍手を持って賛成・可決されました。

終了後に新役員の紹介があり散会となりました。

株主総会雑感

株主を軽視する株主総会だったと感じました。

理由は、質疑応答と株主還元の2つ。

例えば、自社株買いと配当のバランスが悪いという質問に対して、自社株買いのことには触れず、成長のための内部留保と株主還元の話にすり換えて回答していました。

このことは、”質疑応答の程をなしていない”ことに通じます。

しかも、社長の原稿棒読みの様子ライブ配信でも明確に伝わりました。

おそらく、ENEOSの現社長は社内のことを良く掌握していないのでしょう。

そして、株主との対話の意義を理解し、真摯に応えようとする姿勢も欠落していたように思います。

株主還元についても疑問を持ちました。

一般に自社株買いに対しては

ROEの向上

・株主構成の変化(高値で売り抜ける機会の提供)

・経営陣が株価にコミットメントしているというメッセージ

などの効果があります。

その一方で、

ROEが上がっても収益性や回転率の向上ではなく一時的な会計マジック

・長期の株主への恩恵がない

などのデメリットがあります。

よって、配当と自社株買いのバランスが大切になってきます。

自社株買いに走る会社にはENEOSの他三井物産がありますが、いずれも個人的には二流のイメージ(トップになれない)があります。

実際、株主からの自社株買いの多さについての指摘に対して、論点をすり替えて回答を避けた姿勢は二流会社であることの証左と認識しています。

⑵ 2021年6月の株主総会

第11回定時株主総会 2021年6月25日(金) パレスホテル

会場は本社横のパレスホテルでした。

珍しいです。

会社所在地が東京都千代田区大手町1丁目1番2号なので本社の横です。

ちなみに、同じ三菱グループ三菱ケミカル三菱地所株主総会場所は三菱地所系列のロイヤルパークホテルでした。

パレスホテルが選ばれたのは、大型化合併会社のため三菱グループの影響が小さいためでしょうか。

残念ながら不参加でしたが、ライブ中継を見ています。

スライドを用いて社長から事業報告と対処すべき課題等について説明がありました。

丁寧な説明だったと思います。

脱炭素時代、ENEOSのような会社は事業転換を行うとともにその姿勢を分かりやすく市場や投資家に理解してもらう必要があります。

そのことを認識した上でのプレゼンだったと思います。

主な質疑応答

(事前質問:200問の中から代表的なもの)

Q.株価対策について

A.現状の株価に満足していない。新規事業の育成等により対応する。

Q.配当について

A.減配せず、安定配当に努める。総還元性向50%を目指す。

Q.カーボンニュートラルについて

A.2040年に石油は半分(1,700万トン)になる前提で事業構造改革に取り組んでいる。

(会場から)

Q.五輪ゴールドパートナーであることのメリットとデメリットは?

A.五輪開催の趣旨に賛同し2015年からゴールドパートナーとなり、宣伝効果は得られた。ただし、コロナ禍による自粛や各種製薬の影響を受けた。

Q.ワクチンの職域接種の状況は?

A.6月24日現在、1万人分を確保し本社→東京→周辺地域の順に接種を実施。

Q.JSRからのエストラマー事業の買収についての効果は?

A.高機能の合成ゴムは競争力がある。買収前に60憶円のコスト削減を実施してもらうことになっている。当社が描く、エネルギー・素材企業となるために不可欠。

Q.水素が普及しない理由は?

A.コスト高が主な理由。自動車燃料だけでは限界。発電所などで大量に消費されれがコストが下がり普及すると思慮。

Q.知多、大阪の土地を早期売却した方がいいのでは?

A.土壌工事をして売却するか、太陽光発電用地として利活用するかなど、検討を継続する。

Q.旧モービルとENEOSの決裁システムの統合はいつ?

A.まもなく実現する。

Q.国際紛争等の地政学的影響に対する対応は?

A.リスク管理を徹底し、総合的に対応していく。

⑶ 株主還元    

配当

2022年3月期:22円

2021年3月期:22円

2020年3月期:22円

2019年3月期:21円

2018年3月期:19円

コロナ禍の厳しい期間を含め増配基調であることは評価できます。

ただし、株主還元という点では自社株買いを少なくして増配すべきだと考えます。

株主優待

なし  

自社株買い 

発行済株式総数の9.3%に相当する3億株、1,000億円の自己株式を取得するとのこと。

自社株買いには積極的。              

3 株主としてのコメント

 ⑴ 減収増益の理由は?

持株会社の中で減収増益というのは珍しいです。

売上が減っているのに利益が増えるというのは”単価”が高まっていることを意味します。

マクロ経済的に考えると、世の中にカネとモノの2種類が存在するモデルを考えると、日米欧の中央銀行が大規模金融緩和のもとで、カネを増やしている現在、相対的にモノの希少価値が上がる論理が成り立ちます。

いわゆる、貨幣数量説です。

ENEOSの減収増益も、単価=モノと考えると納得がいきます。

そして、2023年のテーパリングまではこの流れが続きますので、その意味では業績が大きく落ち込む恐れは少ないのではないかと考えます。

⑵ 事業転換について

脱炭素時代、基盤事業が石油元売りの会社と聞いただけで誰もが、会社存続に甚大な影響が出ると想像すると思います。

けれども、実際には成長事業として水素ステーションの展開、二酸化炭素の吸収・有効利用・貯蔵(CCUS)、素材など様々な試みがなされています。

同時に、株主総会を通じて会社が変わろうとしていることを市場や投資家に広くアピールする姿勢も好感が持てました。 

売上高7兆円を超える巨大企業のビジネスモデルの転換に挑戦する経営を配当を頂きながら株主として応援していきたいと思います。

4 まとめ

ENEOSについて述べてきました。

現経営陣の株主軽視の姿勢株主総会ライブ配信を通じて伝わってきました。

日本のエネルギーを考えると応援したい気もありますが、その気持ちはINPEXに注ぐことにしたいと思います。

ROEの3ヵ年平均11%と発表しつつ、巨額の自社株買いに依存しているのが現状。

優秀な人材を豊富に抱えているのなら、利益率や回転数を上げる王道によりROEの向上を目指すべき。

王道を避け会計マジックに手を染め自社株買いに走る二流の経営の末路がどのようになるかは興味がありますが、利益を確定してしばらくは距離を置きたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

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