2020.8.30初投稿
2021.7.2更新
こんにちは!
この記事は、リクルートの株式に関心のある方に対して、株主としての所感をまとめたものです。
YouTubeでリクルートは日本のGAFAになり得ると主張する人もいます。
また、最近では『起業の天才』という本を通じてリクルート創業者である江副浩正さんが再評価されています。
何かと話題のリクルートを自分なりの視点で分析してみました。
【目次】
1 リクルート について
⑴ 会社概要
2020年3月31日に創業60年を迎えたマッチングビジネスを中心とした会社です。
「若いうちから経営の勉強ができる会社」、「GAFAと戦い抜く!」などの肯定的な評価をする書籍や記事が多く出回っています。
しかし一方で、「リクルート事件」、「リクナビ就活事件」などたびたび不祥事も起こしています。
リクルートを考える際は多面的に見る必要性があると考えます。
■主要な事業内容(株主総会招集通知より)
下記の3本柱から成り立っています。
オンラインプラットフォームのIndeedやGlassdoor等から構成。
●メディア&ソリューション事業
住宅の売買や賃貸関連の「SUUMO」、結婚関連の「ゼクシィ」、国内旅行関連の「じゃらん」、飲食店に関する「HotPepperグルメ」、美容サロンに関する「HotPepper Beauty」、就職活動関連の「リクナビ」など、そして「Airビジネスツールズ」を中心としたSasSソリューションにも展開しています。
●人材派遣事業
国内と海外に大別されますが、海外の人材派遣業で減収となっています。
オーストラリアとドイツでの事業において132憶円ののれん及び無形資産の減損損失を計上しています。
■経営の基本方針(株主招集通知より)
●基本理念
わたしたちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。
●ビジョン(目指す世界観)
Follow Your Heart
●ミッション(果たす役割)
「Opotunities for Life. Faster Simpler and Closer to you」
まだ、ここにない出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。
→個人ユーザーと企業クライアントをより簡単に速く結びつけること!
●バリューズ(大切な価値観)
新しい価値の創造/ Wow the World
個の尊重/ Bet on Passion
社会貢献/Prioritize Social Value
グローバル企業らしく英語でかっこよくまとまられている印象をもちました。
でも、少し抽象的で分かり難い。
ミッションの→の太字解説は、招集通知の社長の巻頭メッセージから抜粋。
新社長のおかげでようやくその内容を理解することができました。
⑵ 株主になったきっかけ
リクルートの印象は創業者であり卓越した経営者である江副浩正さんのプラスの印象、リクルート事件などマイナスの印象が入り混じったものでした。
個人的にはプチ不動産バブルに沸いていた2007年当時に、『不動産は値下がりする』という著書を出した江副浩正さんの慧眼と丹力にはカリスマ性を感じていました。
リクルートの経営にもっと長く関与されていたら、きっといまとは別の姿になっていたであろうと考えます。
そのようなこともありなじみのある会社ということで2019年に株主となりました。
株価はコロナ化で一時期含み損を抱えましたが、現在は回復して含み益が拡大傾向にあります。
⑶ 経営分析
株主総会の招集通知の連結計算書類をもとに分析しています。
数字は、2020年3月期→2021年3月期、を記しています。
■収益性
減収減益です。
売上高総利益率は54→50%
売上高営業利益率は9→7%
2020年3月期のポイント
のれん及び無形資産の減損損失314憶円
M&Aに関しては2006年の中国進出で成果を得られなかったことに始まり、いまだにうまくいっていない件数が少なくないことが気になります。
2021年3月期のポイント
売上収益は5.4%減の2兆2,693憶円
調整後EBITDAは25.7%減の2,416億円
調整後EPSは31.8%減の82.56円
株価はEPS×PERで算出されます。
EPSが3割以上低下しているにもかかわらず、株価が上昇しているというのはPER(評価、期待)が高いことを意味しています。
実力が伴うにつれてさらなる株価上昇が期待されます。
■安全性
流動比率162→154%(目安として200%以上が安全)
負債比率101→99%(目安として100%以下が安全)
自己資本比率は50→50%(目安として30%以上が安全)
心配するほどのことではありませんが、流動比率及び負債比率ともに安全とみなせる目安を下回っています。
このことは借入金の多さを意味していると思います。
また、
のれん 約3993憶円
無形資産 約2067億円
の多さにも注意が必要です。
■効率性
有形固定資産回転率は26~27と問題のない数値を示しています。
2 株主総会
⑴ 2021年株主総会
第61回定時株主総会 2021年6月17日(木) 住友不動産御成門タワー
参加せず
ただし、参加した人に聞くと株主からの質問は少なく、招集通知に関わるものなどがあったとのことでした。
⑵ 2020年株主総会
総会開始が11時という遅めの開始時間。
総会に時間をかけたくないという思いよく伝わって気ました。
初めて参加しますが、こんなに小さな会場で参加する株主もまばら。
しかも、会場に足を運んだ取締役は4名で残り7名はリモート。
会場の株主には水を飲むことを禁止しているにもかかわらず、取締役の席にはしっかりとペットボトルの水がおいてあることにあぜん。
株主を重視しているようには思えませんでしたが、積極的に会社を良くしていこうという思いを持った株主が少ないことも問題だと思いました。
おもな質疑応答は
Q.総会の待ち時間にリクルートのPRビデオが今回流れなかった理由は?
A.株主は感染を避けるために総会開始直前に来場すると考えたため。
Q.のれん等の減損損失についての再発防止策は?
A.今回の要因はコロナの影響と考えている。新規の投資に対しては慎重に査定と所要の見直しをしながら対応する。
Q.4000億円の融資枠設定の理由は?
A.財務的な理由ではなく、柔軟性の確保のため。
その他、株主様ミーティング、ゼクシーに対する意見等がありました。
3 株主還元等
⑴ 配当
一株当たり20円
配当性向30%
昨年は無配だったことを考えるとありがたいです。
⑵ 株主優待
なし
ただし、株主様ミーティングという独自のイベントを実施しています。
残念ながら参加したことはありませんが、今後参加する機会があれば記事をアップします。
4 株主としてのコメント
⑴ リクルートの気になる点(悪い意味で)
社長が春に交代しました。
新社長はIndeedに関わっていた方。
Indeedの実績をもとに社長に選出されたというような成果主義によるものと考えられます。
今やグローバルスタンダードとなった、成果主義は、不正や虚偽申告を防ぐシステムとセットでないとうまく機能しないと言われています。
米国で素晴らしいと評価されていた”エンロン事件”もそのことを象徴しています。
リクルートの場合はどうでしょうか?
かつてのリクルート事件、最近のリクナビ就活事案など不祥事がちらほら散見されます。
もちろんコンプライアンス体制はしっかりとしたものがあることは承知しています。
しかし、組織文化として、個々の社員の意識のレベルを考えればまだまだやれることはたくさんあると思います。
売上高2兆円、時価総額8兆円を超える大企業の割には株主総会が”しょぼい”ことも気がかりです。
不祥事が起きないことと株主が会社の経営をもっと注目することを祈念しています。
⑵ リクルートの気になる点(良い意味で)
『ファイナンス思考』によると、経営者とは細かく見るとつぎの3つに区分されます。
起業家~0を1にする人でプロダクトを作りこみ創業期に活躍
事業家~1を10にする人でプロダクトをビジネス化し成長期に活躍
経営者(狭義)~10×10のように複数事業を扱う仕組みを作り成熟期に活躍
リクルートは創業以来60年を経ている成熟期の大企業です。
その一方で、最近、江副浩正さんに関する本も出版されその創業期についても見直されています。
リクルートを深く知ることで、起業家、事業家、経営者を深く理解することに通じると考えます。
株価も上昇基調にあり、今後もその経営状況をしっかりと注視していきたいと思います。
おつきあいいただき、ありがとうございました。
※当ブログに掲載されている所感は、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではなりません。投資は自己責任でお願いします。