初投稿:2021.7.13、更新日:2021.12.16、2022.7.22 、2023.1.5
こんにちは!
この記事は、NTT【9432】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、株主通信とオンライン会社説明会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・絶好調な業績
・社員へのビジョンの浸透について
★★★★
【目次】
【NTT本社が所在する大手町ファーストクスエア(イーストタワー)】
1 NTTについて
⑴ 会社概要
日本電信電話株式会社(NTT)は日本を代表する通信会社です。
旧電電公社というイメージもあります。
株主総会の招集通知の事業報告の中でも
事業活動を通じた社会的課題の解決
と記載。
情報通信の力で日本を、そして世界を変える力を持った企業です。
総資産23兆円、売上高12兆円、時価総額14兆円の事業規模。
PBRは1.68倍の評価を得ています。
セグメント
●総合I CT事業:NTTドコモ、NTTコミュニケションズ、NTTコムウエア
●グローバル・ソリューション事業:NTT、NTTデータ
●その他(不動産、金融)
上記4区分となっています。
比較的バランスの取れたセグメントと考えます。
⑵ 株主になったきっかけ
実は、一番初めに買った株がこのNTTです。
30年以上も前のこと。
もちろん、購入後数年で利益を確定しており、ずっと持ち続けたわけではありません。
最近、再度株式を購入したのは、ドコモの子会社化がきっかけ。
NTTグループの総力を挙げて、5G、6G、IOWN構想などに取組む姿勢に著しく共感したため、応援の意味を込めて投資しました。
YouTubeでさまざまなNTT関連の近未来的なハイテク動画を見ると、
”血が騒ぐ”
くらい”電子立国日本”世代としてのテンションが上がります。
⑶ 2022年3月期の経営分析
収益性
・売上高営業利益率(10%以上が優良株):15%
高収益です。
しかも、前期より1%の向上。
さらに、ドコモ完全子会社化のシナジー効果はこれからということで期待が高まります。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):91%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):38%
盤石とは言えず多少懸念される水準です。
ドコモ完全子会社化のための有利子負債の影響かもしれません。
ただし、前期よりも改善されているので推移を見守りたいと思います。
効率性
・売上債権回転率:3.37
・有形固定資産回転率:1.3
売上債権回転率については、前期同様に低い水準が続いています。
また、有形固定資産回転率も決して高い方ではありません。
なお、単体のB/Sによると有形固定資産1300億円のうち「建物」が710億円、「土地」が277億円、「工具、器具及び備品」が248億円となっています。
NTT自体には自社ビルはないものの、ドコモ(代々木)やデータ(豊洲)は立派な自社ビルがあることが影響しているものと推察します。
⑷ 2021年3月期の経営分析
業績は増収増益、過去最高益を更新しているということで安心感があります(菅政権下で携帯電話料金が大幅に引き下げられたにもかかわらずの好業績はNTTグループのポテンシャルの高さと考えます)。
同時に、”NTTがリモートワークを基本とすること”が大きく報道されたことから分かるように、NTTの変化が社会に与える影響は極めて大きいと考えます。
株主としては、安定と変革の2つがNTTの最大の魅力ととらえています。
収益性
・売上高営業利益率:14%
収益性は高いと思います。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):72%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):36%
短期の安全性を示す流動比率は目安を下回っています。
中・長期の安全性を示す自己資本比率も意外と低い数値です。
安全性(財務)を軽視あるというよりは、リスクを取った経営を重視しているように考えます。
効率性
・売上債権回転率:3.38
サービス業の平均が30を超えていることを考えると、債権の回収が滞りがちのように分析されます。
巨大なグループ企業ゆえ、経営の効率化については改善の余地が大きいと推測されます。
⑸ NTTグループ注意経営戦略の見直し
新たな戦略の枠組みとして下記のように説明されています。
●新たな経営スタイルへの変革
・リモートワークを基本とする新しいスタイル
●国内/グローバル事業の強化
・申請ドコモグループの成長・強化
・IOWN開発・導入計画の推進
・グローバル事業の競争力強化
・B2B2Xモデル推進
・新規事業の強化
●企業価値の向上
・新たな環境エネルギービジョン
・災害対策の取組
・株主還元の充実
残念ながらすべてを理解するには至りませんが、情報通信業界、ひいては日本の社会がの方向性を見極める上では参考になることが多いと思います。
NTTがリモートワークを基本とすることで、それに倣う会社も増えていくことが予想されます。
そういった変化の中に投資のチャンスとリスクが含れており、しっかりと学ぶ価値があると考えます。
【株主通信2021年12月号】
2 株主総会等
⑴ 2022年12月のオンライン会社説明会等
動画のリンクは下記の通りです。
株主通信2022年12月号の主なポイント
・社長メッセージは
①CX(カスタマーエクスペリエンス)をEX(エンプロイーエクスペリエンス)で創造
③巨大災害が起こった時でもインフラや受容システムを繋ぎ続ける
の3点。
特に、「コミュニケーションをつなぐ会社」から「データをつなぐ会社」として社会課題を解決する会社をミッションとする姿勢が印象的でした。
・業績は増収・減益
減益の要因は電気料金の高騰などの影響とのこと。
・IWON1.0「IWONサービス」スタート
APN(オールフォトニクスネットワーク)のサービス提供を2023年3月に開始
ちなみに、APNは現在のネットワークに比べて
●電力効率100倍
●伝送容量125倍
●エンド遅延1/200
の実現を目指すとのことで、期待しています!
オンライン会社説明会
2022年12月20日(火) 2000〜2100
【主なポイント】
・資産形成手段のひとつとしてのNTT〜高配当、株価の上昇トレンド等説明
・NTTグループのビジネス〜セグメント説明、事業再編、リモートワークやIWON紹介
・足元の業績〜過去最高
【質疑応答】
Q.事業投資について(配当による圧迫)
A.先に投資を行い残ったフリーキャッシュフローから配当を捻出しており心配ない。
Q.株式分割について
A.東証が推奨する5〜50万円の投資単位を踏まえ検討していく。
Q.電気料金上昇の通期業績への影響について
A.当初2割の上昇を想定していたが、実際は4割の上昇となった。
下半期は効率化と事業拡大によるリカバリーを目指す。
Q.現在の株価について
A.一次売り出し価格119.7万円(分割:2934円)は上回ったが満足できるものではない。
PERは11〜12倍と低いため、非財務の価値を高め伝えることに注力する。
Q.利上げの影響について
金利については7.4兆円の有利子負債の金利0.6〜0.7%で年間の利払いは約500億円である。
金利上昇に伴う増加分は70億円程度と見込んでおり、フリーキャッシュフローが1兆円あることを踏まえれば影響は大きくはない。
為替については現地で仕入れをする特徴があるためあまり影響は受けない。
Q.ドコモの完全子会社化について
A.良かったと考える。
4兆円を投じてドコモ株の1/3を取得した。
財務的に考えれば約1300億円の配当と約1000億円の自社株買いの”流出”がなくなるため、それだけで年間5%のリターンとなる。
ビジネス面では、ドコモとコミュニケーションの一体となった提案(モバイル&固定さサービス)が可能となり、法人営業を中心に利益が上昇している。
さらに、ドコモとコミュニケーションのインフラ統合による効率化が期待される。
Q.何故、株主優待は毎年出さないのか(30年間の株主)?
A.当初の目的は株主数の減少に歯止めをかけることでその点では一定の効果があった。
株主優待については検討を継続する。
Q.NTTは固定電話の会社でなければ何の会社なのか(一言で)?
A.課題解決のための”つなぐ”会社・・・。
株主としての雑感
『NTT2030年世界戦略「IWON」で挑むゲームチェンジ』を読んでいたので、ちょっとオンライン説明会の内容では「ちょっと物足りない」と感じました。
ただし、IRは双方向の情報(意見)交換が大切という説明には共感しています。
会社をビジョンレベル、戦略レベル、オペレーションレベルの階層ごと評価すると
●ビジョンレベル:澤田会長の世界のトレンドを掴んだビジョン:○
●戦略レベル:IWONによるゲームチェンジ:◎
●オペレーションレベル:?
と感じています。
オペレーションが?の理由は2つ。
・会社説明会でNTTは何の会社?という問いに明確に答えられていなかった。
・リモートワークでビジョンの共有がどのようにして為されるのかの説明がなかった。
役員を含む社員全員に会社のビジョンがどの程度浸透しているのか、気になりました。
話はずれますが、日本一年収の高いM&Aキャピタルパートナーズという会社では、毎週月曜日に経営理念を唱和しているとのこと。
NTTはもちろんベンチャー企業ではありませんが、将来に向けて更なる飛躍を遂げつつゲームチェンジャーになれるかどうかは、社員へのビジョンの浸透にかかっているように感じました。
そしてそのことが「CXをEXで創造する」ことの第一歩と考えます。
なお、個人的にはNTTは”情報通信”の会社と思っています。
⑵ 2022年6月の株主総会
ライブ配信で視聴しました。
印象に残っているポイントは下記の通りです。
・業績は増収増益、過去最高益、当期利益が始めて1兆円超え
・NTTドコモのNTTコミュニケーションズ及びNTTコムウエアの完全子会社化
・サステナビリティ憲章(SDGs,ESG,CVS),9つのチャレンジ,30のアクティビティ
・EPS目標320円を2年前倒しで達成し、370円に見直し
・12期連続の増配、自己株式の買付は合計4.7兆円
主な質疑応答
【事前】
Q.NTTドコモグループの成長・強化について
A.組織再編により2023年に2,000億円のシナジー効果を目指す。
Q.グローバル事業強化について
A.NTTデータを中心とする合弁会社により2025年に300億円のシナジー効果を目指す。
Q.株主還元について
A.増配を継続しつつ、機動的な自己株式の取得を実施する。長期株主政策としてのdポイントの株主優待も継続する。
Q.取締役8名から10名の増強について
A.多様性の向上による戦略的議論の活性化のため。
【会場】
Q.(36、7年間の株主より)ようやくキャピタルゲインを得た。バーチャルオンリー株主総会について。
A.バーチャルオンリーの株主総会は感染症拡大などの有事のみに実施する。
A.製品・サービスの提供を始めている。
Q.勤務地を原則自宅にすることによる社員の一体感醸成について
A.ビジネスチャットを駆使したり、個別に出勤なども促しながらハイブリッドで対応している。
Q.(OBによる)パワハラについて
A.別の場において(昨年に引き続き)いくらでも対応する。
Q.マイクロソフトのようなOSづくりについて(坂村健取締役への質問)
A.この業界は変化が激しく、何度でもチャレンジできる。
特に、今はインフラチェンジの時代であり、IOWNを中心にチャレンジを続ける。
Q.タウンページの情報についての著作権違反について
A.適時、所用の処置を講じる。
Q.個人的な質問をする株主について
A.株主総会は株主との対話の場であり、さまざまな意見が出るものと承知している。
Q.女性の負担軽減について
A.育児はマイナス評価ではないことを強調し、男性の育児休暇取得も推進している。
Q.イチローのCM起用について
A.商品やサービスに相応しいタレント起用に努める。
議長から一言
コロナ禍、携帯電話料金の値下げ、総務省接待を乗り越え、リモートワークなど一連の変革の方向性が策定された。
7月のドコモ統合、10月のグローバル会社の再編、IOWNの推進などの支援をしっかり継続する。
NTTグループへのご理解・ご支援をよろしくお願いいたします。
決議事項
・剰余金の配当の件
・定款一部変更の件
・取締役10名選任の件
・監査役2名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
株主総会雑感
会社の業績は絶好調で将来への夢が感じられる会社からの説明を受けました。
それに対して、株主からの質問にはちょっとがっかりしました。
「議長からの一言」として株主総会に相応しい総括をしなければならなかったのもやむを得ません。
NTTの株主構成において個人株主の割合は約16%と多くはありません。
けれども、数多くのサイレントマジョリティの中には心ある株主が少なくないと信じています。
次回からは企業価値の向上に資する質問が増えることを願っています。
⑶ 2021年6月の株主総会
第36回定時過分主総会 2021年6月24日(木)グランドプリンスホテル新高輪
ライブ中継参加
事業報告の中で、ドコモのTOBの経緯や総務省接待事案に対する陳謝及び説明がなされました。
主な質疑応答
(事前質問に対する回答)
Q.コンプライアンス対策は?
A.会食の関するルールの設定。研修、事前及び事後のチェック
Q.総務省接待事案の責任の取り方は?
A.報酬減額及び厳重注意など
Q.モバイル市場における競争激化への対応は?
A.ahamaの契約が100万契約となるなど、予想以上に好調な状態である。
Q.グローバル事業の今後の見通しは?
A.NTTデータおよびNTTリミティドに対してコスト削減及び高付加価値化の推進をすすめる。
Q.役員報酬の改定とは?
A.固定報酬:賞与(金銭):株=5:3:2とすること。
(会場からの質問に対する回答)
A.本事案を極めて重く受け止めており、高い倫理観をもって対応していきます。
Q.(パワハラが原因で退職に至ったと主張する株主からの)コンプライアンスがこわれているのでは?
A.(NTT西日本の副社長から)2006年の事案に対してはパワハラではないと認識。その後、ひとつひとつのパワハラの訴えに対しては真摯に対応し続けている。
Q.子会社や孫会社の給料をもっとアップしては?
A.毎年2%給料はアップしている。
Q.105円の配当の妥当性は?
A.株主に対する継続的な増配を重視している(2011年から継続増配)。
Q.株を買い増したくなるような夢のある話をしてほしい!
A.6GやIWONなどのグローバルな構想に従いR&Dの力やプロダクトにより世界的な課題解決に取組んでいる。
また、電気から光へエネルギー革命に通じるような世界初となる半導体を開発している!
採決
・剰余金処分の件
・取締役に対する業績連動型株式報酬等の額および内容決定の件
・取締役の報酬等の額及び内容改定の件
拍手多数で承認
・株主提案(取締役解任の件)
拍手なしで否決
⑷ 株主還元
配当
配当の推移は下記の通りです。
12年連続で増配です。
2022年3月期:115円
2021年3月期:105円
2020年3月期:95円
2019年3月期:90円
2018年3月期:75円
安定した増配はありがたいです。
株主優待
100株以上の2年以上の株主に対して所要のドコモポイントが付与されます。
2年以上3年未満:1500ポイント
5年以上6年未満:3000ポイント
エントリー制、口座開設&アンケートが必要かつ期間限定であり、毎年もらえるものでないところが特徴です。
保有期間が2年以上となる日を楽しみにしています。
自社株買い
2022年度は総額5000憶円強の自己株式取得を進めています。
1999年からの自己株式取得額は約5.1兆円となります。
【NTTドコモの本社ビル】
3 株主としてのコメント
⑴ 気になったこと
2020年にやる気のないNTTドコモの社長を解任してTOBを断行し、目を覚ましたNTT。
分割されるまでの輝いていたNTTが思い出されます。
1990年以降のバブル崩壊と分割以降の低迷30年を経たこれからのNTTに大いに期待しています。
ちょっと気になったのは、質疑応答の際に会社の回答の後に必ず沸き起こる拍手。
JALの時も拍手はありましたが、ふつうの株主からの自然な拍手でした。
TBSの時も会社回答の後に必ず拍手がありましたが、この時は、前2列にスーツ姿で座った複数の男性によるもので(同じような属性の方々でした)、こちらは”サクラ”だったと思います。
NTTの場合の拍手はどちらだったのか?ちょっと気になります。
思うに、心ある株主から
株を買い増したくなるような夢のある話をしてほしい!
という質問があったように、NTTは大勢の人々の愛で支えている面があると思います。
・日本が元気の良かった80年代を象徴する巨大企業
・電子立国日本の中核企業
・大学で電子工学を専攻した優秀な学生からの憧憬
NTTの復活に期待を寄せる人は少なくないと思います。
世界の課題を解決するという意気込みをもって王道を歩み続けることを期待します!
⑵ 雑誌の記事について
ある雑誌にて
”NTTが完全子会社化したドコモからキャッシュを搾り取る”
という批判的な内容の記事を目にしました。
でも、そもそもみんな電電公社。
それが日米経済摩擦を背景に強過ぎるという理由でNTTグループを分割してきたのが失われた30年。
これに対して、米中対立を背景に日米の協力関係が緊密化しているのが昨今の流れ。
当然、かつてのNTTが戻って来るのに何か問題でもあるのでしょうか?
左翼系の批判記事は、「公共性」と「起業性」を備えたNTTの実現の証左と認識しています。
4 まとめ
NTTについて述べてきました。
業績も絶好調で株主還元にも積極的な日本を代表する会社です。
同時に、単に株主に富をもたらしてくれるのみならず、日本ひいては世界の発展に大きく貢献する会社と認識しています。
株主として応援を続けます。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
#投資 #株式 #株主総会 #資産運用 #資産運用 #NTT #IOWN #APN