初投稿:2021.4.17、更新日:2022.3.16、2022.3.30、2023.5.12
こんにちは!
この記事は、Chatwork【4448】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、株主総会のライブ配信を視聴した感想を追記して記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・IPO当選からのつきあい
・経営者のビジョンの大切さ
【目次】
【株主総会の会場となった芝パークビルB館】
1 Chatworkについて
⑴ 会社概要
クラウド型ビジネスチャットツールを開発・販売している会社です。
ミッション
「働くをもっと楽しく、創造的に」
事業
事業は2つ
・Chatwork事業
・セキュリティー事業
社長の説明の中でビジネスコミュニケーションは
手紙→電話→FAX→メール→チャット
というトレンドの話には共感を覚えました。
⑵ 株主となったきっかけ
公募価格は一株当たり1600円。
喜んだのはそこまで。
上場後は公募割れ。
株主としては苦難の道を歩み続けていました。
コロナ禍でリモートワークが進む中で一時期、1600円を超える株価になりやれやれ売りの絶好の機会となりました。
けれども、欲をかいているうちに売り損ね。
結局、いまも塩漬け状態のままでいます。
⑶ 2022年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:69%
・売上高営業利益率:営業赤字
粗利率については高いですが、シェア確保を優先した”成長投資”を継続しているので営業赤字となっています。
ただし、これからは利益についても期待が持てそうなので早期の黒字化を期待します。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):226%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):53%
安全性については、基準をクリアしていますが昨年より数値が悪化していることが若干気になります。
あと、繰越利益剰余金がマイナスであることも注意を要します。
効率性
・有形固定資産回転率:154.9
人員の拡大が続いているにも関わらず、有形固定資産回転率が上昇しているのは評価できます。
売上高に比べて、オフィス等のコストが少なく効率的な経営がなされていると考えます。
⑷ 2021年12月期の経営分析
2021年12月期の株主総会招集通知の連結計算書類から経営分析を試みます。
収益性
・売上高総利益率:71%
・売上高営業利益率:−20%
売上原価が低い点ではIT企業らしく、高収益なビジネスモデルとみなせます。
ただし、販管費(人件費、広告宣伝費)が大きく営業赤字となっています。
赤字についてはストレージ会社の子会社化のためとありましたが、営業赤字が一次的なもので済むか否かは大きな問題だと考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):296%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):66%
短期的にも中・長期的にも安全性には問題は認められません。
効率性
・有形固定資産回転率:74.26
サービス業界のみならず、全業種を考えても高い数値と考えられます。
オフィス等にはあまり資金を投じてはいないようです。
【総会会場の案内板】
2 株主総会の様子
⑴ 2023年3月の株主総会
第19期定時株主総会 2023年3月29日(水) 芝パークビル
ハイブリッド開催でしたので、ライブ配信を視聴しました。
社長からの説明に加え
”シゴトがはずむ”
といったブランドムービーは会社を理解を深めるのに役立ったと思います。
また、発表した中期経営計画を踏まえた事業報告やCAGR(年平均成長率)40%という数値目標を明確にしての経営は投資家にとっては好ましいものと考えます。
さらに、今回の株主総会で監査等委員会設置会社へ移行するということなので、より一層のガバナンスの強化も期待されます。
主な質疑応答
Q.人員の拡充について
A.エンジニアについては引き続き拡充する。
ビジネスサイド(営業関連)については体制が整いつつあるので、全体としては拡大ペースは緩やかになる。
ちなにに、ビジネスには
・SLG(セールスレッドグロース):セールスが成長を牽引する。
・PLG(プロダクトレッドグロース):製品が成長を牽引する。
の2種類があるが、当社のビジネスモデルはPLGである。
Q.今後の黒字化のイメジについて
A.これまでは、赤字を掘ってまでシェア拡大を優先dいてきた。
LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を踏まえると、Jカーブを描くように利益が出ると予想している。
そして、現状、利益化を目指すフェーズ入りしたと認識している。
Q.チャットGPTの活用について
A.チャットGPTとは、質問に対して人間のように回答してくれるものである。
ただし、時々、嘘をつくことが問題であり、(ITについての)ハイリテラシーの人によってさまざまな可能性が検討されている。
ただし、当社の顧客である中小企業の方がこれをそのまま利用するのはリスクがある。
よって、当社としても研究開発を実施している段階だが、担当者の業務支援としての役割が期待される。
まとめると、短期的には慎重であるが、長期的にはBSaaS等での活用を模索しているということになる。
決議事項
・定款一部変更の件(監査等委員会設置会社へ)
・取締役4名選任の件
・監査等委員である取締役3名選任の件
・補欠の監査等委員である取締役1名選任の件
・取締役の報酬額決定の件
・監査等委員である取締役の報酬決定の件
・取締役に対する譲渡制限付き株式報酬制度に係る報酬決定の件
・監査等委員である取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬決定の件
拍手を持って賛成・可決されました。
なお、新役員3名の自己紹介がなされました。
株主総会雑感
IPO以来の付き合いのある会社です。
社長の説明は丁寧で分かりやすく好感が持てました。
ただし、業績は増収減益(赤字)なので、株価が冴えません。
それでも、中期経営計画を着実に実行していることや、これから利益を追求するフェーズになるということで将来に対する期待が持てます。
一方で、過去の株主総会に比べると、これまでで最も会場参加の株主や質問も少なかったことは気にかりました。
そのような期待と不安が入り混じった状態ですが、買い増しも含めてよりいっそう注目していきたいと思います。
⑵ 2022年3月の株主総会
第18期定時株主総会 2022年3月25日(金) 芝パークビル
途中から参加しました。
総会は終了し、事業説明会が実施されていました。
事業説明会の全体概要
参加した株主は十数人でしたが、質問は積極的でした。
数年前と比べると、今回はご高齢の株主が上機嫌で質問し、大いに納得されていたご様子。
社長が熱心に世界観を含め事業について大いに語っていたのが印象的でした。
株価は公募価格の4分の1以下にまで落ち込みましたが、下記の『ビジョナリーカンパニーZERO』に照らして考えると将来に対する期待が膨らみます。
事業説明会のポイント
説明会で感心したポイントを列挙します。
・”Chatworkと組んだところが勝つ”という世界観。
・ネットワーク効果(みんなが使うから価値がある)を重視。
・2024年に中小企業のビジネスチャットNo.1を目指す。
・Chatworkはビジネススーパーアプリを目指す。
・シェア16%確保を目指す。
・利益剰余金がマイナスであるがそれ程問題視していない。
・M&Aの要件は顧客との関わりがあること。
・顧客支援はITに限らずアウトソーシング等の可能性も狙っている。
・時代の流れはメールからチャットへ
・2年前は爆発的な問合せに対応できず大きなビジネスチャンスを活かせなかった。
・今はZOOM等の利用により大きなビジネスチャンスが来ていると認識
・いいものであれば売れるというわけではない。
【総会会場への案内板】
⑶ 2021年3月の株主総会
第16回定時株主総会 2021年3月26日(金) 芝パークビル
オンライン視聴。
特にコメントなし。
総会後の経営戦略の説明については残念ながら放送されませんでした。
社長は”守り”に回っているのでしょうか?
⑷ 2020年の株主総会
一年前の総会です。
質疑応答における株主からの意見はおおきく2つに割れていたと記憶。
・上場後、株価が公募価格を上回ることのないことへの批判
・熱心なユーザーからの建設的な提言
上場後初めての株主総会でしたが、役員の前に名札が無かったのが気になりました。
株価低迷の責任回避か?とも思われました。
けれども、株主に指摘されてから各役員が自己紹介を開始。
その都度、会社に好意的な株主からの拍手が上がっていたことを覚えています。
社長がエンジニアでもあることから、質疑応答では比較的論理的な説明をされていたという印象を持ちました。
また、もともとお兄さんが社長だった会社ですが、ビジネスチャットの成功により山本正喜氏が権力を掌握。
ニューラルポケット(4056)においても任期途中の役員の退任が合ったりしていますが、社内(兄弟間)の競争の激しさを垣間見た気がしました。
⑸ 株主還元
配当
無配です。
株主優待
100株以上の株主に対してパーソナルプラン無償提供券がもらえるようです。
【株主総会の会場となった「AP浜松町」】
3 株主としてのコメント
⑴ 何故、好業績にもかかわらず2020年秋以降株価は暴落を続けるのか?
業績は絶好調なのに株価がストップ安を付けるなどしながら下落トレンドを継続しています。
ネットで見かける理由は次の通り
・成長率の鈍化を嫌気
・コロナ禍の落ち着きに伴うテレワークブームの終焉
それぞれなるほどと思うところもあります。
けれども、自分のなかで一番腹落ちする理由は
歴史は繰り返す
ということです。
歴史とは?
高すぎるバリュエーション(企業価値評価)が適正評価に戻るもの
です。
そもそも、一般に困難と言われるIPOで当選したこと。
そして、公募割れが長く続いたこと。
この2点は、会社に対するバリュエーションが高すぎたことを物語っています。
株主総会で社長がこの点について問われたときには、
「公募価格を決めたのは主幹事である大和証券であり、自分のあずかり知るところではない。」
と明言していました。
世界のマーケットにはない日本のIPOの特異性が関係しているようです。
そして、今回もコロナ禍銘柄としての高すぎるバリュエーションが決算をトリガーとして適正評価に向かっているととらえると、”IPO公募割れ”と”好決算ストップ安”という点と点が線で結ばれるように思われます。
社長としても、自身の資産管理会社であるECstudioホールディングスが株式の過半数を握っているのでどんなに株価が下がろうと自分の地位は安泰。
Chatworkと大和証券がヨロシクやっている一方で、新たな株主は苦戦を強いられているという構図が透けて見えます。
⑵ テンバーガー候補なのか?
10バーガー候補銘柄の5つの条件を当てはめてみると
①チャートが右肩下がり:△底這い
②上場5年以内:〇1年半
④増収平均20%の「成長株」:〇20%以上→❌
⑤時価総額300億円未満の「中小小型株」:×581憶
チャートと時価総額以外はほぼ当てはまっていると思われます。
株価はEPS(利益)×PER(評価)で算出されます。
この中でチャットワークは、高すぎるバリュエーションが繰り返される”習性”があるように見受けられます。
そうなると、事業が成長して利益が伸びても、いびつな評価に振り回せれることがこの先も予想されます。
公募価格1,600円
10倍とするなら16,000円
テンバーガーは難しいのではないか?
上場時から株主を続けている一個人としての見立てです。
一般にテンバーガーを達成するには長い年月がかかります。
長期投資が必要です。
⑶ テンバーガーの一例
私事ですが、2006年に日本M&Aセンター(2127)のIPOが当選しましたが、持っていれば株価は60倍となっていました。
残念ながら、1週間程で株価が2倍となったところで手仕舞いいましたが、惜しいことをしたという思いもあります。
その日本M&Aセンターも株価が上昇し始めたのは2012年からで約8年間かかって60倍です。
公募価格が約100万円でしたから、そのままホールドしておけば6000万円を超えていました・・・。
そのような経験をもとにChatworkを改めて見直してみると、この銘柄はどちらかというと定期的に価格が吊り上がっては暴落するという習性があるように思われます。
それは、投資というより投機に向いているかもしれません。
⑷ 気になること
会社四季報(2022年新春号)を読んで
チャットワークの見出しとしては、【先行投資】、【調達】の見出しがあり、クラウドストレージを買収し、人件費や広告宣伝費の増加による営業赤字が続くと記されていました。
その時の株価は1330円でした。
そこから3ヶ月も経たないうちに株価は385円という安値をつけています。
米国金利上昇、コロナ禍、ウクライナ情勢の三十苦があるものの、急落していることは事実です。
株価の大幅下落に通じるような投資家(株主)にとって最重要な内容を読み取ることは四季報では難しいのではないかと気になりました。
利益剰余金のマイナス
チャットワークは総資産31億円ですが、利益剰余金は13億円をこえるマイナスです。
これは、会社創業以来の儲けが積み上がっておらず利益が稼げないビジネスがずっと続いてきたことを意味しています。
上場直後もマイナスであったことから、利益の出ないことが常態化していることが気になります。
ビジョナリーカンパニー
『ビジョナリーカンパニーZERO』という書店でよく見かけるベストセラー本を読んでいます。
この本は、スタートアップ企業が偉大で永続的な大企業に進化する歩みを研究したものです。
この中で強調されているのは、リーダーのビジョンの大切さ。
そう考えると、Chatworkの将来は、社長のビジネスチャットに賭ける信念にかかっていると思います。
【総会会場でいただいた水】
4 まとめ
チャットワークについて述べてきました。
IPO当選者で株主が何人残っているかわかりませんが、この3年数ヶ月の間、あまりいい思いはしていません(一次的に公募価格を上回りましたが)。
赤字決算やマイナスの利益剰余金など問題山積な一方、ビジネスチャットの可能性はそれらの問題を補い得るだけの大きなものがあると考えます。
チャットワークがビジョナリー・カンパニーになれるかどうか引き続き注視していきます。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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