初投稿:2020.10.28、更新日:2021.10. 9、2022.10.
こんにちは!
この記事は、ブレインパッド【3655】の株式に関心のある方に対して、株主としてのコメントをまとめたものです。
なお、2022年6月の株主総会に参加した時の内容を追記し、記事をアップデートしています(更新箇所は青字です)。
・さえない株価の原因を探る
・成長企業の株主は”苦労”に対する覚悟と準備が必要!?
【目次】
【ブレインパッドが入居する六本木Tキューブ】
1 ブレインパッドについて
⑴ 会社概要
企業の経営改善を支援するビックデータ活用サービス、デジタルマーケティングサービスを主体としたB to B会社です。
総資産61億円、売上高85億円、時価総額194億円の事業規模です。
PBRは3.95倍と比較的高い評価。
評価が高いだけあって株価はそれなりの乱高下をしています。
四季報によると業種はSI・ソフトウエア開発に区分され時価総額順位で64/256社という位置付け。
比較企業としてはアルベルト、ベイカレントC、プレイドが挙げられています。
セグメント
セグメントは3つから2つに変更になっています。
(旧セグメント)
①アナリスティック事業
顧客企業の有する大量データに関するコンサルティング及びデータマイニングの実行、ならびにデータに基づく企業行動の最適化支援。
②ソリューション事業
顧客企業に対して、データ蓄積、分析及び分析結果に基づく施策実行に必要なソフトウエアの選定及び提供ならびにシステム開発及び運用
③マーケティングプラットフォーム事業
主にデジタルマーケティング領域において、ブレインパッドが着目したデータ分析計のアルゴリズムから独自性の強いソフトウエアを自社開発し、SaaS型サービスを中心とした顧客企業への提供とその保守業務
(新セグメント)
①プロフェッショナルサービス事業
データ分析、システム開発を含むコンサルティング、人的支援を通じて、顧客企業のデータ活用支援を行う事業。
②プロダクト事業
自社製品及び他社製プロダクトの提供を通じて、顧客企業のデータ活用支援を行う事業。
⑵ 購入した経緯とその後の株価
AI関連銘柄で、愛聴しているラジオ日経の番組での推奨を受けて3年程前に買いました。
ただし、購入後まもなくしてから株価は右肩下がりを継続中(2020年)。
直近の株価低迷については、社長から「心苦しい」との回答。
原因としては、コロナ禍により売上・利益成長が停滞しているためとのこと。
けれども、コロナ禍でも売上・利益成長が著しい会社が存在していることも事実。
会社の説明だけでは納得できません。
⑶ 2022年6月期の経営分析
営業利益が2期連続で低下していましたが、2022年6月期については増収増益となっています。
収益性
・売上高総利益率:45%
・売上高営業利益率:13%
収益性は高いです。
昨年と比較すると粗利率は低下したものの、営業利益は逆に向上しています。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):385%
・自己資本比率(30%以上が望ましい):79%
数値的には昨年よりも落ちていますが、安全性に懸念はありません。
効率性
・有形固定資産回転率:14.07
本社を白金台から六本木へ移転させた結果、有形固定資産は著しく低下ました。
それでも二桁台の回転率を維持しており、影響は限定的だったと考えます。
⑷ 2021年6月期の経営分析
2期連続の増収減益です。
収益性
・売上高総利益率:55%
稼げるビジネスモデルと考えます。
・売上高営業利益率:12%
前期が15%だったので、収益性の低下が気になります。
安全性
・流動比率(200%以上が望ましい):447%
短期的な安全性は問題ありません。
・自己資本比率(30%以上が望ましい):81%
中・中期的な安全性も問題ありません。
財務基盤は強固なものと考えられます。
効率性
・有形固定資産回転率:81.78
悪くない数値です。
本社移転後にこの数値がどれだけ変化するか注目しています。
■顧客について
B to B企業なので顧客企業との取引が業績に大きな影響及ぼします。
会社ホームページを見ると、日本を代表する大きな会社がずらりと掲載されています。
ただし、よく見ると、それらの顧客企業についてどのような成果があったのかを全部掲載されているわけではありません。
ヤフー、トヨタ、三菱電機などに対してはどのようなサービスを提供したのかが具体的に記されていないことが気になります。
また、成果が紹介されている企業についても、それが1度きりなのか、継続的な関係を構築しているのかが分からず、一抹の不安を覚えます。
IRについて投資家を安心させる着意が必要です。
【株主総会の会場となった六本木Tキューブの模型】
2 株主総会
2019年から4回連続で参加しています。
⑴ 2022年9月の株主総会等
第19回定時株主総会 2022年9月29日(木)六本木ティーキューブ
株主総会は社長の元気な挨拶で始まりました。
業績説明などがなされましたが、株主総会そのものは約20分ほどで終了。
また、会長が退席する際に丁寧にお辞儀をされていたのが印象的でした。
株主総会の質疑応答
Q.自社株買いの目的について
A.当社は譲渡制限付株式(RS)報酬制度を採用しているため株式の希薄化防止を行うために自社株買いを実施している。
併せて株主還元という意図もある。
決議事項
・定款一部変更の件
・取締役6名選任の件
拍手を持って賛成・可決されました。
事業説明会
主なポイントは下記の通り。
・生産性=(攻めのIT)➗(守りのIT)という概念
・IT人材で最も不足しているのはAI・データ解析の専門家
・海外:IT人材は事業会社に多く所属(内製が基本)
日本:IT人材はSIler(ベンダー)に7割所属(外注が基本)
・当社の強みはプランニングからサービスまでの網羅的なラインナップ
・M&AによりTimesTechnologies社を連結子会社化したのはLINE対応のため
事業説明会の質疑応答
Q.ライバル社は?
A.外資系コンサル会社
Q.商談(コンペ)について
A.価格競争にならないよう収益性を考慮しながら営業している。
そのため競争ではなく、よく当社のことを知ってもらうことに注力している。
Q.退職率の低減策について
A.現状は10%程度で、IT業界の中では高い方ではない。
社員の成長実感(やりがいのある仕事の提供)と福利厚生の拡充の2本だてで対応していく。
Q.株価対策について
A.業績を上げることに注力しつつ、できるオプションは積極的に実施する。
配当による効果も承知しているが、成長機会を喪失せぬよう当面は実施しない。
Q.プライム市場上場基準について
A.移行基準は満たしており、”ゾンビプライム”ではない。
Q.事業区分と競合他社との差別化について
A.プロフェッショナル事業が約2/3の収益
プロダクト事業が約1/3の収益
競合他社はコンサル会社となるが、当社にはツール(プロダクト)があことが最大の強み。
Q.事業ポートフォリオの考え方と拡充の方針について
A.当初3つの事業ポートフォリオがあったが、人材投入によるプロフェッショナル事業とツールをメインとしたプロダクト事業の2つに整理した。
プロフェッショナル事業では短期で大きな収益を狙い、プロダクト事業では(サポートを含め)長期で安定した収益確保を意図している。
事業ポートフォリオの拡充については考えていない。
Q.売上の期ずれについて
A.4/四半期の数千万程度が対象。
1/四半期への計上についてはルール上話せない。
Q.株主優待、配当について
A.株主優待についてはB to Bの会社であることや外国人の株主が20%存在していることを考慮すると積極的には検討していない。
配当については株主からの要望が多いことは承知している。
”安定成長”の段階にて実施を検討している。
以上
約40分ほどで終了。
昨年同様、他の株主の疑問点などを伺うことができ、有意義だったと思います。
社長の議事進行も上手だったと思います。
最後は、拍手を持って散会となりました。
株主総会雑感
4年連続で株主総会に参加して感じたことを列挙します。
●良かったこと
・社長が年々、自信を持って元気で株主総会を進行していた。
・総会に続いて実施された事業説明会での株主とのリラックスした意見交換。
・白金台ビルより六本木Tキューブの方が眺望がよい。
・事業再編により人材に依存したコンサル系の事業と製品販売によるツール系の事業のバランスの良さが実現。
・ようやくM&Aにも積極的になってきた。
●いまいちなこと
・やはり事業規模が小さいので、増収増益にも関わらず色々な意味で株価が”適正価格”に収斂するまでに時間がかかる(乱高下が激しい)。
・成長企業としての将来のための”種まき”や”事業ポートフォリオの拡充”がどこまで真剣に考えられているのか分かりづらかった。
・株主総会会場に事業説明資料を用意するなど、IRを重視する姿勢が不十分(アバントのようにゴディバのチョコレートや統合報告書を株主総会で手渡すIT企業もある)。
・専門用語?が多い(例えば、「オーガニック成長」とは既存の経営資源を利用して成長すること。)
●教訓
成長企業は事業規模が小さく買われすぎな状態や反対に売られすぎの状態が繰り返され、株主としては苦労することが少なくなかったです。
ただし、会社も生き残りをかけて必死で頑張っていることもあり、その経営を丁寧に追うことで得られる”気づき”も小さくはないと思います。
無理のない範囲で、”細く長く株主を続ける”という選択もありかもしれません。
オーガニック成長により株主が報われることも十分考えられますし、場合によってはアルベルトのようにTOBにより株価が跳ね上がることもあり得ます。
いずれにしてもIT業界の成長企業の株主となるにはそれなりの覚悟が必要というのが4年株主総会に参加して得られた教訓です。
⑵ 2021年9月の株主総会等
第18回定時株主総会 2021年9月29日(水)白金台ビル 本社会議室
社長のあいさつから始まりました。
今年も緊張気味で、ところどころ”かみ”ながらの司会進行。
株主の参加者は数名で去年よりもさらに減少。
けれども、今回は動画配信を実施したところは好感できます。
今回は会長も参加していました。
事業説明のところで、事務局の女性に原稿を読み上げさせたのは如何なものか?
ここは、社長自ら熱く語るところでは?
セグメントを3つから2つに変更したとの説明がありました。
業績の良いところとそうでないところに分け、組織の活性化を意図したように感じました。
主な質疑応答
Q.株主還元として自社株買いをしたのは良いが、株式の長期保有者のための配当をしなかったのはなぜか?
A.たまったお金を自社株買いに投じた。株主還元は大切だと認識しているが配当の予定はない。
Q.コンプライアンス強化のために監視委員会等設置会社にする趣旨は理解したが、取締役の数を8名から6名に変更しても大丈夫なのか?
A.取締役それぞれが適切に職務を遂行するので大丈夫。
相変わらず、質問と回答が微妙にずれています。
決議事項
・定款一部変更の件
・取締役選任の件など7案件
すべて可決。
事業説明会
総会終了後、会長他主要役員が退室した後、社長と数名が残って事業説明会を行いました。
ネット配信はされていなかったようです。
社長もリラックスされていたご様子。
ビデオ等を交えて会社の事業内容の説明から始まりました。
その後、増収減益が続いていることを陳謝し、増数増益を目指すことを話されました。
そのためのポイントとして
①人材の積極的採用
②プロダクト事業の再成長
③オフィスの移転
を挙げていました。
株主からの質問は2つ。
Q.IT業界は過当競争の時代に突入しており、いかにして利益を伸ばすのか?
A.プロダクト事業はご指摘の通り過当競争にさらされているが、てこ入れを図る。プロフェッショナル事業は競争力がある。
Q.大きなお客様と大きな仕事をすることは大切だが、ブレインパッドの大きなお客様である伊藤忠商事やヤフーはチャイナリスクを抱えている。突然仕事が無くなる恐れはないのか?
A.それぞれの会社の売り上げに占める割合は10%程度で契約内容も多岐にわたる。さらに新規の顧客開拓にも注力している。
事業説明会では意外と有意義な時間を過ごすことが出来ました。
⑶ 2020年の株主総会
2020年9月29日に開かれた今年の総会にも参加。
株主数は15人ほど。
1年前の頼りなさそうな社長は相変わらず、自信がなさそうでした。
それより問題と思ったのは、会長が出席していなかったこと。
コロナを理由に別室で控えていたとのことですが、会長を含む別室の役員にたいしても質問できるかどうかの事前説明もなく、業績低迷の追求を恐れ会長が逃げていたと思われても仕方ない対応でした。
残念です。
会長の出席にどんな意味があるか?
招集通知には、
招集通知には、中期経営計画は変更なし
と書かれているからです。
コロナ禍で経営環境が大きく変化している中、それに応じて計画を修正することは”ふつう”のことと考えますが、それをしないことを、誇っているかのような記述には、正直驚いています。
見方を変えれば、現社長は、自分を後継者に指名した会長に頭が上がらないから見直すべき中期計画を見直せないでいるのではないか?
そんな疑念さえ湧いてきます。
管理職を経験した人であれば、後任者が自分が決めた計画を大きく修正することを快く思わない気持ちは分からないことはないでしょう。
業績、ひいては株価の低迷にはこの会長の影響が大きいと考えられます。
暗い気持ちになった株主総会でしたが、唯一の救いは出席した十数名の株主から自然と拍手が沸き起こって終了したことです。
限られた自分の経験から、総会終了時に株主からの自然な拍手が沸き起こる会社は投資する価値があると考えています。
ただし、株主が報われるまでには相当長い時間を要しそうな気がしますが・・・。
⑷ 2019年の株主総会
前回は社長が交代したばかりということも新社長の自信の無さが気になっていました。
【株主総会の案内板】
3 株主としてのコメント
⑴ 何故、株価がさえないのか?
総資産、売上高、時価総額から株価がさえない理由を探ります。
ブレインパッドの総資産は約57憶円で売上高は71憶円です。
なかなか、頑張っています。
しかし、時価総額は378憶円もあります。
良い経営がなされている企業は
総資産:売上高:時価総額=1:1:1
と言われています。
そう考えると、ブレインパッドは時価総額が大きすぎます。
言い換えれば、買われ過ぎな状態と言えると思います。
株が買われ過ぎという状態は、ちょっとしたマイナスの材料でも株価が大きく下がるということを意味します。
このことは、株主総会参加者が少なく株主の会社に関する関心が希薄であるため、すぐに株を売却しやすいことにも通じています。
自社株買い終了時点から株価が急落していることもやれやれ売りをしている株主の多さを物語っています。
⑵ 株価上昇のポイント
思うに株価上昇のためのポイントは2つ。
ひとつはさらに利益率を上げること。
ブレインパッド利益率は
ROE::13.8%
ROA:10.4%
悪くはありませんが、良くもありません。
ちなみに、同じく時価総額が大きく買われ過ぎな日本M&Aの利益率は
ROE:28.2%
ROA:20.5%
と、利益率でブレインパッドを圧倒しています。
『悲しいけどこれ競争なのよね!』
投資家の目はシビアです。
より効率的な経営が期待されます。
もう一つは、株主還元の拡充や積極的なIR活動。
会社を応援する株主をもっと増やそうとする姿勢が残念ながら足りませんん。
それでも、今回から総会後に事業説明会を実施するなど改善の兆候は見られます。
この小さな流れをより揺るぎない組織文化へつなげられるかが今後の会社の成長を大きく左右すると考えます。
【ブレインパッドが以前に入居していた白金台ビル】
4 まとめ
ブレインパッドについて述べてきました。
4年連続して株主総会に参加し、成長期のIT企業の経営の一端を垣間見ることができ、様々な”気づき”を得ることができました。
特に、総資産や売上高が100億円未満という事業規模が小さいが故に苦労することが多かったというのが実感です。
それでも、年成長率20%という成長著しいIT業界の最先端の経営に触れる機会というのは投資家としては大きな魅力だと思います。
メンタル面やマネー面などでリスク管理を徹底し無理のない範囲で細く長く株主を続けていくつもりです。
お読みいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。
#株式 #投資 #資産運用 #株主総会 #ブレインパッド #デジタルマーケティング