初投稿:2021.4.13、更新日:2022..、2023.5.⚪︎、2024.3.31
こんにちは!
この記事は、MonotaRO【3964】に関心のある方に向けた株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2024年3月の株主総会の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・社長交代の意味するところについて
・ 成長期と踊り場期
★★★★
【目次】
1 MonotaROについて
⑴ 会社概要
工場・工事用間接資材のネット通販の会社。
工具のAmazonというイメージです。
「個人と小規模事業者が主な顧客」と四季報にありますが、大企業へのアプローチも開始しているようです。
売上高は約2259億円、総資産は約1117億円、時価総額は9112億円の事業規模。
付加価値(ブランド力、のれん)を示すPBRは10.45倍と高い評価。
ただし、株価は3年前より約半分の価格帯となっています。
企業理念
間接資材調達ネットワークを変革する
行動規範
傾聴、時間資源、モノタロウ魂、ゴールとプロセス、主体性、他社への敬意
事業内容
間接資材調達のプラットフォームとしての活動。
⑵ 株主となったきっかけ
実は、数年以上前から気になっている銘柄でした。
けれども株主になったのは昨年。
それは、本社が兵庫で株主総会に参加できないことが株式購入に躊躇した理由です。
それでも最近は成長性を重視する投資姿勢に変化。
思い切って買ってみました。
結果は良好。
現在、買値の1.5倍の価格にまで株価が上昇中です。
また、株主総会の様子がライブ配信されたりしているので、総会に参加しにくいという兵庫県の本社についての”縛り”は緩くなっています。
⑶ 2023年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:30%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):12%
前期と同様に高い収益性を維持していると考えます。
粗利率については1%ですが向上しています。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):204%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):68%
短期及び中・長期的にも問題ないだけでなく、数値も前期よりも向上しています。
効率性
・有形固定資産回転率:6.43
稲川ディストリビューションセンター関連や本社移転に伴い約100億円の設備投資をしていますが、有形固定資産回転率は前期とあまり変わらず、効率的な経営がなされていると考えます。
⑷ 2022年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:29%
・売上高営業利益率(10%以上は優良株):12%
昨年と同様に高い収益性を維持していると考えます。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):200%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):65%
短期的な安全性は若干低下したものの、全体として安全性の問題は認められません。
効率性
・有形固定資産回転率:6.45
昨年と同水準であり、新たな大規模な投資等はなかったと推察します。
⑸ 2021年12月期の経営分析
収益性
・売上高総利益率:28%
・売上高営業利益率:13%
業績は好調で収益性の高さは維持されています。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):240%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):63%
短期的にも、中・長期的にも安全性については問題なさそうです。
効率性
・有形固定資産回転率:6.75
小売業の平均5.75と大差はありません。
ただし、猪名川DC(ディストリビューションセンター)の新規オープン等を併せて考えるとむしろ上手に投資をしていると考えます。
有形固定資産の主な内訳は「建物」、「建設仮勘定」(未完成な建物)となっています。
成長を続ける小売業として数多くの多品種の商品を保管するための建物などへの積極的な投資が続いているようです。
⑹ 2020年12月期の経営分析
増収増益を継続しています。
・前期比売上高19.7%上昇
・前期比経常利益23.8%上昇
・前期比親会社に帰属する当期純利益25.4%上昇
また、成長性を測る指標として
累計登録ユーザー数も現在550万人と順調に増加しています。
【JR大阪駅、株主総会会場となったグランビア大阪はJR大阪駅直結】
2 株主総会等
⑴ 2024年3月の株主総会
第23期定時株主総会 2023年3月24日(日) グランヴィア大阪
ライブ配信を視聴しました。
日曜日開催というのも株主との対話を重視する姿勢と評価します。
主な質疑応答
Q.トラスコ(同業他社)との関係について
A.トラスコとは物流の非効率の解決という点で目指すところは同じであり、連携するところも多い関係である。
当社の強みとしては、エンドユーザーへのマッチングや品揃えの豊富さがあると考える。
Q.株主優待の品物が工業製品に偏っており、洗剤やトイレットペーパーのような生活用品を増やした方が良いのでは?
A.貴重なご意見、ありがとうございました。
Q.親会社であるグレンジャー社との関係について
A.倉庫事業のオペレーションやデータサイエンス分野の知見の共有等、良好な関係を維持している。
Q.株価の伸び悩みについて
A.株価は市場が決めるものだが、企業価値を向上させることで市場の信頼を回復していく。
Q.物流コストの低減について
A.稲川センターの生産性向上により対処していく。
Q.月次の10%成長の数値の手応えについて(当社はオワコンと見られているのでは?)
A.100年以上続く会社とすべく、社員ととともに課題に取り組んでいく。
当面は14〜15%を目指す。
なお、数値は固めのものを設定している。
Q.ミスミ、アマゾンとの競争について
A.市場全体としてはいまだに2割しかインターネット化してないので、成長の余地は十分あると考える。
Q.海外事業の状況について
A.韓国では利益がでているが、インドとインドネシアは先行投資の状況である。
事業成長サイクルが回り出すまでは時間がかかるよ予想する。
Q.当社のキャラクターが可愛くない。
A.社長個人としては可愛いと思っている。
Q.株価について
A.株価については言える立場ではない。
Q.これまでのような売上高20%増は今後は見込めないのか?
A.新しい施策を通じて成長に努める。
Q.インドやインドネシアの課題について
A.国土が広く、島が多いことからサプライチェーンの構築にさらなる注力が必要。
Q.人件費について
A.賞与や採用も計画的に実施している。
Q.他社に比べて納期が遅い
A.2024年問題を踏まえ、どの拠点から出せば早まるかについて改善中である。
Q.コンプライアンス(SDS:セーフティ・データ・シートの提供)について
A.売って終わりではなく情報提供のサービスも強化している。
デジタルマーチャンダイズ部門も新設した。
Q.”月次の売上”の質問に対する回答についてははぐらかされたようで納得できない
A.(社長)月次の売り上げは前期を上回ることを目標にしているが、3月は前年に比べて2日営業日が少ないので例外としている・・・。
(会長)2020年3月期に顧客が一気に増えたが現在は低下してきている。
既存のお客様について解像度を上げて分析してきた。
その結果のアクションはこれからである。
10〜15%の成長を見込んでいるが、それ以上についてはチャレンジが必要と認識。
当社は2000〜2020年までは高い成長を実現してきた。
けれども今は、何年間で何%の成長ということについてはコミットしにくい。
いずれにしても、やれることは頑張っていく。
Q.競合他社との差別化について
A.商品情報、カテゴリー等についての商品の検索サイトの差別化を強化することが重要と考える。
Q.トラスコについて
A.トラスコは問屋業を極める方向性であり、顧客に対する配送について当社が当社が協力していく。
Q.会長と社長の役割分担について
A.会長から社長への引き継ぎを継続しつつ、会長は海外とのシナジーや海外からの知見を持ってくることに注力していく(会場から拍手)。
Q.社長の交代について何を引きつぎ何を引き継がないか?
A.他者に対して敬意を払う、安心して新しいことに挑戦できるカルチャーは大切にしていきたい。
引き継がないというより変えていくこと(経営幹部会など)が自分の仕事と考えている。
Q.瀬戸名誉会長から一言
A.これまで大切にしてきたことは再現性を持たせるということ。
その結果、物事がシンプルになる。
そのシンプルさが社長の個性に勝る!
モノタロウ=瀬戸、モノタロウ=鈴木となってはいけない。
組織が成長していくためには人を変えることが必要。
同じビジネスモデルではやがて限界を迎えることになる。
モノタロウを知らない人も大切。
その意味で、新社長は柔軟で謙虚なところが良い(会場から拍手)。
決議事項
・剰余金処分の件
・取締役8名選任の件
拍手を持って承認・可決されました。
なお、新役員のみならず、退任する役員についても紹介があったことに強く好感を持ちました。
株主総会雑感
エスプールの株主総会では増収増益(過去10年連続)が途絶えたことについて社長が
”今は踊り場です”
”企業というものは成長段階と踊り場段階を繰り返すものです”
と語っていました。
MonotaROでは踊り場という話は、社長、会長、名誉顧問からもでませんでしたが、自分としては踊り場を迎えたと考えています。
そう考える根拠は下記のとおり
・低迷する株価
・業績について目標値の未達
・社長、会長等の交代
・新社長は入社3年目の”外部”の人
・会長は海外にて新しい成長ドラーバーを探すとの発言
・今まで成長をアピールしていたのに今後の成長についてはコミットできなかったこと
など
上記については、今までのやり方が通用しにくくなってきたので”変える”ことで現状を打破していこうとしていることの証左に思えました。
そのような試行錯誤の時期こそ”踊り場”であり、次なる成長、ひいては100年続くような企業となるためには不可欠なものと考えます。
けれども、ふつうの会社は、株主の前で”現状は踊り場”とは言いにくいのかもしれませんね。
あと、社長の口から低迷する株価についての採算の質問について
”株価について言える立場にない”
との回答に違和感を感じました。
なぜなら、東京証券取引所は、上場企業に対して、
”株価を意識した経営”
を求めているからです。
そして株主からの株価について問われた社長の多くが、株価向上のための説明責任を真摯に果たしているからです。
よって、知らぬ存ぜぬを貫き通す社長について、正直、
”この社長大丈夫か?”
と感じています。
⑵ 2023年3月の株主総会
第23期定時株主総会 2023年3月29日(水) グランヴィア大阪
参加せず。
⑶ 2022年3月期の株主総会
MonotaRoが提供する5つの価値の紹介など、事業報告と成長戦略が怒涛の如く語られました。
”商品推薦の加速”など、キーワードがポンポン飛び出し、(良い意味で)企業経営理論の授業を聞いているような気になりました。
主な質疑応答
Q.韓国、インドネシア、インドの状況について
A.韓国:7〜8年で黒字化、インドネシア:6年目でも苦戦中(昨年は減損)、インド:進出してまだ1年程度でこれから。
基本的には新規顧客獲得のコスト等で5年程度は赤字。それ以降は既存顧客からの注文により黒字化となる。当社が提供する生産性向上という価値の提供について、20〜30年という時間軸で考えている。
Q.バーチャルオンリー総会について
A.パンデミックのような時に備えるもので、当面、バーチャルオンリーは考えていない。ご安心下さい。
Q.物流の混乱や円安に伴う原材料費高騰の中、価格転換せずにシェアを取りに行く考えは?
A.基本的には事業目標を達成するための努力を継続する。商品によっては原材料費5割アップのものもあるが、まずは、商品の調達を最優先とする。適正な利益を確保し、所用の投資を継続するために、コストを据え置いてシェアを取りに行くことは考えていない。
Q.社長の陰で猪名川DCのビデオの字幕が見られなかった
A.申し訳ありません。総会終了後に再上映します。
Q.①カントリーリスク、②量の拡大だけで良いのか、③アマゾンとの競合について
A.①ロシアとの取引はない。→さらに多くの国へ進出するのか?→一定以上のBto B市場があるところしか対象になしていない。
②取扱量が増えると数%の改善では利益の確保が困難となるので、新たなテクノロジーを活用する等のイノベーションや上流とのより緊密な連携が必要となる。そういった質の部分も大切と認識。
③アマゾンビジネス等の競合があるが、事業者へフォーカスする姿勢が当社の強み。それだけ?と思われがちかもしれないが、個々の顧客に特化することが一番のポイントと考える。
Q.社員に対する”傾聴”について
A.毎週600通を超える週報に目を通しながら社員の声にも耳を傾けている。
Q.社会貢献(災害時)について
A.東日本大震災の際には経産省の要請に基づき、多賀城(宮城県)に拠点を構えて活動した。今後も同様な対応を実施していく。
決議事項
・剰余金処分の件
・定款一部変更の件
・取締役7名選任の件
大きな拍手を持って可決されました。
また、総会終了後の役員紹介でもひとりひとりに対して拍手が送られていました。
さらに、退任する役員に対しても温かい拍手があり見ていて気持ちが良かったです。
⑷ 2021年3月の株主総会
第21期定時株主総会 2021年3月26日(金) 都ホテル尼崎
社長から会社の概要説明に引き続き、
・売上成長率20%を11年連続して達成
・さらなる成長実現に向け努力する
・ダイレクトメールや23種類のカタログなど紙のカテゴリーも活用
・データーベースマーケティングにより規模拡大を目指す
などの報告がなされました。
主な質疑応答は以下の通り。
Q.与信管理、売上債権管理は大丈夫か?
A.個人との取引はクレジットカードや代引きなので余震の問題は無い。
貸倒率は0.1%であり問題は無い。
Q.海外展開の見通しは?
A.まずは数千万円/月程度の小規模でよい。
市場調査を踏まえ、ロングテールで取り組んでゆく。
Q.国内市場は成熟から縮退へ向かうのでは?
A.ネットの活用により市場のシェア拡大で対応する。
Q.LINEの個人情報漏洩問題の御社に与える影響は?
A.業務用チャットとしてはSlackを使用しておりLINE問題は関係ない。
また、LINEの代替アプリについては検討中。
引き続き、
・剰余金処分の件
・取締役7名選任の件
について採決が行われ、議案は滞りなく決議されました。
⑸ 株主還元
配当
1株配当実績は下記のとおりです。
2023年12月期:16円
2022年12月期:13.5円
2021年12月期:11.5円
2020年12月期:18円
2019年12月期:15円
2018年12月期:19.5円
途中で減配もありましたが、過去には11期連続の増配との社長からの説明がありました。
株主優待
株式保有期間に応じて自社プラーベートブランド商品がいただけます。
【グランビア大阪からの眺望】
3 株主としてのコメント
⑴ さらなる成長に向けて
12期連続で売上成長率20%達成でも驚異的なのに、さらに成長を続けるとする社長の話が興味深かったです。
具体的な取り組みは次の4点。
・購買管理システム事業
・マーケティングシステムの開発体制
・物流体制
・海外事業
購買管理システム事業の中で、大手企業の成長要因の分解として
①顧客企業と連携しシステムを確立
②企業における拠点数の増加
③ユーザー数の増加
④一人当たりの単価の増加
と4つに区分して営業活動をしているようです。
きめ細かくパラメータを設定し収益を上げる仕組みを構築していることが大変勉強になりました。
データ活用による収益構造の見える化の徹底と理解しました。
マーケティングシステムの開発体制の中では、
データサイエンティストを毎年採用し、データサイエンスを活用することで、顧客が必要とするであろう商品を先回りして提案している様子が紹介されていました。
”商品の推薦の質の向上”に取り組む姿勢に共感しました。
また、物流体制として、茨城中央サテライトセンターが2021年2がつに竣工したことが紹介されていました。
「工具のAmazon」と言われるだけあって、成長著しい企業です。
⑵ 今後の方針
10バーガー候補銘柄の条件としていろいろな情報が飛び交っています。
代表的な条件として皆さんも一度は目にしたことがあると思われるのは下記の5つだと思います。
①チャートが右肩下がり
②上場5年以内
③筆頭株主と社長が同一のオーナー系企業
④増収平均20%(4年で2倍以上)の「成長株」
⑤時価総額300憶円未満の「中小型株」
MonotaROをこの5条件を当てはめてみると
①チャートは右肩上がり:×
②上場から14年:×
③筆頭株主は米国企業:×
④「成長株」:〇
⑤時価総額は1.5兆円:×
と④「成長株」しか当てはまりません。
それでも会社は成長を続けるべく総力を挙げています。
株価も右肩上がりです。
株主としては”ありがたい”の一言に尽きます。
だからといって、10バーガー候補の5条件に異議を唱えているつもりはありません。
10バーガー候補の各種要件は、効率的に魅力的な会社を見つけ出す有効な方法であることは自分でも実感しています。
ただし、その要件以外でも成長を続けている企業があることを承知しておくことは、投資対象を広げる上で意義深いものともいえると思います。
MonotaROを理解することは、成長企業を深掘りする点でもとても勉強になります。
時価総額1.5兆円の企業のさらなる持続的成長への挑戦など、話を聞いているだけで投資家としての血が騒ぎます!
その意味でも、引き続きホールドしていくつもりです。
【グランビア大阪の室内】
4 まとめ
MonotaRoについて述べてきました。
株主総会における社長のマシンガントークと高齢株主のゆるい質問のやりとりなど興味深く視聴させていただきました。
時価総額1兆円を超える企業でありながら成長を続けていこうとする姿勢や実績は刮目すべきものがあります。
B to B企業で普段の接点は少ないですが、これからも株主として大いに注目していきたいと思います。
お読み頂き、ありがとうございます。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
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