初投稿:2021.7.7、更新日:2022.1.12、2022.7.13
こんにちは!
この記事は、スバル(7270)に関心のある方に向けた株主としてのコメントを記したものです。
なお、2022年6月の株主総会のライブ中継を視聴した内容を追記し記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・伝統と技術力
【目次】
1 スバルについて
⑴ 会社概要
北米に強い自動車メーカーで、安全技術に強み。
総資産3.4兆円、売上高2.8兆円、時価総額1.7兆円の事業規模です。
PBRは0.92倍と市場からは厳しめの評価。
沿革
もともとは軍用機メーカーとして100年以上も前にスタート。
中島飛行機製作所として、第2次世界大戦中は東洋最大の航空機メーカーでした。
一式戦「隼」などの名機を生産。
経営理念等
●経営理念
”お客様第一”を基軸に「存在感と魅力のある企業」を目指す
●提供価値
安心と愉しさ
●ありたい姿
笑顔を作る会社
セグメント
●自動車事業
●航空宇宙事業
●その他(不動産)
中期経営ビジョン「STEP」
・2018~2025
●「組織風土改革」
●「品質改革」
●「SUBARUづくりの刷新」
資本政策
・主力市場の米国でのシェア5%
・業界高位の営業利益率確保(8%)を目指す
・研究開発支出:1,200億円レベル/年
・ネットキャッシュ2月商分
・自己資本比率は50%以上
・ROEは15%以上を目指す
・連結配当性向:30~50%
⑵ 株主になったきっかけ
自動車会社の中で北米に強くコロナ収束と円安の恩恵を受けられると考えて2021年に株主となりました。
配当も2.5%と比較的高いと考えたためNISA口座で保有。
技術力の高さと安全に対する姿勢も応援しています。
⑶ 2022年3月期の経営分析
当期の業績は減収減益。
部品の供給制約の継続が主な原因とのことでした。
ちなみに、トヨタは売上高、営業利益、利益ともに過去最高益とのこと。
収益性
・売上高総利益率:18%
・売上高営業利益率:3%
収益性は高くありません。
昨年からの改善も緩慢です。
同業他社と比較しても収益性の低さは明らかです。
半導体不足で生産ができないことが課題となってますが、売れ出してからの収益性についてもモニターしていきます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):240%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):54%
安全性については問題はありません。
効率性
・有形固定資産回転率:3.26
昨年と顕著な変化はありません。
平均的な効率性を維持していると考えます。
⑷ 2021年3月期の経営分析
収益性
・売上高営業利益率:4%
安全性
・流動比率:227%
・負債比率:91%
・自己資本比率:52%
コロナ禍に直撃されても財務面は問題なさそうです。
効率性
・売上債権回転率:8.28
・棚卸資産回転率:6.75
・有形固定資産回転率:3.37
製造業の平均と比較してもそれほど大きな差は認められませんでした。
お金の効率的な使い方は平均的と言ってよいと思います。
【中島記念公園】
2 株主総会等
⑴ 2022年6月の株主総会
第91期定時株主総会 2022年6月22日(水) EVENT SPACE EBiS303
ライブ配信を視聴しました。
社長による説明の主なポイントは下記の通り。
・役員、監査役の紹介(珍しい)
・部品不足による減収減益
・バックオーダー(受注残高)多数
・航空宇宙部門の需要回復待ち
・中期経営ビジョン(STEP):組織風土改革、品質改革、SUBARUらしさの追求
主な質疑応答
【事前】
Q.バッテリーEVを中心とした脱炭素の取り組みについて
A.当初は矢島工場の混流ラインで生産し、近い将来専用ラインを立ち上げる。
【会場】
Q.北米事業の展開について
A.バックオーダーは5万台(1ヶ月分)ある。
また、計画は94万台だが、要望は110万台以上ある。
北米は、ご安心下さい。
Q.中国ビジネスの見通しについて
A.以前は年間5万台を生産していたが今は2万台。
現地に生産工場を有していないことが原因。
中国市場は北米市場との親和性もあるので、状況を見ながら事業展開を続ける。
Q.株価とIRの遅れについて
A.例えば減産のニュースがトヨタで発表された後に遅れてIRを出すことで2度株価に影響を与えているという指摘は真摯に受け止める。
生産については6、7月は通常通り実施する予定である。
Q.半導体不足への対策について
Q.モータースポーツへの復帰は?
A.モータースポーツへ参加する意義には、ブランドアップと技術開発がある。
現在、マイナーな大会に参加しているが試作車を走らせることができるので技術力の向上に大いに貢献している。
Q.女性経営者について
A.数合わせの登用はしない。
また、女性の嗜好を取り入れたクルマ作りにも力を注いでいる。
北米ではフォレスターのオーナーの7割が女性である。
Q.北海道で使えるEV車について
A.寒冷地での電池の消耗については発展途上の分野である。
移動の自由を提供する会社として要望に応えるべく頑張る。
Q.5年前に生じた完成検査問題(燃費改ざん)について
A.コンプライアンス徹底ということで組織風土の改革に努めている。
終わりのない取り組みではあるが、風通しの良い、何でも言い合える会社への手応えを感じている。
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役9名選任の件
・監査役1名選任の件
・補欠監査役1名選任の件
・取締役に対する譲渡制限付株式の付与のための報酬決定の件
拍手を持って賛成・可決されました。
株主総会雑感
株主の質問は車好きで車に精通している方が多かったご様子。
質疑応答を視聴していていろいろと勉強になりました。
ただし、その車好きが、実は会社の経営に対してどこまで寄与しているのかについて疑問を感じました。
というのも、ドラッカーの言葉で
というように、グループ全体を俯瞰する広い視野が何よりも重要です。
トヨタとの差は、全体を見渡して”想定外”の影響を局限できたかどうかの違いであると考えます。
今回、半導体等の部品の供給不足については対策が語られていました。
でも、次の問題は材料費の高騰。
それに対する事前準備はどこまで進んでいるのか?
株主からIRが遅いという指摘がありましたが、全体的に経営のスピードも良くわかりません。
より幅広い視野を持った全体最適に資する経営を期待します。
⑵ 2021年6月の株主総会
第90期定時株主総会 2021年6月23日(水)ウエスティンホテル東京
参加せず。
⑶ 株主還元
配当
一株につき28円
配当性向は56.1%
3 株主としてのコメント
⑴ 人の命を預かる真面目な会社
招集通知は70頁に及ぶカラー印刷で、写真、図、表を駆使しながら細かいデータもしっかりと盛り込まれており、読み応えがありました。
株主に対する説明責任をしっかりと果そうとする姿勢の表れと思います。
そもそも、車というのは人の命にかかわるもの。
車メーカーとしてとての真面目さが伝わってきました。
特に、中期ビジョンを示すとともに資本政策で数値目標を出している点も評価できます。
⑵ トヨタとの共同開発車ソルテラ(SOLTERRA)
水平対向エンジン等ユニークなエンジンに特徴を持つスバル。
時に心寂しいひとから、脱炭素時代の厳しさを指摘されることもあります。
けれども、しっかりと電気自動車にも取り組んでいます。
トヨタとの共同開発車ソルテラは2022の年央ごろに発売予定とこのと。
トヨタとスバルの”いいとこどり”したEV車、楽しみです。
⑶ 株主通信を読んで感じた不満と不安
2021年の秋に、第91期株主通信(2021.4.1〜2021.9.30)が送付されてきました。
半導体不足を理由に下方修正したことが記載されていました。
一方で、自動車メーカーの中でもスバルは他社に比べて半導体確保については”出遅れている”と報じられています。
”株主通信”にはその”出遅れ”についての原因の究明やそれを取り除いた上での対策いついての言及ががなく精神論・抽象論で終始されていて、説明責任に対する不満を感じています。
もう一つの不満は、
『株主様限定イベントとしたSUBARU技術説明会〜SUBARUの「あんしんと愉しさ」を支える技術開発 その最新情報をお届けします』
についてです。
・何故、1000名限定なのか?
・何故、全株主を対象としないのか?
・何故、2022年3月21日1600〜1700なのか?
・何故、株主通信送付後速やかにイベントを実施できないのか?
・何故、リアル視聴なのか?
・何故、録画配信しないのか?
・1600〜1700に時間を都合できる株主がどれほどいると想定しているのか?
などなど
スバルは技術力は高いと考えますが、半導体で他社に出し抜かれていることから営業力が弱いこと推測されます。
同時に、このイベントから企画力も期待できないと感じました。
一般的に、自動車業界で企業が生き残るにはデザイン力(構想力)とビジネス構築力が不可欠と言われています。
エンジニアこそビジネス感覚が必要とされています。
その意味で、今回の株主限定イベントに不満を感じます。
最後は、株主通信を読んだ不安について。
A2版の1枚が身の裏一面が「SOLTERRA」の広告でした。
株主=消費者ではありません。
株主通信を商品の広告にしてしまってどうするんですか!?
もっと他に、伝えることはないの?
良い商品やサービスは当たり前。
株主が知りたいのは、それを生み出す”仕組み”や会社の成長ストーリーです。
株主へのメッセージとして、ビジネスの仕組みや成長戦略に対する説明の代わりに商品のカタログを掲載出来てしまう経営感覚。
不安です。
4 まとめ
何故、同業他社であり筆頭株主のトヨタが売上高、営業利益、当期利益において過去最高益だったのに、SUBARUは減収減益だったのか?
「あらゆる部分最適は全体最適には敵わない」という言葉はよく耳にします。
SUBARUが戦中、一式戦「隼」などの名機を生み出し、東洋最大の航空機メーカーだったことを考えるとその凋落の原因には歴史的に全体最適の発想の希薄さがあったのだろうと推測します。
それは現在においても同じ。
高い技術力はあるものの、半導体で出遅れている営業力や、遅れが指摘されたIRやセンスのない株主通信に象徴される情報発信力不足、その場さえ誤魔化せれば良いという発想生じた完成検査の不正などは、狭い視野でしか物事を考えられないことの証左です。
「ピンチはチャンス」
この厳しい環境をうまく捉えより広い視点を持って全体最適を目指す企業となることを要望します。
お読み頂き、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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