こげぱんの資産運用

ピンチはチャンスなりをモットーに株式投資を中心とした資産運用についてつづります

NTTデータ【9613】~株主総会雑感(3年間の組織改変の結果・・・)

初投稿:2021.6.4、更新日:2022.12.29、2023.6.23

こんにちは!

この記事は、NTTデータ【9613】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。

なお、2023年6月の株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。

・3年間の組織再編の結果

クラウドからエッジの時代へ  

【目次】 

NTTデータの自社ビル@豊洲

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1 NTTデータについて

⑴ 会社概要

NTTグループのSI専業最大手で、官公庁や金融機関に強みを持っています。

⑵ 株主になったきっかけ

昨年NTTがドコモを買収した際に、6Gで飛躍を目指すNTTとともに応援する意味で購入しました。

株価はその後、順調に推移して含み益を抱えています。

⑶ 2023年3月期の経営分析

収益性

・売上高総利益率:26%

売上高営業利益率:7%

収益性は苦戦していると考えます。

会社の中期経営計画目標の中で連結営業利益率は10%となっています。

ただし、M&A・構造改革とうの一時的なコストは除くとの記述あり。

どのようなプロセスを経て目標を達成するのか期待します。

安全性

流動比率(100%以上が望ましい):125%

自己資本比率(30%以上が望ましい):39%

安全性のついては短期的にも中・長期的にもギリギリ安心というレベルです。

指標についての変化はここ数年あまりありません。

効率性

・有形固定資産回転率:2.54

IT企業ですが、意外と有形固定資産は重いようです。

回転率そのものも2年前より落ちています。

吸収合併の過程で有形固定資産が増加したとため推測します。

⑷ 2021年3月期の経営分析

32期連続増収とのこと。

上場してからずっと売上増の状態が続いています。

 招集通知の計算書類から簡単な分析をしてみます。

収益性

売上高営業利益率:6%

あまり高いとは言えません。

安全性

流動比率:120%

・負債比率:157%

自己資本比率:39%

財務については思ったよりは良くない数値です。

効率性

・売上債権回収率:3.85

サービス業の平均より低めです。

規模はデカイですが、収益性、安全性、効率性の点で特に優れた経営がなされているとはいいがたい状況と分析します。

【まだまだ開発が続く豊洲地区】

2 株主総会

⑴ 2023年6月の株主総会

第35回定時株主総会2023年6月20日(火)NTTデータ品川ビル(アレア品川)

オンラインで視聴しましたが、途中で中座しています。

主な質疑応答

【事前】

Q.持株会社移行の狙いについて

A.さらなる事業拡大を図るための移行である。

3社のうちNTTデータグループについては、グローバル戦略構築に注力する。

NTTデータについてはコンサルに強みがあり、国内で1.6兆円の売上がある。

NTTリミテッドについてはデータセンタをはじめとするインフラに強みを持つ。

それぞれの会社の持ち味を活かし事業に専念する。

Q.海外事業統合の進捗と今後の見通しについて

A.統合後の半年間で、200億円の契約と2000億円の営業活動を実施している。

BMWのDX支援を例として、工場内の自動運転の実績もある。

子会社2社の良い点を活かした結果である。

Q.データセンター事業の収益性と財務健全性について

A.世界第3位の地位にあるが、競合他社との競争も激しさを増していく。

収益性と財務健全性を考慮して事業を推進する。

その際、収益性についてはROICの向上、財務健全性についてはNet Debt EBITDA倍率2.0を目途としている。

Q.サステナビリティ経営について

of ITにより電力削減に努め、by ITによりCDP(英国の環境関連NGO)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)から高い評価を得ている。

Q.株主還元、配当について

A.まずは、成長投資を重視していくことで株主に報いたい。

その上で、配当については安定性を重視し、5年平均の配当性向の維持を基準としていきたい。

Q.コンプライアンス、ハラスメント対策について

A.グループでの行動規範を定めるとともに、コンプライアンス意識を高める組織文化醸成に努めている。

第3者に通じる相談窓口の対応も実施中である。

Q.取締役の女性比率の向上について

A.東証が指導する2030年の女性取締役比率30%を目指している。

現状は23%となっている。

Q.為替の影響について

A.当社の売上の6割は海外であり為替対策は極めて重要。

”外貨建て資産と負債のバランス”や”オフショア取引”によってヘッジを行いマネジメントを実施している(金融専門の知識が乏しくて理解が及ばすすみません)。

・・・・

A.リミテッドの構造改革については、不採算事業や低採算事業からの撤退等を着実に実施している。

データとリミテッドのシナジー効果につてはパイプラインの増加などから効果が明らかである。

データセンター事業については多額の有利子負債(先行投資)を伴うが財務と収益のバランスを考えて実施している。

Q.25年の経営数値目標の見通しについて

現状の利益率は4.3%であるが、強い領域を徹底的に強くすることで10%の利益率の達成は前倒しで可能と見込んでいる。

Q.5Gが人体に与える影響について

A.人や生物に影響を与えないような調査・研究を継続する。

Q.日本経済新聞等には当社が良く書かれないことについて

A.IRやマスコミ発信に力を注いでいく。

Q.リミテッドについて金利負担が大きいことや海外の不採算事業が多いことなどから、合併は押し付けられた(早すぎた)のではないか?

A.ご存知の通り工場やイベントホールでのIOTは急速に普及している。

リミテッドはデータを安全に集めてその場で活用(エッジ)するとともに、クラウドに送信することに強みを有している。

技術動向としてクラウド中心からエッジへのシフトが見込まれる中でリミテッドとの統合は必要だった。

なお、リミテッドの稼ぐ力は直近で高くなってきている。

Q.6Gの進捗について

A.現在は5Gが普及が中心であり、工場等でのプライベート5Gが海外を中心に盛んに実施されている。

6Gについてはまだ、事業化の目処は立っていないが、技術陣と年に4回ミーティングしながら技術を事業に活かせる努力を実施している。

決議事項

・剰余金処分の件

・吸収分割契約承認の件

・定款一部変更の件

・会社説明でない取締役9名選任の件

・会社説明である取締役1名選任の件

拍手を持って承認・可決されました。

株主総会雑感

全部ではありませんが、株主総会丁寧な質疑応答は好感を持ちました。

株主からの質問も企業価値向上に資するものが多く勉強になりました。

3年前に株主になった時には、いい加減な経営陣と思って一旦は売却

その後、NTTによるTOB期待で再度保有

でも、3年ぶりに株主総会を拝見すると、いい会社になっていていたのでTOBに関わらず長期保有も良いかと感じました。

組織改変の過程で、磨きがかかったのではないかと推察します。

特に、クラウドの時代からエッジの時代を見越してグローバルトップ5を目指す事業姿勢を応援していきたいと感じました。

⑵ 2022年12月のオンライン会社説明会

2022年12月16日(金) 19:00〜19:50

オンラインを視聴しました。

専門用語が多く盛りだくさんの内容で理解するのに一苦労でしたが、色々と刺激を受けました。

リンクは下記のとおりです。

https://c-hotline.net/Viewer/Default/32491db931f3431b455a59496f9bc37dcc01

主なポイント

●会社紹介

・情報技術で新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊で調和のとれた社会を実現する

・56カ国で事業展開、19万人の従業員

・売上高は33期連続増収

・受注高・売上高・営業利益等で過去最高益

・売上高増の中心は4段階変化(公共→法人→海外→DX)

・海外事業を伸ばすことに注力(23カ国でシェア2%(ビジネスチャンス拡大の可能性大)を確保)

・国内:金融1位、公共:2位、法人:2位

・NTT Ltd.との事業統合の効果に期待

●成長戦略(新中期経営計画2022〜2025年)

・Global 3rd Stage

・Global Top5として世界のお客様から信頼される企業を目指す

・戦略1:ITとConnectibityの融合による新たなサービスの創出

・戦略2:Foresight起点(将来のあるべき姿)のコンサルティング力強化

・戦略3:アセットベースのビジネスモデルへの進化

・戦略4:先進技術活用力とシステム開発技術力の強化

・戦略5:人財・組織力の最大化

・連結売上高:4兆円超(現状:2.55兆円)

・顧客基盤:120社(現状:82社)

・連結営業利益率:10%超(現状:8.3%)

・海外EBITA率:10%(現状:6.5%)

・2022年10月に海外事業統合、2023年7月に持ち株会社

サステナビリティ経営

・Realizing a Sustainable Future

・つくる力×つなぐ力

旭化成のカーボンフットプリントの可視化の実例紹介

主な質疑応答

Q.IT人材不足の影響について

A.一般的には2030年にIT人材が45万人不足すると言われている。

当社では4万人の人材と全世界に160社の取引先がある。

さらに、毎年400〜500名の新卒者応募者が競争力の源泉となっている。

Q.配当金の少なさについて

A.現在は1株あたり21円を配当している。

配当金はキャッシュに応じて分配するものであるが、現状では事業投資を重視。

また、当社の株主構成は親会社(NTT)5割、機関投資家2割、海外2割の比率であることを考慮し、さまざまな株主還元策を検討・実施していく。

Q.人材確保について

A.採用コストは上昇傾向にあるが、当社では毎年300名程度が入社している。

海外(北米)においては大学との連携やM&Aを重視、欧州は知名度を活かした採用活動を継続している。

Q.円安の影響について

A.業績見通しについては据え置いている。

Q.親子上場について

A.親会社のNTTの行こうとして、当社のグローバル展開のため上場が維持されていると理解。

ただし、共通株主にして利益相反等にならないように取締役を増やしてガバナンスを強化している。

Q.統合バンキングクラウドについて

A.SLA(サービス総合品質保証契約)に基づき稼働率、安心・安全・安価な銀行専用クラウドを投入していくもの。

Q.営業利益低下の原因について

A.不採算案件の増加と戦略的投資による。

Q.CAFIS(日本最大のキャッシュレス決済プラットフォーム)の料金値下げについて

A.CAFISは当社が提供する日本最大のキャッシュレス決済プラットフォームである。

これまで1000円以下の料金を値下げしていたが、今後は2000円以下の決済の料金も値下げすることとした。

業績への影響はないと考える。

株主としての雑感

一番刺激を受けたのは、IT人材の不足が叫ばれる中数百人の新卒者を採用しているという強み。

流石に日本を代表する会社だと感心しました。

ただし、それらの優秀な人材を活かしきれているのかという点が気になりました。

具体的には不採算事業の増加による利益の減少。

今後の、優秀な人材を海外事業で通用する戦力への育成に期待します。

⑶ 2021年6月の株主総会

第33回定時株主総会 2021年6月17日 NTTデータ品川ビル(アレア品川)

 ライブ中継を見ました。

役員全員がマスクスている姿に違和感を感じました。

質疑応答

Q.NTTがNTTドコモTOBしたことの影響は?

A.上々を維持し、2025年までにグローバルトップ5になるという目標を目指し、ITサービス業界で強くなる。

Q.デジタル庁設置の影響は?

A.デジタル庁設置を追い風として、イノベーションを通じて価値を提供し続けることにより、Society5.0の実現を目指す。

Q.グローバル事業の収益性改善の展望は?

A.人材拡充、スキル向上、リソースの最適化を通じて利益を出せるようにする!

Q.取締役の報酬制度の変更について分かりやすく説明してほしい。

A.業績連動報酬を30%から50%に変更する。更に20%は非金銭(株式)とする。そうする事で、モチベーションのアップと株主との一体感を醸成できるようになる。

Q.総務省幹部との会食について?

A.特別調査委員会を設置して調査を実施した。岩本相談役が2回会食を行った。贈賄の事実はなかったが、社内規定違反のため減額処分とした。更に、コンプライアンス研修やチェックの強化を通じて再発防止に努める。

以上、事前の質問に対する回答

出席者からの質問

Q.NTTが進める6Gにどのような貢献ができるのか?

A.アイオン推進室とソーシャルデザイン推進室を設置し6G推進に貢献している。

Q.海外事業は十数年間で7〜8、000億円投じて営業利益0とは異常ではないか?

A.2005年をグローバル元年とし今年で16年目となる。今期は結果を出す。北米はEBITDA7%、ヨーロッパはEBITDA5%を目指す。

⑷ 株主還元

配当

1株配当実績は下記の通りです。

2023年3月期:22円

2022年3月期:21円

2021年3月期:18円

2020年3月期:18円

2019年3月期:17円

2018年3月期:15円

安定配当と増配基調はありがたいです。

株主優待 

なし

自社株買い 

なし

なお、2022年5月に親会社のNTTが1000億円もしくは6000万株を上限としてNTTデータの株式を取得すると報じられています。                      

3 株価が北米で苦戦していることの理由について

32期連続増収というのは、上場以来ずっと増収を続けているということを意味します。

また、写真にあるように、豊洲駅直結の立派な自社ビルを抱えています。

IT企業としても代表的な企業のひとつとして誰もが認める大会社です。

そして、グローバルトップ5を目指して総力を結集しています。

にもかかわらず、海外では苦戦しています。

北米では十数年間7000億円以上を投じて営業利益が出ないのは何故か?

自分の仮説は、

NTTデータのサービスは海外等では通用しない

というものです。

官公庁金融機関に強いということは、言葉は乱暴ですが、ド文系の高級官僚やド素人の銀行マン相手のゆるい仕事なら何とかやりくりできると思います。

しかし、ICTリテラシーの高い海外ユーザーの要求を満足するサービスを提供できなくて不採算事業が積みあがっているのではないかというのがその理由です。

マイナポータルを提供しているのもNTTデータということですが、みなさん、マイナポータルって使いづらくありませんか?

私事ですが、昨年、マイナンバーカード関連でマイナポータルを使った時には原因不明のエラーが連発した記憶しかありません。

そのことは、ゆるいB to Bなら通用しても、私達一般ユーザーが使うよりユーザーフレンドリーなアプリの提供であるB to Cになるとぼろが出るというということを意味します。

さらに、招集通知を読むと、専門用語、カタカナ、略語のオンパレードで読んで頂くという姿勢、読み手の負担を少なくするといった気遣いに欠けていることも、高いレベルを要求される海外のサービスを満足することが出来ない現実と符合します。

NTTデータの強みというのは高い技術力というよりは、お金があって技術に疎いド文系やド素人の顧客に恵まれているということにあるのではないかと考えます。

【ニュースでよく見るメガバンクの看板はNTTデータ本社前にあります!】

4 株主としてのコメント

 DXと緩い顧客に恵まれて、これからも株価はそれなりに堅調に推移すると予想します。

けれども、何をどう考えても、2025年にグローバルトップ5になれるとは思えません。

株主からの質問に対しても、

頑張ります!

の一点張りでは説得力がありません。

もちろん、自分の勉強不足もありますし、会社は何か秘策を用意しているかもしれません。

でも、一般論ですが、十数年間海外事業が上手くいかなかったのには原因があるはずです。

その原因が何かを突き止めて、排除して初めて次のステップに進むことが出来ると考えるのが”ふつう”の考えだと思います。

残念ながら、社長の説明からは何が海外不振の原因だったかを今回の株主総会では聞くことが出来ませんでした。

またNTTの6Gを支援するために推進室を設置したと説明がありました。

推進室をつくるということは、

「6Gは推進室に任せればいい」

という雰囲気を社内全体に蔓延させることに通じます。

そして結果的に、全社レベルのリソースを活かした支援が出来できず、親会社NTTの期待を裏切ることが目に見えています。

そういった点からも、グローバル化は難しいのでは?

本間社長、悪いことは言いません。

グローバルトップ5など目指さず、まず、マイナポータルをより使い勝手の良いアプリにに改善するなどの実績を積みながら、顧客満足を高める組織文化の醸成から手を付けたほうが無難だと思います。

5 まとめ

NTTデータについて述べてきました。

多くの株主の関心はNTTドコモのようにNTTによる完全子会社化がいつになるのかということだと推察します。

もちろん買収による株価高騰は期待しています。

けれどもその前にNTT LID.との事業統合による相乗効果によるサプライズでの株価高騰も期待できるのではないかと、オンライン会社説明会を視聴して感じました。

その一方で、絶えることのない不採算事業についても、その真の原因を究明し、除去し、対策し、再発防止を徹底することの必要性も見逃せません。

今後の展開と奮起を期待しています。

お読みいただき、ありがとうございました。   

  

※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。 

#投資 #株式 #株主総会 #資産運用 #NTTデータ #CAFIS