初投稿:2021.4.20、更新日:2022.3.18、2022.4.15、2023.4.17、2024.4.28
こんにちは!
この記事は、アウトソーシング【2427】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2024年3月に実施された株主総会状況を追記して記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・MBOの寂しさと感謝
・不適切な会計後の回復
★★★★
【目次】
1 アウトソーシングについて
⑴ 会社概要
工場製造ラインへの人材派遣が主力で、M&Aや海外展開に特徴があります。
売上高7496億円、総資産4237億円、時価総額2202億円の事業規模。
会社の付加価値(のれん、ブランド力)PBRは2.45倍と比較的高い評価。
四季報では他産業サービス・製品の業種に区分されています。
株主として比較的長い付き合いでしたが、今回のMBOを寂しく感じています。
経営理念
労働格差をなくし、生きがいが持てる職場を創出することで、世界の人々の人生を豊かにする。
セグメント
( )は売上収益構成比です。
〇国内技術系アウトソーシング事業(21.8%)
〇国内製造系アウトソーシング事業(17.5%)
〇国内サービス系アウトソーシング事業(5.1%)
〇海外技術系事業(24.6%)
〇海外製造業系及びサービス系事業(31.0%)
〇その他(0%)
米軍施設向けのビジネス(温度や湿度のシビアな管理が要求される格納庫など)を手掛けているようです。
優良なクライアントを抱えており、かつ、参入障壁も低くないことがアウトソーシングの強みと考えています。
また、SDGsに力を注ぐとともに海外での売り上げの伸びが顕著であり、今後のさらなる成長が楽しみです。
⑵ 株主となったきっかけ
5年以上も前のことですが、確かマネーポストのような雑誌の推奨で購入しました。
NISA口座です。
その間、1対5の株式分割がありましたが、5回ともタイミングよく利益を確定してきました。
売買を繰り返しつつ利益を確定してきましたが、今回のMBOでも買値を大きく上回って売却することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
⑶ 2023年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:18%
・売上高営業利益率:2%
収益性については高くはありません。
しかも、営業利益率が前期に比べて1%低下しています。
ただし、水準的には大きな変動はなく、ビジネスモデルが確立していると推察します。
安全性
・流動比率(100%以上が望ましい):101%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):22%
安全性については懸念が残るレベルが続いています。
しかも、前期よりも数値は低下しています。
ただし、このレベルでずっとやってきたことを考えると当社にとってはこれが”ふつう”なのかも知れません。
効率性
・棚卸資産回転率:230.01
・有形固定資産回転率:52.59
棚卸資産については前期同様、効率的な経営がなされていると考えます。
また、有形固定資産についても昨年と同様な水準で推移しています。
⑷ 2022年12月期の経営分析
基本的に増収・増益で過去最高益と好調です。
目まぐるしく変化する事業環境にあって、事業ポートフォリオと地域分散に注力したことが功を奏したと株主総会において社長から説明がありました。
収益性
・売上高総利益率:18%
・売上高営業利益率:3%
昨年までと同じレベルですが、数値はそれぞれ1%ずつ低下しており収益性の低下が見られます。
これが、誤差の範囲か収益性低下の兆候かについて注視したいと思います。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):109%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):24%
安全性については懸念が残るレベルが続いています。
社長の判断及び強いリーダーシップがあるのでリスクをとっていると考えます。
ただし、収益性とは反対に数値的には昨年よりも改善されています。
効率性
・棚卸資産回転率:259.51
・有形固定資産回転率:59.41
人材派遣による収益が柱なので棚卸資産は少なく、この点では効率的な経営がなされています。
また、有形固定資産についても昨年と同様な水準で、大規模な設備投資等はなされていないようです。
⑸ 2021年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:19%
・売上高営業利益率:4%
毎年大きな変化はありません。
人材派遣会社として人件費が大きいため売上高営業利益率が低いと考えます。
ただし、利益率4%でも額が大きいので利益はしっかりと確保されているようです。
ある意味、”薄利多売”的なモデルといえるかもしれません。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):79%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):21%
短期的にも中・長期的にも財務基盤が盤石とは言い難い数値です。
ただし、コロナ直後のアウトソーシングが大きな打撃を受けた時期を乗り越えてきたことから、大きな心配はないと考えます。
効率性
・有形固定資産回転率:49.03
数値から、不動産に投じているコストは比較的小さいようです。
資金の使い方が比較的効率的であると思われます。
⑹ 2020年12月期の経営分析
2020年12月期は増収減益でした。
コロナ禍にあって奮闘したと思います。
社長によれば、スピード感ある変化への対応力とベンチャースピリッツのおかげだそうです。
・収益性を見ると
粗利率が19%(昨年は20%)と高いことに特徴があります。
・安全性
負債比率が344%(100%以下が望ましい)、自己資本比率が23%(30%以上が望ましい)など、安全性についてな懸念があります。
【会社が所在する丸の内トラストタワー@東京駅常盤橋口方面】
【株主総会会場の入口】
2 株主総会等
⑴ 2024年3月の株主総会
第26期定時株主総会 2024年3月29日(金) JPタワー(KITTE4階)
参加せず。
ただし、参加した人の話では
・MBOについては数年前から社内で検討した結果
・再上場については未定
・上場していることのメリットについて疑問を感じていた
ようなことが審議されたようです。
⑵ 2023年3月の株主総会
第26期定時株主総会 2023年3月28日(火) JPタワー(KITTE4階)
ライブ配信を視聴しました。
社長の挨拶、監査報告、ビデオによる事業報告、社長からの対処すべき課題と続きました。
質問は、監査等委員会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行することに伴う、執行役員と取締役の分離についての1件だけでした。
なお、途中で執行役員の方からの決意表明があり、採決終了後に取締役の紹介がなされ、経営陣の顔が見えたことは良かったと評価します。
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役12名選任の件
拍手をもって賛成・可決されました。
株主総会雑感〜不適切な会計後の明暗について
アウトソーシングと日本M&Aセンターでは約1年数ヶ月前に不適切な会計を生じています。
これに対して両社ともに原因究明と再発防止を徹底していますが、現状では
・ア:事業は増収増益&過去最高益、株価も右肩上がり
・日:3/四は業績未達、株価は最安値更新
と大きく明暗が分かれれいます。
この違いを生んだ違いは何か?
一つには社長の謙虚さがあるのでは無いかと思います。
今回の株主総会でも増収増益&過去最高益であったにも関わらず、営業減益だったことにあえて言及して、その原因分析と対策をしっかりと話されていました。
芳しくない業績についてはスルーする経営陣が多い中、そのような謙虚で改善点を追求しようとする姿勢は、組織に適度な緊張感をもたらすものと評価します。
その点、日本M&Aの社長の場合、長時間に渡ってエネルギッシュに話をされますが、自社の弱みや改善点への言及はあまり記憶にありません。
何人かの経営者の方から、
「これから地獄が来るぞ!」
という危機意識をもって事業に当たった時の方が、かえって会社は成長するものと聞いたことがあります。
その点、日本M&Aは自社の強みのアピールにバランスが偏りすぎていたのでは無いかと推測しています。
いずれにしても、アウトソーシングについては不適切な会計後、良い方向に向かっていると考えます(本当は、株主としてももっと危機感を持った方が良いのかも知れませんが・・・)。
⑶ 2022年3月の株主総会
第25期定時株主総会 2021年3月25日(木) JPタワー(KITTE4階)
ライブ&リアル参加しました。
参加は初めてです。
会場はスクリーンを3つ用意した横に広いもので、30名程度はいたと思います。
最初に不適切な会計事案についての陳謝で始まりました。
その後、ビデオによる事業方向がなされ(新卒者の採用人数3000人にはびっくりしました)、社長から対処すべき課題について説明がありました。
その内容は、ガバナンスが中心。
今回の事案をきっかけとして、社内のガバナンスの立て直しの徹底を図ろうとする意図が感じられました。
主な質疑応答
Q.ウクライナ情勢について
A.欧州で売上が立って位いるのは、英国、ドイツ、オランダ、アイルランド、ポーランドの5国。この他に採用の拠点が欧州に16ありウクライナはそのうちの一つ。採用については15カ国で問題なく実施されており、現状においては問題無いと考える。
Q.自動車の製造に与える部品不足について
A.自動車の生産調整は、半導体不足と東南アジアの部品不足の2つの要因により生じている。このため、納車まで最長2年というケースも発生している。現状はスケジュール調整で凌いでいるが、時期が来れば挽回生産が始まるものと期待している。
Q.為替の影響について
A.輸入しているものが無いため円安でマイナスになることはない。むしろ上振れを予想している。
Q.決算説明資料の中の金融処理(2018年の企業買収)について
A.企業買収の金融処理について調整をした結果、最初に50%購入し、残りを数%づつ会計処理をしていた。その際、買収企業の業績が飛躍的に向上したため積み増しが発生した。よって、親会社に帰属する利益が下がっているが、実はこれはポジティブなこと。
Q.不適切な会計に係るIRの態度が悪い!
A.今後は、事務的対応を改善・改革していく。
Q.監査役は何故、不適切な会計を見抜けなかったのか?
A.上場準備に伴い独立した経営を考慮した結果、関与が少なくなってしまった。
今回のことを重く受け止め再教育・ルールの徹底に努める。
Q.アナリスト向け説明会の内容にも個人投資家がアクセスできるようにしてほしい。
A.前向きに検討する。日本全国において個人投資家向け説明会を回っていきたい。
→早速、「個人株主様向け決算説明会に関するご案内」がリリースされています。
Q.不適切な会計に関して、ビジョン、理念、行動規範等の意識の部分で見直しはあったのか?
A.経営理念については国内中心のビジネスからグローバル展開となった2020年に見直したばかりであり今回の事案を受けての見直しは実施していない。
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役11名選任の件
・監査等委員である取締役4名選任の件
滞りなく承認・可決されました。
株主総会雑感
社長が今回の”不適切な会計”を重く受け止めていたのは確かだと思います。
そして、役員に一人一言ずつ今回の事案に対する発言を促したのも意味のあることだと考えます。
個人的には謝罪のみならす、事案の概要とその原因、さらに再発防止に関わる3点セットであるルール、ツール、教育についてもう少し分かりやすく説明して欲しかったです。
さらに、現実を直視すると、成長企業に不祥事はつきものという認識と、発覚した際には株価はざっくり半分になるという覚悟が投資家には必要なのかもしれません。
ただし、成長企業の不祥事は(事案にもよりますが)攻めだけでなく守りにも強い組織となり得るという救いはあると思いますが・・・。
⑷ 過去の株主総会
第24回定時株主総会 2021年3月25日(木)
JPタワー ホール&カンファレンス(KITTE)
株主総会にはいったことがありません。
過去に参加した人の話によると
質問ウエルカム
という自信にあふれた茶髪の社長の応対が印象的だったそうです。
社長のリーダーシップが会社をけん引していることが伺えます。
また、ビジネスレポートにSDGsを意識して「サステナビリティ方針」が掲げられてましたが、進取の精神も素晴らしいと思います。
⑸ 株主還元
配当
1株配当の実績は下記の通りです。
増収減益なので仕方ないのかも知れませんが、最後の無配は残念でした。
2023年12月期:0円
2022年12月期:25円
2021年12月期:31円
2020年12月期:10円
2019年12月期:24円
2018年12月期:21円
株主優待
直近で株主優待は廃止されました。
株主優待は、1000円のクオカードです(12月末日)。
オリジナルクオカードなのでデザインが楽しみです。
【株主総会会場でいただいたお水】
【過去の株主優待】
3 株主としてのコメント
⑴ 気に入っていること
株主として気に入っていることは以下の通りです。
・数年単位で好業績
・オリジナルQUOカードが嬉しい
・社長がエネルギッシュ
・海外の子会社にロシアや中国がないため冷戦になっても大丈夫という安心感
・本社が所在する丸の内トラストタワーは、上層階の五つ星ホテル”シャングリラ”に記念日にステイしたことがある(思い出の場所)
⑵ 気になること
不適切な会計と禊(みそぎ)
起きてしまったことは仕方がありません。
再発防止の徹底を望みます。
また、個人的にはアルベルト、日本M&AセンターHD、アウトソーシングと持ち株会社が立て続けに”不適切な会計”という不祥事に見舞われました。
3回の不祥事を俯瞰してみると、乱暴かもしれませんが禊(みそぎ)としては次のようイメージを抱いています。
・株価は直近高値から半額になる
・株価の下落期間は3ヶ月から半年
ただし、”期ずれ”のような社内のコンプライアンス違反のレベルのもの(訴訟や上場維持に至らないレベル)です。
そのように考えるとそろそろ底打ちの時期かもしれません。
【オフィスのある丸の内トラストタワー上層階のシャングリラホテルにて】
4 まとめ
アウトソーシングについて述べてきました。
業績は好調ですが、2021年11月に”不適切な会計”という不祥事がありました。
同様の時期に日本M&Aセンターも不祥事がありましたが、そちらに比べて当社の株価の回復が早く、今後に期待していました。
それだけに、MBOは残念ですが、相性が良く?売買益や配当・優待に恵まれ感謝の気持ちでいっぱいです(東芝のように、長期的な株主価値という訳の分からぬバズワードでMOB価格が不当に低くなくて良かったです)。
再上場する際は、株を買いたいと思いつつMBO後の当社の飛躍を祈念いたします。
お読み頂き、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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